22. 工房と言う名の我が家
アシュベリー商会から馬車で帰る途中、マーサが口を開いた。
「工房をどこにしようか考えていたけど、エリザが住んでいた家にしようと思う。あそこは貴族街と平民街の中間にあって、利便性もいい。治安も良い方だからね。普通の家より一回り大きいし。内職が主なら、ちょうど良い広さになるさ」
エリザの心は慌ただしくなった。
(えっと……小屋だと思ってたら、大きめの家だったの)
まずは、自分の無知に衝撃を受けた。
(商売が落ち着いたら、マーサに頼んで貸してもらおうと思っていたのに、こんなに早く戻れるなんて。ラッキーだわ)
エリザは、予想外の幸運に喜んだ。
「マーサ、そこの家賃も私が払うの?」
エリザが恐る恐る聞いた。
「何言ってるんだい。当たり前じゃないか。自分の事業だろ」
マーサは当然とばかりに言い放った。
「良いかい。一年は困らないだけの金を出してやる。失敗して回収できなきゃ、その分は商会で働いて返しな」
「成功したら、その金は返さなくていい。その上、エリザは売上の一部をもらえる。良い話じゃないかい」
エリザは目の前が真っ暗になった。
(返金に家賃……私、これからもずっと働き続けなきゃいけないの?あの時のお金、戻ってこないかな)
エリザは成功する未来より、失敗する未来を思い描いた。
ダミアンに貢いで溶かしたお金があれば――。
エリザは改めて、お金の大切さを知るのだった。




