↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼空トレイル-Aozora Trail-  作者: ふらっとん
7章 県大会~準々決勝

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
56/68

49話 あのね

兵装の選択画面に入っても、月子はどこかふわふわしている。

「兵装はどうします?」

「えっと……じゃあ、さっきと同じで」

「待て。さっきと同じなら、さっきと同じような結果にしかならねえ」

「そっか……じゃあ……」


私の問への回答も、なんだか煮え切らない。

蘭花が割って入り議論を進める。


「あたしはスウォームを使う。それでいいか」

「ええと、それで」

「あの、私、ECM持ちますか?」

「うん、お願い」


蘭花が攻撃に加わり、ひばりがECMで隊を支えるパターン。

月子の中距離ミサイル『アーバレスト』、私のマルチロックミサイル『ヒュドラ』はそのまま。

ここまでは決まったものの「どう立ち回るか」など細かな動きを詰める間もなく、

2ラウンド目開始のブザーが鳴った。


* * *


レッドパイソンの4機はやはり全速力で接近中。

複数機を同時に狙えるヒュドラを警戒して、密集陣形ではなく2機ずつ分かれて飛び込んでくる。


「距離8000!アーバレスト射程内!FOX3!」

左翼の2機に向けて1発ずつ、セイバーから中距離ミサイルのプレゼント。

遠くにフレアの光が見える。2機は僅かに回避行動を取りつつ、進路変わらず。今回も勢いで押し切るか。


その2機がヒュドラの射程に入ったところで波状攻撃を仕掛ける。

「FOX3!」

右側2時方向からの2機は無視することになってしまうけど、確実に数を減らしたい。


爆風でダメージは与えたものの撃墜には至らず。

格闘戦に備える。


「スウォーム、射程圏内だ!落ちろ!」

先に到達した右側からの2機。パルスレーザーを掻い潜り、メイスが4連発のミサイルを叩きつける。

フレアに遮られ、ここでも撃墜には至らない。


すぐに左からの2機もヴァイパー射程圏に入る。

私も楽しい格闘戦のスタートだ。

一度呼吸を整え、迫るシルエットを観察する。

最初にロックしたのはRF-33。曲線的な機首のフォルムに、2枚の垂直尾翼。

正面を飛ばないよう、敵の進路から角度を取る。


ロック完了。レーザーを撃たれる前にヴァイパーで牽制する。


「敵ECM、来ません!」


私の後方にいるダガーが、回避中のRF-33にヴァイパーで追撃しつつ告げる。

確かに容易くロックできる。レーダーにノイズも現われない。


「やられたな。ライトニング・アローがレーザーを撃ってる」


メイスの言葉通り、さっきはECM要員であった敵AX-35ライトニング・アローから、青い光の筋が走る。

3機がパルスレーザーで私たちを狙っている。


ECMを持たない。「ロックオンなど恐るるに足らず」とでも言いたいのか。

こちらのダガーがECMを持った意図は、敵の電子妨害を妨害するため。ECCMとして。

こちらが一方的にECMを使ったところで、ロックオンを一切使わない相手チームに効果は薄い。

兵装の選択で読み負けた。


「ラウンド毎に択を強いるのは、私たちの方なのに」

思わず声に出てしまう。


「今更仕方ねえ、目くらましに使っとけ!」

「了解です!起動します!」


敵のレーダーを封じることはできる。

目視可能なクロスレンジでは尚更効果が薄そうだが。


「ご、ごめん……」

「謝る暇があるならあいつらを落とせ!」


ECMの選択にGOを出したセイバーが責任を感じている。

でも、メイスが言う通り凹んでる暇はない。

クロスレンジで張り付いてくる敵機、追い立て飛び交うレーザーからは目を離すことができない。


「ドンマイですよ!さっさと、やっつけちゃいましょうよ!」


さらに敵は、射線さえ合えば相手を一撃で落とせる大砲を持ってる。

尚更に周囲警戒が必要だ。


「ダガー!ブレイク!トールハンマーだ!」


不意にメイスが警告する。

後ろを飛ぶダガーが反応し急旋回。

直後に、空気を切り裂く轟音が後方を通り抜けた。


思わずキャノピー越しに振り返る。ダガーの無事を確認。

青空の中に一筋の白い線。レールガンの残した航跡だ。


「た、助かりました!」


間一髪。

でもダガーが狙われたということは、その近くを飛ぶ私は危ない。

案の定。青い光が飛んできた。


「狙われました!」


