23. まずは人材集めましょう。(2)
工房経験者募集。
勤務時間は自由。
子ども連れ可。乳児を背負っての作業可。
ブランクのある方も歓迎。
発売後は持ち帰り仕事も可。
完成品は検品後、その場で出来高を支払います。
――アシュベリー商会
「今朝の新聞、見たかい?」
「子どもがいても働けるらしいわよ」
「アシュベリー商会が?」
「新しいブランドですって」
「お高くとまった商会だと思っていたら、平民の女性に随分優しいんじゃないかい?」
「発売が楽しみだね」
街のあちこちで、この話題で持ち切りだった。
バン――。
「エリザ嬢、聞いてください!」
エリザとマーサが新しい工房で面接の準備をしていると、いきなり扉が開いた。
「いきなり失礼だね。ノックを忘れてるじゃないかい」
マーサがぴしゃりと言う。
(マーサが言うの? いつもドンドンして、返事も待たずに入ってくるマーサが)
エリザは笑いそうになった。
「すみません。急いでいたもので。それより聞いてください。新聞の求人広告の話題で持ち切りなんです。予想以上の反響ですよ」
オスカーが興奮した様子で話し始めた。
「平民だけではありません。貴族の間でも話題になっています。商会にも、新商品は何なのかと問い合わせが殺到しているんです」
オスカーは鼻息荒く話し続ける。
少し暑苦しい。
「お前、うるさいよ。エリザがやるんだから、このくらい当たり前だ」
マーサは、青い薔薇のハンカチに店が熱狂する様子をすでに見ていたからか、意外にも冷静だった。
「お前は帰って、図案や試作品が盗まれないよう警備でも増やしてな。こっちは忙しいんだい」
マーサが一睨みする。
期待した答えが返ってこなかったオスカーは、すごすごと帰っていった。
「マーサ、働く人、来てくれるかしら?」
「どうだろうね。明日が楽しみだ」
明日の面接では、五、六人ほど採用する予定だった。
発売までの三か月は、好きな時間に工房へ来てもらう。
新商品の情報を外に漏らさないため、持ち帰りは禁止だ。
発売後は、家で作ってもらっても構わない。
そのため応募者が多ければ、すぐに仕事を渡せなくても、数か月待てる者は採用するつもりだった。
人手はいくらあっても困らない。
どうか明日、来てくれます様に。




