59話 当たった
正面。
相手の機影は見えている。メタル・ゴースト含めて、密集しているようだ。
レーダーはクリア。敵のECMはクールタイム中だから、電子妨害の心配はない。
そのまま前進。もうすぐヴァイパーのロック可能圏内に相手を捉える。
レーダーを確認。敵機の1つが私たちに機首を向けた。
同時に、正面方向から光弾が迫る。各機散開。
「うそ、あんな距離から機銃を!」
驚きが声に漏れる。焦りはしたものの、被弾はない。
「長距離速射機関砲、ミツルギの特殊兵装だ。雲の中から撃ってたのはアレか」
「びっくりしました……」
でも隊列は散らされた。
「そのまま散って!左右から挟むよ~!」
ダガーを連れて右から回り込む。
狙いはフォートタートル。
「敵機、上昇します!」
当然、敵も動きを開始。妨害も入る。
「こっちはミツルギに絡まれた」
「ジャベリン、ダガー、2人で仕掛けて!」
少し離れた位置で、ミツルギが先輩たちと交戦中。
恐らく長距離速射機関砲であろう光の筋が遠くに見える。
「気をつけて!」
「そっちもな。すぐに向かう」
フォート・タートルが退避行動中、ローレライが私とダガーを狙っている。
ECM使用不可の時間帯は攻撃に回るつもりか。
でも格闘性能は低いと聞いている。
「どのみち長居はできないから。撃つよ!」
「了解だよ!」
上方のフォート・タートルを一度無視する。
相対するローレライをロックオン。
「FOX2!」
ヴァイパーの射出。ダガー機からも。計4発。
正面方向、ローレライからのミサイル射出。撃ち合いの形になった。
ミサイルアラートが鳴り響く中、急旋回で回避。
相手は動く素振りを見せない。代わりに、上空からレーザーが降り注ぐ。
4発のミサイルはあえなく狙撃され、双方ダメージなし。
こちらは一方的に動かされたことになり、相手にとっては追撃のチャンスだが。
「追ってこないね」
「多分、向こうはアルゴスの圏内から出られないんだよ」
ローレライの方向を振り返る。追ってくる様子はなく、その場で旋回している。
「いいぜ1年ども!まだだ!まだ行くぜ!」
そこにメイス機が単機で近寄ってきた。やや下方から突き上げるように。
レーダーと空を見て状況を確認する。
双方のリーダー同士は互いににらみ合っているような状態。
その隙に防空システムの弾数切れを狙う、という算段か。
でもメイス機を追ってメタル・ゴーストも来ている。
「後ろ!来てます!」
「後回しだ!FOX3!喰らいやがれ!」
メイスは後方からの追っ手に構わず、4発のミサイルを前方に射出。
糸を引くようにミサイルスモークが空に白線を描く。
その全てを、上空からのレーザーが撃ち落とした。
まだまだ、ダメージが通らない。
「あの……本当にこの作戦で大丈夫なんでしょうか。やっぱり全部防がれてて」
ダガーの声は明らかに不安そう。
私も全部の不安を拭い去ったわけではない。
それでも突破口を見出すために、今は信じるしかない。私たちのリーダーを。あの人の勝負勘を。
「大丈夫にするしかないよ、やるよ!」
「う、うん、分かったよ!」
もう一度、ローレライに向き直る。
相手のECM再使用までに、少しでも多くのミサイルを撃ち、アルゴスを使わせなければ。
「あたしは亡霊野郎と遊んでくる。頼んだぜ」
メイス機はメタル・ゴーストを引き連れて上昇していく。
「行きます!FOX2!」
「こっちも、FOX2!です!」
また、計4発射出。その全てはレーザーに迎撃されるが、今はこれでいい。
ローレライからの反撃のミサイルをフレアを使って回避。
旋回しながらローレライの動きを見る。
やはり追撃は来ない。狙い直す。もう一度だ。
「ミサイル、まだある?」
「うん、あと2発」
ダガーはヴァイパーを使い切れば機銃しか撃てない。
それでも。
「じゃあ、次で使っちゃおう」
「うん、分かったよ!」
ローレライをロック圏内に捉えた。横を向いている。角度が悪い。
調整しようと考えているうちに、ロックオンの表示が立ち消え、レーダーが真っ白に塗りつぶされた。
「時間切れです!引き上げを」
「ジャベリン待って!ECM、使います!」
ダガー機がECMを起動。双方の電波が干渉し、レーダーが回復した。
「でかした!猶予は20秒!急げ!」
ダガーのくれた追加のチャンス。
「FOX2!」
妨害電波の発信元、ローレライに向けてヴァイパーを射出。
ここでもダガーと併せて4発使う。
撃墜できれば邪魔なECM使いを潰せる。せめて削りダメージだけでも……
と考えたものの、あえなく防空システムの発したレーザーに潰された。
「また潰されました!」
「みんな、ずらかるよ~!」
そのまま加速。空域からの離脱を図る。
「OK、最後に亡霊野郎に叩き込んでやる!スウォームだ、喰らいやがれ!」
メイス機から敵機に向けて、ミサイルの射出を確認。白い煙が空に複雑なカーブを描いているのが見える。
同時に、オレンジに光る粒子がばら撒かれるのも。
フレアで防がれたか。視線を前に戻す。
「チッ、離脱する……いや」
舌打ち交じりのメイスだったが、言葉が止まった。
「当たったぞ」
「え!」
慌ててメイスの機体の状況を見るが、損傷率は0%のまま。被弾したわけではない。
代わりに私たちのスコアが増えている。
増えたスコアは25。カス当たりではあるものの、攻撃がヒットしたことを意味している。
ミサイルが、ヒットした?
「明確な穴を見つけた。こんな、こんな簡単なこと……」
「何ですか!穴って!」
呟くように告げるメイスに、思わず聞き返す。
「フォート・タートルは……アルゴスは、上からのミサイルを迎撃できない」




