21. まずは人材集めましょう。
まずは、どこの工房と付き合うかを考えることから始めた。
アシュベリー商会は、独自の工房を持っていない。
大きな服飾店の多くは、お抱えの工房を持っている。
エリザは考えた。
「そうだわ。以前、ダミアンの服を仕立てていた服飾店で聞いたことがあるわ」
昔の記憶を辿る。
「腕の良い女性でも、結婚して子どもができると、工房で働き続けるのは難しいんですって」
「その人たちにお願いするのはどうかしら?」
マーサとオスカーがエリザを見る。
「毎日、工房に来てもらう必要はないわ。家で仕事をして、好きな時間に出来た物を持ってきてもらうの」
エリザは指を折りながら説明する。
「そこで検品して、合格した分はその場でお給料を払う。そして、次の布と糸を持って帰ってもらう。これならどうかしら?」
マーサが頷いた。
「なるほどね。腕は買うが、時間までは買わないってことかい」
「そう。それなら子どもがいても働けるでしょう?」
「そうだね。平民は育児だ家事だと追われるからね。腕があっても、毎日決まった時間に工房へ通えない女は多いさ」
マーサは少し考えた。
「それに、育児が終わる頃には工房を離れて何年も経っている。勘が鈍って、もう一度洋裁の仕事に就くのが難しくなる者もいる」
「でも、一度身につけた技術が全部なくなるわけじゃないでしょう?」
「もちろんさ。少し勘を取り戻せば、現役より腕のいい奴が見つかるかもしれないね」
エリザの顔が明るくなった。
「それなら、なおさら探してみましょう」
そして、もう一つ思いつく。
「新聞で募集するのはどうかしら?」
「新聞?」
「ええ。工房で働いた経験のある女性を募集するの。今は仕事を離れている方でも構わないわ」
エリザは続ける。
「勤務時間は自由。家で仕事をして、完成したら好きな時間に持ってきてもらう。検品が終われば、その場でお給料を払いますって」
「それは、求人だけではありませんね」
オスカーが口を挟んだ。
「どういうこと?」
「子どもがいて働けなかった女性に、もう一度仕事をする機会を作る。アシュベリー商会がそんなブランドを始めると新聞に載れば、人々はどう思うでしょう?」
エリザは首を傾げた。
「好意を持ちます。特に女性からは支持されるでしょう。商品がまだ一つも店頭に並んでいないうちからです」
オスカーの顔が輝く。
「つまり、商品を売り出す前からブランドそのものに人気が出る。これは素晴らしいですよ、エリザ嬢」
オスカーは嬉しそうに笑った。
オスカーは、すぐに求人広告を手配した。




