居候先2
彼女の名前は神崎ルカ。
拓雅が通う予定の八百万学園のスクールカウンセラーを勤めている。
彼女と拓雅の母親は中学からの仲らしく、その伝手で拓雅は学園を卒業するまで彼女の家に居候する事になったのだった。
着いて早速シャワーを浴びさせてもらった拓雅は自室にあてがわれた二階の部屋に向かおうとリビング前の廊下を通りがかった。
すると扉の向こう側からルカの声が漏れ聞こえてきた。話し相手はあの少年らしく、無愛想な相槌も聞こえる。
「はい、血気の薬。切れそうならもっと早く言ってくれれば良かったのに。」
「言おうとしたら神崎が居なかったんだからしょうがないだろ。」
「それはどうもゴメンナサイ。・・・ところで、今日は何人殺ったの?」
「一人だけ。これでも抑えた方だぜ?」
「貴方にしては、ね。
今日はもう遅いからうちに泊まりなさい。そのシャツも洗わないといけないし。」
ルカの台詞を最後に二人の会話は途絶えた。
拓雅は心臓がバクバク鳴るのを抑えながらそっと二階に上がった。
自室のベッドに横になると、全身に冷や汗がどっと噴き出してくる。
(一人殺ったって・・・あいつ、人殺しなのか?それに血気の薬って何なんだよ⁉)
たった数分間で起きた出来事なのに拓雅の精神状態は恐怖で埋め尽くされていた。
(それに神崎先生も変だ。あまりにもケロリとしすぎている。)
あの薬も彼女が作った物と見て間違いなさそうで、拓雅はもはや生きている感覚すら薄れかけていた。
(生きて帰れるのかな、僕は。)
そんな不安を抱えているうちに長旅の疲れが拓雅を深くも浅い眠りに誘って行った。
幼い頃の夢を見た。
いつも公園で一緒に遊んでいたサキちゃんがブランコに乗ろうと言い出した時のものだ。
サキちゃんがブランコに乗って、僕が後ろから彼女の背中を押す。
サキちゃんはとても楽しそうだったし、僕もそんなあの子の笑顔を見て楽しかった。
夕暮れ、兄が僕を迎えに公園へとやって来た。
「何やってるの?」
「ブランコだよ。」
「押しているだけで楽しい?」
「うん。サキちゃんが笑ってるから。」
その時、兄の表情は僕の答えを聞いた瞬間に強張った。
無理もない。
サキちゃんという名前の女の子は、その日の朝に車に轢かれて死んでいたのだから。




