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蒼空トレイル-Aozora Trail-  作者: ふらっとん
6章 練習試合

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40話 ぶちのめすんです!

画面は既に兵装のセットアップ段階に入っている。

各自が装備すべきものを手短に指示し、作戦概要を簡単に伝える。


「相手は敵を倒すことより、『負けないこと』に重点を置いてます。

 特に、セイバーを必要以上に警戒しています」

「え、そうなの?」

「根拠を言います」


思いつきのハッタリ大作戦といえども、

そこだけは唯一絶対、自信を持って事実と言える。


「レーザーで削られたのはブラボーチームなのに、チャーリーもデルタも、セイバーに狙われた瞬間に回避に入っていました。

 狙われて回避に入るのは敵の基本ですが、回避行動までのフレーム数が明らかに違います。もはや異常です」

「そっか~。だから当てられなかったんだね~」

「で、それが分かったところでどうするんだ」

「なので」


なので……どうしようか。返答に少しだけ詰まった。

でも行くしかない。次の言葉をひねり出す。


「セイバーに大暴れしてもらいます」

「待て!だからそれは……」


案の定、メイスからの突っ込みが入る。だから。


「違います!」


言い終える前に、即座に反論する。


「違います。セイバーは囮です。絶対に落ちないデコイです」


これが作戦の核。……ということでいいだろう。


「セイバーがターゲットAを狙えば、Aは回避し僚機Bがカバーに入ります。

 このBを狙えば、今度はAまたは別エレメントC・Dがカバーに入るわけですが。

 C・Dは私とダガーが抑えます。その間、セイバーがA・B2機を交互に狙うことで混乱を起こします。そして」


我ながら良さそうに思える。

まだ戦闘前なのに頭の中はフル回転だ。


「混乱に乗じて決めるのは、メイス。あなたです」

「なんだと?」

「そのためにスウォームを持ってもらいました。

 セイバーを利用して、あなたが敵を落とすんです!」


伝えた。作戦の大筋を言い切った。もう後戻りはできない。

ダメ押しだ。


「間違えました」


ここはメイスの言葉を借りることにする。


「あなたが、ぶちのめすんです!」


* * *


まずは戦闘前のデモ映像。ここで可能な限り情報を拾い、予測を立てる。

聖フィオーレ学院特有の、白い4機編成。


うち2機はEF-3k『ミストナイト』。

無尾翼の描く巨大な三角形のシルエットが目立つ。

細長い機首や白い機体カラーも併せて、紙飛行機を彷彿とさせる。

射程の長い中距離ミサイル『アーバレスト』で押す意図だろう。


残りの2機は、

ECM要員であろうAX-35『ライトニング・アロー』。

対エース要員であろうAF-22『ファントム・ホーク』。セイバーと同じ機体。

どちらもコクピット後方両脇のやや角ばったエアインテークに、滑らかな曲線のボディが特徴。

似た形のステルス機だ。

ファントム・ホークがよりシャープで、ライトニング・アローは少しずんぐりむっくりな印象。

エンジンが双発か単発か、の違いもある。


1ラウンド目の開幕。

程なくしてレーダーに機影を捉える。相手は11時方向、1時方向に開こうとしている。

アーバレストの射程ギリギリで、私たちを十字砲火で狙い撃ってくる意図だろう。


「私はどうすればいいの?」

「セイバーは何も考えず突っ込んで下さい!」

「了解~!じゃあ11時!行ってきま~す!」

「メイスはセイバーに続いて!」

「了解だ!」


セイバーの突進によって、中距離ミサイルで先手を撃つという相手の意図は崩れた。

何も考えず突っ込んでくる相手なんて、本来なら華麗に対処できるだろう。

でもそれは、相手が規格外のエースパイロットでなければ、の話。


「反対側の2機を押さえます。ダガー、方位060!行くよ!」

「うん、了解!」

1時方向から2時方向へ展開する敵を、私たちは迎え撃つ。

私たちは、射程外から襲ってくる敵のアーバレストに付き合わなければいけない。

ただでさえ格上の相手、気を抜く暇なんてない。

つまりセイバーたちの動きを悠長に目で追う暇はない。

レーダーだけ確認。

セイバーたちは敵と交戦開始。あとは信じる。


そのレーダーが直後、真っ白に変わった。


「敵ECM発動!私も使いますか?」

「ダガー待って!メイス、レーダーなしでも、しばらく敵を追えますか?」

「OK、目視圏内だ」


そこに、ミサイルアラート。

「ジャベリン!来たよー!」

ダガーからの呼びかけで慌ててフレアを撒き、散開。

ダガー機が雲を引いた。

敵ミサイルは2発。私とダガーをそれぞれ狙ってきた。

その航跡は、フレアに吸い込まれ爆散。


「ありがとう、助かったよ!」

レーダー使用不可の状況下でも、目で警戒してくれたダガーに感謝。

第一波は凌いだ。


セイバー、メイスが優位になれる時間帯を少しでも作りたい。

そのためにECM発動の時間をずらしたい。

当然その分、私たちの危険度は跳ね上がる。

でも、これくらいのリスクを侵さなければ勝機は掴めない。


「敵、狙えそうですか?」