敵のパルスレーザー。2方向から。

機体を掠めた。HUDが揺れる。大丈夫、単発ならダメージは大したことない。


機体を深く傾ける。機首を上げる。高いGを掛けての急旋回。

斜めに下降し、速度を得る。


パルスレーザーの追撃が来る。さらに旋回。攻撃の手薄な方向へ。


レーダーで位置関係を確認。

変わらず2機が近距離で私を狙い、うち1機の背後にはダガーが張り付いている。

少し離れた位置、4時方向から機首を向けている機影が1。間違いなくRF-37。スカーレット機。

セイバーたちがスカーレットに妨害を仕掛けている。ミサイルを示す線がスカーレットに向かっているのも見える。


それでも砲弾は飛んできた。ミサイルに狙われながらも、目視で合わせてきた。

右方向への旋回中にも関わらず、自機が爆ぜた。


「嘘でしょ……旋回中を……」


旋回の先にレールガンを置かれた。なんて腕だ。


「ごめん……落とせなかった」

セイバーがまた謝っている。

「大丈夫ですって!自分の失点くらい、取り返しますから!」

「ダガーを守るぞ!セイバー来い!」

「どうしよう……どうしたら……」


私の声もメイスの声も、明らかに届いていない。


「セイバー!元気出して下さいよ!」

もう一度、呼びかける。

「落とせばいいだけじゃないですか!いつもみたいに!」

いつもの調子じゃない理由までは分からないけど、そのきっかけは何となく見えている。

少し、カマをかけてみるか。


「スカウトの人に何を言われたか知りませんけど!」

「……何で知ってるの?」


否定しない。当たってしまった。

去年の大会で大活躍した新星。当然今年も注目されているし、実際に取材にも応じている。

十分にあり得る話だと思った。

「この前、スーツの人と話してたから……」

それにあのスーツの男の人は、報道の腕章を付けていなかった。


「スカウトの話は断ったから……安心して」

「え……」


でもスカウトって……スカウトってこと?

プロ野球のスカウトみたいな?

プロって……プロってこと!?

断ったの?なんで?どうして!?


自分で聞いておきながら頭の中をハテナが飛び交う。

戦線への復帰中、言ってしまえばただの移動中で良かった。

続く言葉が出ない。頭が働かない。


「今その話はナシだ。勝つことを考えろ!」

「あのね」

メイスの制止にも関わらず、セイバーは続ける。


「許せないことを言われたの」

「おい」

「『今のチームは鳥籠だ』って。『相応しくない』って。

 『あなたが実力を発揮できるチームを用意しよう』って」

セイバーは震える声で呟く。

それでも器用に立ち回っているが、もちろん敵は待ってはくれない。


「レーザーが!来てます!」

「スウォームだ!くらいやがれ!」

メイスのスウォームが、ダガーを狙っていた敵の1機を落とした。

「ナイスキル!です!」

まだ空域まで距離があるけど、レーダーとログで確認。


「くそ、おしゃべりは程々にしとけよ。ダガー援護しろ!取り巻きのレーザーどもをやるぞ!」

「了解です!」


私もアフターバーナー全開で、1人飄々と立ち回るセイバーのもとへ向かう。


「『そんなことないんだ』って。私は今のチームで思いっきり戦えるって。証明しなきゃ」


だから変に力んでいたのか。

セイバーの言葉は断片的だけど、察することはできる。


要するに私たちのことを「女王の部隊として相応しくない」と。

「足枷になっている」と。

言ってのけたわけだ。そのスカウトは。


「許せないですね!!」


真っ先に怒りを顕にしたのは、ダガーだった。

「確かに私は下手ですけど!でもみんなは!きゃあ!」

「いいから!お前は喋ってないで集中しろ!斜線警戒しろ!」

同時にメイスにたしなめたれているけど。

「だったら」

言いながらも、メイスも乗っかってきた。

「お前がやることはシンプルだ、女王様」

「そうですよ!」

私もすかさず続く。


「大暴れしてやりましょうよ!みんなで!スカウトの人がビックリするくらい!」

私たちはセイバーの 、撃墜女王・朧谷月子の足枷じゃない。

試合で見せるんだ。

あのスーツの人はきっと、この試合も見てるだろう。


戦闘空域が目視圏内に見えてきた。

ロックオンマーカーが手近な敵に狙いを付け始める。


「あのね」

そのとき、セイバーは少し落ち着いた様子で零した。

「試してみたいことがあるの。いいかな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。