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蒼空トレイル-Aozora Trail-  作者: ふらっとん
8章 県大会準決勝

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60話 要塞

戦域から遠ざかり、合流する。

相変わらず、敵は追ってこない。


「アルゴスの弾切れじゃなくて?」

メイスの発見に、セイバーが疑問を呈す。


「いや、下のミサイルは潰されていた」

メイスは即座に否定。根拠も添える。

「防空システム『アルゴス』の砲塔は機体下部にある。当然、有効範囲はそこから下方向。上には撃てねえのさ」


つまり上からの攻撃なら、ECMの効果時間外なら攻撃が通り放題。

「それって」

「大発見じゃないですか!」

やっと見つけた付け入る隙。私もダガーも興奮が抑えられない。


「よ~し!敵のECM効果切れに合わせて、第3波を叩き込むよ~!」


声のトーンからもセイバーのウキウキが伝わってくる。

でも、当然の疑問もある。


「上昇するよ!」


そんな分かり切った弱点を、今回の用意周到な相手が放置するだろうか。

というか、ミツルギやメタル・ゴーストが上方に位置取りしているのは、フォート・タートルへの上からの攻撃を警戒するためと合点がいく。


「待て」


当然、その点はメイスも気付いている。


「攻撃が通ることが分かった以上、相手は上方を守ろうと必死になるはずだ。だから」

「下、ですね」


メイスと意見が合った。

「そうだ。裏をかく」

「で、でもそれじゃあ、アルゴスにミサイルが潰されちゃう……」

ダガーの心配も分かる。

「既に相当数のミサイルを防いでいる。弾切れは近い」

「おっけ~!それでいこう!海面スレスレまで下降するよ!」

「シースキミング!クロウラーの戦法を借りるんですね!」

「ええ……またあれですか……」

顔は見えないけど、ダガーはきっと青い顔をしている。

「大丈夫だよ!私についてきてね」

せめて、励ましの言葉を送る。


* * *


「正面から機銃!避けて!」


海面の先に黒い点と、迫る光弾を確認。思わず叫んだ。

各機旋回。機銃が通り抜けていく。


「これも読んでたってのかよ!なんて野郎だ!」

「ばれてるんなら、無理して海面で戦わなくていいよ。高度を取って!」


せっかくの妙案に思えたが、シースキミングの利点を早々に捨てることになった。

海面スレスレでぎこちなく回避行動をするよりは、私もダガーも高度に余裕を持たせた方が戦いやすい。


レーダーを確認。ECM効果時間外だから、よく見える。

相手は2機。ミツルギとメタル・ゴースト。攻撃組だけが降下してきている。

フォート・タートルとローレライ、防御組は上空か。


「ジャベリン、ダガー!昇って!」


セイバーが叫んだ。意図は分かる。上の敵をやれというのだろう。


「でも、スウォームの方が適切じゃ」

「弾切れだ。いいから行け!」

「了解です!ダガーついてきて!」

「うん!」


攻撃役は先輩たちに任せて、上昇。

振り返る。すかさず機首を上に向けたミツルギに対し、セイバーがパルスレーザーで牽制。

長距離速射機関砲の銃弾が機体の横を掠めていくも、被弾はない。

このまま下は任せる。


「フォート・タートルの上を取るよ!」


今、あの鈍亀の上を誰も守護していない。

電子戦の要であるローレライは本来守られる存在、アルゴスの範囲外へはそうそう出られない。

弱点を叩くなら今しかない。


「ローレライ撃ってきたよ!」

「避けて!反撃はしなくていい!とにかく上を!」


ローレライからのヴァイパーで上昇を中断され、敵も上方へ退避を始めるが、

それでも私たちの方が脚は速い。


フォート・タートルの上面に躍り出た。

すぐさま狙いをつける。ロックオン完了。


多少無理な角度だけど、相手の機動性は低い。問題ない。


「食らえ!FOX2!」


