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蒼空トレイル-Aozora Trail-  作者: ふらっとん
8章 県大会準決勝

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56話 待ち伏せ

第二波の攻撃に向けて、セイバーを先頭に隊列を組んで雲の上を飛行。

提案した作戦が受諾され、あとは実行あるのみ。


概要はシンプル。

低速の機体が多い中、明らかに異質なメタル・ゴーストを狙い撃つ。

高速での制圧力が売りの機体。反面、低速帯では安定性に欠け、元気よく戦えない。

だから必然的に、他の機体と足並みが揃わない。

装備している特殊兵装は炸裂弾頭ミサイル『サラマンダ』。さっきは散々邪魔されたけど、誘導性能は低い。一撃離脱を安全に繰り返せばいい。


* * *


私の提案を聞いた後。

「なんとなくだけど」

セイバーがこぼす。

「そんな穴を対策してないわけ、ないと思う」

「それは……」


その通りかもしれないけど。


「他にプランはあるか?」

「あるよ~!みんなでバーンって行って、どーんって!」

「ジャベリンのプランで行く」


セイバーは不服の声を挙げるが、メイスが遮った。

「やってみようぜ女王様。まだ1ラウンド目だ。チャレンジするなら今だ」

「も~分かったよ~。あとその呼び方やめて」


* * *


「雲が濃いな」

「ふわふわの地面みたい、ですね」

眼下に広がる真っ白い絨毯を見て、ダガーがメルヘンなことを言っている。

高度はおよそ9000m。

この先に、1機。ターゲットがいることは分かっている。


「ターゲットロック!アーバレストの射程に捉えたよ!」

セイバーの持つ中距離ミサイルの射程圏内に入った。

「シルフィード、あと2000です!」

「ヒュドラ、あと3000です」

ダガーと私がそれぞれ呼応する。

「おっけ~、足並み揃えるよ!」

「他の3機はどこだ」

「……いないですね。雲の下かな」

レーダーでは重なっているように見えるが、周辺に他の敵影はない。


そのレーダーが不意に、真っ白に塗りつぶされた。

「ECMが来た!構わず進め!攻撃に合わせてECMを使う!」

HUDの表示が乱され、相手との距離は目算で測るしかない。

メタル・ゴーストも私たちの方へ向かってきている。ヘッドオン状態。ヒュドラの射程に入るまであっという間だろう。


「そろそろ行くぜ!」

タイミングを見計らい、メイスが叫ぶ。

レーダーがクリアになれば全員でミサイルを叩き込み、そのまま高速で離脱すればいい。

プランに支障はない。


突然、ガガガッという音が左の方から聞こえた。

並行して9時方向を飛んでいたメイスの機体が黒煙を噴き上げている。バランスを崩し、後方へ消えていった。

「くそっ、やられた!」

思わずキャノピー越しに振り返る。

見えたのはメイス機スパイラル・ファングが爆ぜる様と、雲の中から突き上げてきたプロペラ機。

ミツルギのブゥゥゥンという唸りが遠ざかる。


「雲の中で待ち伏せかよ!読んでやがった!」

「作戦失敗!各機反転!ずらかるよ~!」

ターゲットが間近に迫っていても、レーダー使用不可、ミサイルも使えない状況下では圧倒的に不利だ。

セイバー機がループを描いて反転を開始。私もダガーもそれに倣う。


「ダガー、私の後ろに!ついてきて!」

「了解だよ!」

「スピードを落とすなよ!あいつらは追い付けない!」


後方を振り返る。メタル・ゴーストからのミサイルスモークを確認した。

「撃たれた!ブレイク!」

叫ぶように、呼びかける。まだ誰が狙われてるか分からない。

同時にフレアをばら撒く。

でも運が悪いことに、迫るヴァイパーはフレアではなくダガーを追尾している。

「フレア!使って!」

敵ミサイルから出る白煙がカーブを描き、ダガーに吸い寄せられる。

ダガーの機体からオレンジの粒子がばら撒かれる。

「きゃあ!」

その光の粒子の中で、ミサイルが爆ぜた。


「みんな、無事~?」

「なんとか……ダガーもまだ飛べます」

爆風はダガー機ストームエッジの大きな三角翼を掠めたものの、ダメージは抑えられている。でも。

「どっち!どっちにいけばいいの!」

「今行くよ!」

「助けるよ~!」

混乱している。メタル・ゴーストも追撃をしかけようと迫っている。

捨て置けない。ダガーに接近する。

「ありがとう!ジャベリン、見えたよ!」

「よかった!ついてきて!」

「じゃあ、その間ちょっと遊んでくるね~!」

私の横を、セイバーの機体が駆け抜けた。狙いはメタル・ゴースト。

「おい、無理すんな!」

「大丈夫、少し時間を稼ぐだけだよ~!」

この場は任せよう。

レーダーはまだ回復しない。周辺は目視で確認する。

さっき飛び出してきたミツルギも、他の敵機も見当たらない。

今のうちに離脱を図る。

「全速力!雲の下に逃げるよ」

「うん!」


ダガーを連れて、眼下に広がる雲へ突っ込む。

アフターバーナーを焚き上げ、最大速度で。


「きゃあ!何!何!」

「どうしたの!」


視界が悪い。すぐ後ろにいるはずのダガー機すら見えない。

一瞬、ブウウウンと唸る音が響いたような気がした。

急に雲の中が明るく光り、爆発音が響いた。


「やられたよー。ジャベリン気をつけて!ミツルギがいる!」


雲を隠れ蓑に、また狙い撃ったとでもいうのか。

音速で飛び回る私たちを。音速の半分も出せない機体で。

相手はそんな速度だ。当然、追い付いたわけではない。

予め張っていた。来るのが分かって、先回りしていた。

うすら寒さを感じる。背筋が冷えるような感覚。


大丈夫だ。速度さえ落とさなければ、あいつは私に追い付けない。

やがて、雲を突き抜けた。視線の先には海面が広がる。

はずだった。


正面から光の筋が押し寄せてきた。


目の前にあったのは遠く広く広がる海ではなく、

直線的なフォルムの翼と、後方に背負う2機の大きなエンジン。

ブルルルルと音を立てながら、機首の先で高速回転するガトリング。


それがフォート・タートルの弾幕だと分かったときには、愛機アイアン・タロンの主翼がもがれ、青空に破片をばら撒いていた。


言葉にならなかった。

フォート・タートルだって音速には届かない。それなのに目の前に回り込んでいた。


解はシンプル。信じたくない。でも、そうとしか考えられない。

全部、読まれた。


1ラウンド目終了の合図が鳴り響いたとき、私たちのスコアが0だったことを確認した。

それは、機銃の1発も、ミサイルの爆風も、何一つ掠らなかったことを意味している。

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