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蒼空トレイル-Aozora Trail-  作者: ふらっとん
6章 練習試合

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42話 すっごくカッコいいでしょ~!

「2機来ました!1時方向!」

「こっちもだ。11時方向から2機」

「メイス、2番機を狙うよ~!ジャベリンとダガーは3番機を!」

「了解、ミストナイト殲滅作戦ですね」

ロックに時間のかかるステルス機2機を最初の狙いから除外。

文字通り、的を絞る。おかげで考える手間が減った。


今回も中距離ミサイルは飛んでこない。1ラウンド目と同様、近距離戦で畳み掛ける気だろう。


真正面からぶつかれば敵のワスプの餌食になる。

通常時なら、の話。

「デコイお願い!進路このまま!ヘッドオンで行くよ!」

「ええ!わ、わかったよ!」

真正面だ。あえて。

ダガーのホログラフィック・デコイの力を借りて機先を制す。デコイを担保に、正面角度から速攻を仕掛ける。


デコイを先行させ、相対する機影のシルエットが判別できる距離まで詰める。

双方ワスプの射程内。

正面からミサイル投射を確認。先に撃ってきた。

アラートは鳴らない。ミサイルの噴き上げる白煙はデコイに向けて緩やかなカーブを描いている。


最初のチャンス到来。

狙いは大きなデルタ翼の白い機体。ロックオン。

「FOX3!」

ワスプの射出。

敵から迫るミサイルは目の前のデコイに着弾。巻き込まれないよう旋回を開始。

一方、ターゲットも右方向に旋回を開始。フレアは出さない。


当たるか怪しい。もう一発撃つか?様子を見るか?

