37. ドレスという名の階段(3)
アシュベリー商会にとっても、一大事業である。
マーサも化粧を塗りたくり、せっせせっせと、お茶会だ、晩餐会だと飛び回っていた。
オスカーも負けじと、取材を受けまくっている。
ブルーローズの新しい服飾店は、開店前から貴族たちの間で話題になり始めていた。
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開店一週間前。
服飾店で、新作ドレスのお披露目を兼ねたレセプションが開かれた。
一階の壁際には軽食が並び、中央には広い空間が作られている。
その両側には、招待された貴族子女たちの椅子がずらりと並んでいた。
皆、今か今かとその時を待っている。
やがて、ヴァイオリンの美しい音色が流れ始めた。
二階では、店長となった先生が女性たちを見渡す。
「皆さん、行きますわよ」
一人の女性が、ゆっくりと階段を降りてきた。
続いて、もう一人。
また一人。
マーサが声を掛けて集めた、見目麗しい女性たちだった。
色とりどりのドレスを身にまとい、優雅に階段を降りてくる。
一階まで降りると、客たちの前をゆっくりと歩き、反対側の階段から再び二階へと上がっていった。
貴族子女たちは、一斉に目を奪われた。
(こんなドレス、見たことがないわ)
従来のように、裾を大きく広げたドレスではない。
胸の下から切り替えることで、身体の線を美しく見せながら、裾は軽やかに流れている。
胸の下をリボンで結び、可愛らしさを強調したものもあった。
歩くたびに布が揺れる。
重々しさはない。
それでいて、女性らしい色気を感じさせるドレスだった。
すべてのドレスのお披露目が終わると、店長が女性たちを連れて二階から降りてきた。
女性たちが中央に一列に並ぶ。
店長が一歩前へ出た。
「皆様、本日はブルーローズのレセプションにお越しいただき、ありがとうございます」
一礼する。
「こちらが、ブルーローズの新作ドレスです」
割れんばかりの拍手が響いた。
「それでは実際にドレスを着てくださった皆様に、感想を伺ってみましょう」
最初の女性が、少しはにかみながら答えた。
「こんな素敵なドレスを着られて、本当に幸せです。それに、とても軽いんです。私はこれからも愛用いたします」
次の女性は、満面の笑みを浮かべた。
「私も感動しています。大好きなダンスが、今までよりずっと自由に踊れそうです」
次々と感想が続く。
美しい。
軽い。
動きやすい。
誰もが笑顔だった。
最後に、店長が再び前へ出た。
「一週間後、ブルーローズ服飾店は正式に開店いたします。本日お集まりいただいた皆様から、優先的にご予約を承ります」
店内がざわめいた。
「ご希望の方は、そのままお待ちください。担当の者が参りますわ」
そう締めくくり、レセプションは終了した。
しかし――。
席を立つ者は、一人もいなかった。
予約は次々と入り、あっという間に半年先まで埋まった。
レセプションでモデルを務めた女性たちには、その日着用したドレスが贈られた。
そして彼女たちがお茶会や晩餐会へ、そのドレスを着て現れるようになると――。
ブルーローズの人気は、一気に爆発した。




