↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『貢いで貢いで貢いだ先に何がありますか? ~エリザが再起を遂げるまで~』  作者: 蒼


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
37/44

36. ドレスという名の階段(2)

「職人たちは、今どうしているんですか?」

エリザが尋ねた。


マーサが、にやりと笑う。

「エリザ。そこに気づいたかい」

「え?」


仲介人も嬉しそうに口を開いた。

「皆さん、まだ次の働き口を探しているはずですよ。女性が働きやすいと評判のブルーローズさんに雇ってもらえるなら、彼女たちも喜ぶでしょう」

「ちょ、ちょっと待ってください」

「今、名簿を用意しますから」

「そういう意味では……」


仲介人は、さっさと奥へ行ってしまった。


エリザは慌てた。

何の気なしに聞いただけなのに、どんどん話が大きくなっていく。


「エリザ、良かったじゃないかい。人材まで揃って」

マーサは満足そうである。

(よくはない……)


昨日、少しドレスのデザインを考えただけなのだ。

それなのに――。


貴族街に店が決まり。

今度は職人まで揃おうとしている。

そして、家賃は金貨三十枚である。


(ちょっと考えたドレスの話で、これはおかしい……)

エリザは、この不条理な状況に震えるしかなかった。


✥✥✥✥


「家賃ばかり払うのはもったいない。すぐに準備に取り掛かるよ」

こうしてエリザは、やるしかない状況に追い込まれた。


以前は男性向けの服飾店だったため、内装は貴族子女向けの華やかなものへと変えることになった。


改装費は、以前の横領事件の補填としてアシュベリー商会が負担してくれた。


人材もすぐに集まった。

以前の店長を副店長に据え、辞めていた従業員たちにも声を掛けると、多くが戻って来てくれた。


エリザは、かつて客としてこの店を訪れていた頃から、店員たちの丁寧な対応を気に入っていた。

だからこそ、ぜひ働いてほしかったのだ。


そして、新しい店長として迎えたのは――エリザの刺繍の先生だった。

多くの貴族子女に刺繍を教えてきた人物で、その人脈も信頼も厚い。

すでに隠居し、田舎でのんびり暮らすつもりだった先生を、エリザとオスカーが二人がかりで説き伏せた。

こうして先生は、ブルーローズ服飾部門の店長を引き受けてくれることになった。


開店までの三か月。

一階で内装工事が進む一方、二階では別の準備が始まっていた。

「もっと優雅に歩いて」

先生の厳しい声が飛ぶ。

教えられているのは、工房で働いていた女性たちだった。


なぜ職人に、貴族相手のマナーを教えているのか。

それは、エリザが考えた新しい仕組みに理由があった。

ブルーローズでは、貴族子女一人につき、一人の職人が担当につく。

担当となった職人自身が客の希望を聞き、デザインを考え、最後の縫製まで手掛ける。

間に人を挟まず、作る本人が直接話を聞くことで、細かな好みにまで対応できる。


もちろん、全員がすぐに担当を持てるわけではない。

育児などで時間に制限のある者や、まだ一人でドレスを仕立てるだけの技術に達していない者には、担当職人の補助についてもらった。


裁断。刺繍。縫製。

一着のドレスを作る中で、自分のできる仕事を受け持つ。

そして補助したドレスの枚数に応じて、きちんと報酬も支払われた。


技術を身につければ、いつか自分も担当を持てる。

自分でデザインしたドレスを、自分の手で作ることができる。


ブルーローズで働く女性たちには、目指す場所がはっきりと見えていた。


すなわち――。

エリザは、職人を表に立たせることにしたのだ。


そして、それぞれの貴族子女の性格や好みを見ながら、最も相性のいい職人を担当につける。

それが、店長となった先生の仕事だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。