逡巡のうちに、レーダーにノイズが走った。

ワスプの誘導は断ち切られた。敵ECMの効果で、目の前のデコイもかき消された。


ロックオンアラートが鳴り出す。

敵機の位置関係を目視確認。8時方向に来ている。


「ECMを使う!」


メイスのECMが敵のECMと干渉し、レーダーが回復。

同時にアラートの音が変わった。撃たれた。

レーダーには光点が3つ。ミサイルが迫っている。高音のビープ音が鳴り響く。多分、1つはワスプだ。

スティックを押し込む。機体後方にオレンジ色に輝く粒子を撒き散らす。

右スティックを傾け、左スティックを上に。ロールと、ピッチアップ。

光点の進路に背面を向けるように急旋回。

後方から爆音。キャノピー越しに後ろを見る。爆炎は3つ。ほっとして、息を短く吐く。


とはいえファーストアタックは失敗。

依然として後方に付かれている。

白い2機。大きなデルタ翼の機体と、角ばったエアインテークの機体シルエットが見える。


「しくじりました。チャンスだったのに」

「焦るな。チャンスはまた来る」


メイスの返答は、いつも通り落ち着いたトーン。焦るでもない、励ますような感じでもない。

チャンスがまた来るのは当然という風に聞こえて、勇気付けられる。


じゃあまずは、後ろの2機をなんとかするか。

レーダーを確認。前と後ろからそれぞれ、味方機が迫っていた。


「FOX2です!あっち行ってー!」

「加勢するよ~!私はこっち!」


何か手を打つ前に、ダガーとセイバーの援護が敵を引き剥がした。

「ありがとう!助かりました!」

「くそ、撃たれた!2機付かれてる!」

でも頼ってばかりもいられない。

セイバーがこちらの援護をしたしわ寄せが出ている。今度はメイスが状況不利だ。

「はいは~い!」

「私たちも!行くよダガー!」

「うん!」


とにかく4人でカバーし合う。

メイスの後方には2機。

先に目についたのは斜めに張り出した垂直尾翼のシルエット。

白いファントム・ホーク。早速セイバーの機体がまとわりつき、剥がしにかかる。

こっちはセイバーに任せる。同じ機体同士、仲良くやってもらう。


もう片方、白い大三角の機体をロックオン圏内に捉える。

他の2機が私たちを狙い直す前に、なんとかする。

ワスプの射出。

敵のフレアに吸われたものの、爆風が僅かに削った。


「助かったぜ」

「ナイス削り!あと6分逃げ切れば、このラウンド勝てるよ!」

セイバーが冗談混じりに言う。

「そんな戦い、楽しいですか?」

極力余裕がある風を装って、返した。

「ううん、全然!バンバンいっくよ~!」


そこから狙い狙われを繰り返し、

互いに有効打が発生しないまま、2ラウンド目の残り時間が半分を切った。

ヴァイパー残数4、ワスプ残数2、フレア残数1。ここまで状況はイーブンに見えて、リソースは確実に減っている。

ヴァイパーとフレアは撃墜されれば復帰時に補充されるけど。


「ECMの効果が切れた。残数1だ」

「デコイもあと1です」

「アーバレストはもうないよ~」


向こうの状況はどうだ。

必中の距離、必中の角度を取っても、フレアを使われたら話は別だ。

あとどれだけ回避できる?


