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琥珀紅の色  作者: ぺnon
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     拓たん!?

翌日、八百万学園中等部2年A組の教室では、あの「路地裏殺人事件」の話題が飛び交っていた。

何でも事件があった路地裏に繋がる大通りは、多くの生徒が通学路として利用している通りなのだそうだ。

因みに拓雅もそうだ。

昨晩の野次馬に紛れて見ていた生徒も多く、皆不安げだった。




「くだらないですね。」



昼休憩。いつもの屋上で拓雅お手製のサンドウィッチを頬張った波瑠は、無感動にそう言った。



「でも要は通り魔だろ?無作為に襲われるなんて怖いじゃないか。」



「今回の事件は人気のない所で起こったものです。普段通りの生活をしていれば心配なんて不要な筈です。

 ま、夜な夜な遊び歩いている方は知りませんが。」



「・・・。」



「何ですか。」



急にキョトンとした拓雅に波瑠は怪訝そうに首を傾げる。



「いや・・・。」



愛らしい容姿に似合わない波瑠の発言に拓雅はギャップを感じたのだろう。どことなく苦笑いだ。



「そうですか?ただ自分の意見を述べただけですが。」



そう言うと波瑠は右目を覆い隠す包帯を目障りそうにいじった。



「俺は拓雅が無事でいてくれたらそれで良いんです。」



「?」



「あ、そうだ。昨日衝突事故に出くわしたそうですね?怪我とかしていませんか。」



徐に思い出した波瑠は、グッと拓雅の顔に琥珀色の瞳を近づけた。

反動で身を引いた拓雅は左目の眼差しに完全に射抜かれていた。

もしここに第三者が居たとすれば、怒った彼女が彼氏を問い詰める場面に見えるだろう。



「だ、大丈夫だよ。というか、何で知っているんだ。」



(神崎先生にも話してないのに。)



「知り合いに聞きました。」



素っ気なく答えると、波瑠は立ち上がって踵を返した。



「ちょっとルカの所に行ってきます。」



そう言い残した波瑠は拓雅を置いて屋上を後にした。

急に冷めた波瑠の態度に拓雅はやや困惑していた。

なんだか波瑠は掴み所がない。



「あー、いたいた。おーい、同級の人ー!」



その時、波瑠と入れ違いでセピアの髪を靡かせた彼女が拓雅に呼び掛けてきた。



「君は、昨日の・・・。」



「うん。花笑(さくら)っていうんだー。宜しくね、拓たん♪」



「ひ、拓たん!?」



まさか波瑠以上の奴がここに居たとは。

変わったニックネームを付けられてしまった。



(って何で僕の名前を?)



疑問が顔に出ていたのか、花笑は拓雅が訊く前に答えた。



「拓たんの事は波瑠さんから聞いてたんだー。」



「という事は波瑠が言ってた知り合いって・・・。」



「うん。友達までじゃないけどね。」



そう言いながら拓雅の隣に腰を下ろした花笑は、傍らにあったサンドウィッチの残りを見つけた。



「あ、美味しそうー♪貰ってもいい?」



「波瑠の食べ残しだけど・・・あ。」



躊躇う拓雅の返答を待たずにサンドウィッチを手に取った花笑は、ハフッと美味しそうに頬張った。



「んん!おいひー♪これ、拓たんが作ったの?」



「うん。」



「うわーすごーい!料理上手だー!」



満面の笑みで食べる花笑の褒め言葉に、たかがサンドウィッチだが嬉しい。

まだ残っていた拓雅の分も彼女にあげると、花笑はこれまた喜んだ。



「ねぇねぇ、今週の日曜日空いてる?」



サンドウィッチを食べ終わって二人で快晴の空を見上げていると、花笑は徐にそう訊いてきた。



「・・・うん。暇だけど。」



拓雅は空から目を逸らして花笑の方を見た。

花笑は心地よい風を感じ取るように目を閉じていたが、ゆっくりと瞼を開けると彼女も拓雅の方に目を向けた。



「デートしよ♪」



「・・・?」



拓雅は彼女が放った言葉の意味を理解するのに、一瞬間を置いた。

その暫く黙っていたのを承諾と読み取ったのか、花笑は一人で頷いて立ち上がった。



「じゃあ、10時に拓たんのお家に行くから。バイバーイ♪」



「え、ちょっ・・・。」



踵を返して階段を下りていく花笑を追おうとすると、丁度良く予鈴のチャイムが鳴った。

彼女と出会って2日だというのに、拓雅はすっかり気に入られたようだ。











「・・・拓君っていうんっすね。あの霊力が滲み出ていた子。・・・あ、声に出てたっすか?・・・はいはい、ん・・・じゃ。」



電話を切った皐月が警察署の休憩所を後にしようとすると、後ろから肩をトントンと叩かれた。

振り返って見ると、やはり山崎だった。



「復縁の電話でもしていたのか。」



「やだなー先輩。俺はそんな諦めの悪い男じゃないっすよ。」



皐月は愛想良く笑った。



「ちょっと鬼団の事を教えておこうかなーっと。」



「ああ、それか。」



山崎はぶっきらぼうにそう言った。


鬼が他の地域よりも多く紛れ込んでいるこの町では、力の弱い鬼が効率よく人間の生命力を手に入れる為に小規模なグループを作る。それを山崎達は鬼団と呼んでいるのだ。

それがここ数日で特色が変わってきた。

今まで下級の鬼しか集まっていなかった中に、中級・上級の鬼も混ざるようになったのだ。それを電話の向こうの相手に伝え終えた皐月に、山崎は1枚の写真を突き付けてきた。



「この人って昨日の被害者さんっすよね?」



まだ被害者の顔も見た事がない筈の皐月は当然のように言い当てた。



「そうだ。で、やっと身元が分かったんだ。

 名前は浅野満(あさのみつる)。無職で家族もいないそうだ。



「ありゃあ・・・孤独っすね。」



「一見な。だが、こいつには仲間がいた・・・鬼団だ。」



つまり、浅野満は鬼だったというわけだ。



「はあ・・・ん、過去形っすか?」



渡された写真と睨めっこしていた皐月はフッと顔を上げた。

仲間がいた(・・)、という事は・・・



「俺の直感だが、浅野満は鬼団の連中に殺されたと思う。」



「先輩。この件は波瑠君に任せたんじゃ・・・。」



「まあ、一応な。波瑠の心当たりが外れるかもしれんし、どっちにしろ最近の鬼団はおかしいからな。調べておいて損はないだろう。」



「先輩がそう言うなら良いっすけどー。」



あまり乗る気のない口調ながら、皐月は微笑むように狐目をさらに細めた。




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