敵の動きを目で追いながら、メイスに声をかける。


「くそ、ダメだ!速すぎる!」

「敵の回避には、規則性があります!」

「なに?」


正確には『あったらいいな』と思っている。

事実と願望が混ざるのは危険。そんなこと分かってる。

それでも。


「メイスならできます!観察して下さい!」

「ジャベリンまた来た!」

ダガーから再び警告。アーバレスト第二波。私も捉えた。

同時に、機影1が私に接近中。角ばった、少しずんぐりした白い機影。ライトニング・アローか。


「絡まれた!」

「ECM展開します!」


レーダーのノイズが回復。ほぼ同時に、敵のウェポンベイが開いた。

ミサイルの曳光が迫る。


「忙しいのに!」

愚痴のような言葉を吐きながら急旋回を開始。45度にループを描きながら降下。

「ジャベリンは回避に専念して~」

「何とかします!セイバー、メイス、お願いします!」


いよいよ先輩たちを気にかける余裕はなくなってきた。

この敵ライトニング・アローに反撃したい。

ロックオンを狙ってライトニング・アロー後方の単発エンジンを視界に捉えに行く。

ワスプを叩き込んでやる。

でもミサイルアラートが鳴った。敵アーバレスト第3波。来る。


ライトニング・アローへの追跡を断念。

急ぎフレアの射出。機体を背面までロール。機首を上げ一気に加速。急降下。

アーバレストはこれで回避できる。一方、ライトニング・アローの滑らかなシルエットが後ろに付いてくる。


「ロックされた!」


ロックオンのアラートが焦りを加速させる。コントローラが手汗で湿り気を帯びている。

でも生き残らなきゃ。メイスがせっかく1機を落としても、私たちが落とされたら意味がない。

背後を振り返る。ウェポンベイに内蔵されているはずのミサイルが、機体下部にずらりと並んでいる。

『モード・ビースト』。大量に撃ち込むつもりだ。一気に口の中が乾くのを感じた。


「FOX2!だよ!」


後方の敵機の横っ腹へ、2の白煙が迫った。

ダガー機からのヴァイパーが2発。

アラートが鳴り止んだ。ライトニング・アローが旋回開始。武器を格納するのが見えた。


「ありがとう!助かったよ!」

「でも狙われてるー!」


今度はダガーに曳光が1つ、急速接近。

その奥には大きな三角形を持つ白い機影。


今度は私が妨害に入る。進路反転、機首を白い三角形に向ける。このまま突き上げてやる。

ワスプ射程内まで加速。

ロックした。けど、撃つ間もなく回避行動に入られた。相手は機体を傾け、斜めに上昇。

その私の8時方向。またライトニング・アローが迫る。

背後に回られないよう、10時方向へ旋回。敵との角度を大きく取る。

目まぐるしい。


「やつらに規則性はないかもしれねえな」


なんとか敵の猛攻を捌いている中、メイスが淡々としたトーンで告げる。

やっぱり、ないか……。

落胆。緊張が途切れそうになる。

言ってみたはいいものの、そんなにうまい話は……。


「だが」


メイスが続けた。


「コイツのクセは分かった」

「ええ!?ほんとですか!?」

「なんでお前が驚いてんだよ」


驚きのあまり、ロックオン状態でもなんでもないヴァイパーを1発射出してしまった。

当然誰に当たるでもなく、空の彼方に吸い込まれた。


「敵ECM、そろそろ効果切れです!」

「OK、あと3秒ってとこだ」


私の驚きをよそに、ダガーがECMの残り時間管理をしてくれていた。

自身はECMを使用していないのに、さすがメイス、有効時間が染み付いているようだ。


「チャンスだ。ターゲットはエコー2。回避は右方向へのスライスバック!こいつを叩く!

 セイバー頼む!」

「2番機だね?おっけ~行くよ!レーザー照射!」

「来たぜ、狙い通りだ!」


メイスたちの様子を目で追う余裕はない。

レーダーと2人の声から、状況を知るしかない。

私たちは目の前の2機に集中する。


「2機が進路変更!セイバーたちに!」

危機を察知したのか。救援に向かうつもりだ。

「させない!ダガー、追うよ!」

「うん!」


私たちに背を向ける敵2機を追う。

敵のエンジンから青い炎を吐き、翼が空を裂き白い蒸気を残していく。

背を向けた。今なら叩ける。こちらも全速力。アフターバーナーを全開。

2機を追い背後からワスプを射出するもフレアに阻害され、あえなく回避された。

それでも、敵に急旋回を強いた。合流を阻止したことは大きい。


「喰らいやがれ!」


ここでメイスがスウォームの射出。

レーダー上に4つの光点が走る。

視界の先でも、4つの航跡を確認した。


「まだだ!」


……いや、4つじゃない。6つだ。

4連装のミサイルを放ったすぐあと、メイスが兵装を切り替え、ヴァイパーを2発射出した。

「何が何でも敵を落とす」という意図。まさに執念の6連撃。


敵のフレア射出が見えた。

航跡の5つはフレアに吸い込まれたものの、1つは敵に突き刺さった。

この距離からでもハッキリ見える。オレンジ色の光、吹き上がる黒煙、飛び散る大きな三角翼。遅れて届く爆音。

今日の試合を通して、初の直撃。初の撃墜。


「ナイスキル!メイス!」

私は渾身の声で叫んでいた。

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