2発。ヴァイパーの射出。

これで1機落とせる。

念のため反撃を警戒し、旋回して離れる。


「フォート・タートル、ロールしてる!」

ダガーのその声に、ただの旋回かと思った。

目線をターゲットに戻す。


相手は機体を上下逆さまの背面状態にまで回転させた。

つまり、機体下部にあったアルゴスの砲塔は今、上を向いている。

そこから上空に向けてアルゴスのレーザーが走り、迫るミサイルを2発とも迎撃した。


「上が弱点なんじゃなかったの!」

ダガーが思わず叫んだ。こんな対処法で弱点をカバーするなんて。


でも、カバーしたということは、やはり相手には避けられない角度が存在するということ。

この強引ともいえる対処には驚いたけど、同時に、メイスの仮説を裏付けたことになる。


「もう一度行く!ダガーは無理しないで」

「うん、分かった!」

ダガーはもうミサイルがない。反面撃墜されたら、いざというときのECCM機能を失うことになる。

少し離れてもらう。単機でフォート・タートルを狙い直す。


「鈍足の相手にはもったいないけど!FOX3!」


兵装を高性能誘導ミサイル『ワスプ』に切り替え、射出。

ここまで温存した。だから弾数は残っている。

でもこの1発に対し、フォート・タートルはフレアを吐き出した。

レーザーでの迎撃はない。


「アルゴスを……使い切らせた!」

「でかした!」

「ジャベリン!やっちゃえ~!」


やっとの思いでたどり着いた、攻撃のチャンス。


「FOX3!」


遠慮する必要はない。再度ワスプの射出。

でも、ここでもフレアに阻まれる。


直後、警告音。すぐミサイルアラートに変わった。

「ローレライ来たよ!気をつけて!」


フォート・タートルの陰からローレライが飛び出してきた。

もうアルゴスの庇護は受けない。

次のECM使用可能時間まで、相手は逃げ回るしかないはずだ。

それでも、打って出たか。


「ターゲットをローレライに変更します!」


あいつさえ潰せば、強力なECMの庇護すらも奪える。

狙いをつけようとした私に、今度はフォート・タートルからのミサイルが迫る。

4時方向。機体を傾け、急旋回を開始。


「引き付けるから!ジャベリンはローレライを!」


後方からダガーが飛び出し、フォート・タートルに向かっていった。

ミサイルはない。機銃のみで。


「お願い!」


本当は止めるべきかもしれない。でもこのチャンスを逃すわけにはいかない。

だから、ワスプは絶対に当てる。


「FOX3!」


今度はローレライに照準を合わせて、ミサイルを撃ちだす。

相手は即座に回避行動に入るが、旋回は遅めのようだ。

これなら……いや、それでもローレライが射出したオレンジの光の粒子に防がれた。


ローレライは回避しながら、フォート・タートルの方向へ合流に向かう。

その背を、再度ロックオン。


「FOX3!」


最後のワスプを射出。

フレア射出の素振りを見せない。今度こそ捉えるか。

ミサイルとターゲットとの間に、大型の機体が割って入った。

フォート・タートルだ。


盾になるつもりか。

どっちでも関係ない。


「やりました!ミサイル直撃!」


狙いは変わったが、ワスプは間違いなくフォート・タートルに突き刺さった。

思わず右手を握る。

それなのに。


「まだ……飛んでる!」

「嘘でしょ!直撃したのに!」


HUDに、いつもの「DESTROYED」の文字が出てこない。

撃墜に至っていない。


「マジモンの要塞だな、あれは」


そのあとミサイルを失った私たちは何度かアタックを試みるも敵機を落とすには至らず、2ラウンド終了を示すブザーが鳴り響いた。

まさかと思い、急ぎスコアを確認する。

最後のあがきが効いたのか、スコアは辛うじて相手を上回っていた。


安堵に大きく息を吐き出し、一気に体の力が抜けた。

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