「弾数もフレアも少ないのは向こうも同じだ!気張れよ!」

「敵!離れていきます!」


直前まで敵機に追われていたダガーが叫んだ。

「助かったけど……」

「何かを狙ってやがる。叩くぞ!」


敵の4機が一斉に進路を変えて、私たちから離れる動きをした。

そのあとすぐ反転し、また向かってくる。

最初の2機、続く2機。隊列を整えたのか。


「敵!モード・ビーストです!」

先頭に立つライトニング・アローのウェポンベイから、兵装がむき出しになっているのを確認。

「ロックされた!」

「こっちも!」

「撃ってきたよ!ブレイク~!」

「ECMはまだクールタイムだ!フレアを使え!」


敵からミサイルの一斉射撃。4つの光がそれぞれ白煙を噴き上げ、私たちに迫る。4機をまとめて狙ってきた。

先に回避を強いられた。敵の狙いはなんとなく分かる。

散開した私たちを確実に狙いに来るはずだ。


狙われたのは誰だ。

レーダーを確認。敵の2機、明白に1機を狙いに来ている。

私じゃない。


「狙われた!」

「助けるよ~!」


狙われたのはメイスだ。助けなきゃ。

進路を敵に追われるメイスに向ける。

オレンジ色の光の粒子をばらまいて、その中にミサイルが吸い込まれ爆ぜるのを、青空をバックに確認した。

一撃目を凌いだ。でも分かる。すぐに第二陣が来る。


「ハッハー!モテすぎてまいっちまうぜ!」


第二波からのミサイルもフレアでやり過ごした。メイスはまだ無事だ。


このまま波状攻撃を仕掛けるのは敵の必殺のパターンだ。

標的になった機体は徐々に防御兵装とエネルギーを失い、やがて必然的に落ちる。

でも当の本人は全く絶望していない。


「引き付けてやる!その隙に頼むぞ!」

「フレアはあといくつ~!」

「もうねえよ!さっきので0だ!」


ただメイスを狙うだけじゃない。

僚機が常に周囲を警戒している。

そう簡単に手が出せないようになっている。

でもやるしかない。


「ジャベリン、ダガー、やるよ!」

「どうします!」

「次のアタックに合わせて突っ込んで!」


アタックはすぐに来る。どう迎え撃つか、どれを狙うか、確認したい。


「いったい、どんな作戦が?」

「作戦じゃないよ!でも!」


一度言葉を区切って、セイバーは力強く言い切った。


「こういうのは、気持ちで負けたらダメなんだよ!」

精神論を持ち出すとは、セイバーにしては珍しい。


「メイスを助ける!敵も倒す!それができたら、すっごくカッコいいでしょ~!」

感覚派なのは変わらないけど、気持ちは伝わった。

「了解です!」

「2機!来ました!」

「みんな、行っくよ~!」


2機がメイスの背後を取りに行く。

その横から私たちが殴り込む。


眼前の2機のうち、三角形のシルエットはメイスに向いたまま。

僚機のライトニング・アローが私たちに機首を向けた。

向かい合わせ、ヘッドオン状態。

またウェポンベイはむき出しだ。モード・ビースト。ミサイルを大量に撃てる。


ウェポンベイから3発、光が飛び出した。

「デコイ!行きます!」

ダガーの機体が消え、代わりにホログラフィック・デコイが前面に出た。

ミサイルアラートが消えた。狙いがデコイに変わったことを意味する。


「FOX2!ダガーありがとう~!」

セイバーからライトニング・アローへヴァイパーの射出を見た。

私も続く。


「ジャベリンは向かって!」

「了解!」


続いて撃とうとした手を止めた。

アフターバーナーは焚いたまま。

メイスに迫る白三角の機体に真っ直ぐ、全速力で向かう。


「撃たれた!最後のECMを使う」

目の前で敵のミサイルがメイスから逸れていくのを確認。

でも敵のECMが発動。電子的な優位は双方になくなった。


これで正真正銘、メイスには回避の兵装がなくなった。


ミストナイトが追撃を緩めない。狙っているのは、たぶん近距離でのワスプだ。

撃たれたら終わりだ。


「メイス!こっち!」

「OK!」


メイスを呼び、距離を詰める。

追ってきた敵の間に割って入る。

ここで敵が撃ってきた。

アラートは鳴らない。ターゲットはメイスのままだ。

偶然だったが、とてもいいタイミングだ。


スティックをぐっと押し込む。フレアの射出。


私のフレアもなくなったけど、敵の1発からメイスを守ることはできた。

そして今、次の波状攻撃に備えて引き上げようとするミストナイトを、射程圏内に捉えている。

私をスルーしている。

つまり、狙うのは今しかない。


「FOX3!」


高性能誘導ミサイル『ワスプ』の射出。

即座に敵がフレアをばらまいた。

まだ残していたか。避けられた。

悠々と戻ろうとする敵の背を改めて狙い直す。

敵機の4時方向についた。少し角度差は大きい。でも


「もう1回!」


最後のワスプを、敵の進路に沿うように機首を上げて撃ち出す。

今度は敵のフレアが発射されない。急旋回で回避しようとした敵のエンジンノズルに、ミサイルが突き刺さった。

オレンジの光が爆ぜ、黒煙を噴き上げ、白い主翼がもぎ取られ、細かな欠片が飛散する。


「ナイスキルだよ!」

「グッドキル!こっちもやったよ!」


私がミストナイトと交戦している間に、セイバーが敵のライトニング・アローを仕留めた。

2機落とした。一気にリードした。と思ったのも束の間。


「すまねえ!やられた!」


次の攻撃、敵の第4波がメイスに迫っていた。

救援は間に合わず。敵の射出したミサイルがメイスに突き刺さるのを視界の先に確認した。


2機を落として、1機を落とされた。

数字の上では勝ち、2ラウンド目は勝利を収めたんだけど。

味方が落とされてラウンド終了だったから、どこかスッキリしない。


「勝っても浮かれないのはいいことだが。気を落とすな。お前はよくやった」

3ラウンド目に向けたインターバル。

そんな私の様子を察したのか、メイスは真っ先に私に声をかけた。


「でも……助けられなかったし……」

「そこまで思われるのは、悪い気はしねえ。

 だが、その悔しさは次のラウンドに向けろ」

「うんうん!4人でのカバーはいい感じだったし!この調子で次も楽しんじゃおう!」

「が、頑張ります!」


そうだ、切り替えなきゃ。

あと1勝。1軍メンバーの喉元に刃を突き立てるには、あと1勝すればいい。


「了解です!」

「あと1勝だ!勝つぞ!」

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