2. 貢いでしまうエリザ
エリザは貢いで貢いで貢ぎまくった。
ダミアンと婚約したことで、堂々と二人で出かけられる。
ロズウェル家の前に、颯爽と馬車が止まる。
上等な生地で仕立てた服を纏ったダミアンが降りてくる。
「エリザは今日は、僕だけのものだね」
そう言って、掌にキスを落とし、馬車へエスコートするのである。
モテるダミアンが私だけのもの。
そう思うと、まるで物語のヒロインになったような気がして、胸が高鳴った。
馬車の行き着く先は、服飾店か宝石店。
そのどちらかに決まっていた。
エリザとダミアンが入口に着くと、恭しくボーイがドアを開ける。
ダミアンのお気に入り。 今やすっかり常連である。
「ダミアン様。こちらが新作の生地です」
もちろん、既製品など勧めない。
「ふーん。手触りが良いじゃないか。僕にぴったりだ。それで仕立ててくれ」
まだ紳士と呼ぶにはあどけなさが残るが、振る舞いはすっかり堂々としていた。
「エリザ。君の横に、この生地で仕立てたスーツを着た僕が立っている姿は格好良いだろ? 今度これを着て観劇に行こう?」
そっと掌に唇を落とす。
「ええ……素敵ね。私もダミアンの格好良い姿を見てみたいわ」
頬をピンクに染め、少しはにかむ。
店員が請求書を持ってくる。
すると、ダミアンはスッと席を外す。
そこで、エリザが代わりにサインをする。
これがいつもの流れである。
「本日もお買い上げいただき、ありがとうございます。またのご来店を心よりお待ち申し上げております」
そう恭しく礼をされると、少し大人の紳士淑女になったような気分になった。
店を出れば、美味しいと評判のレストランで昼食をとる。
その後は植物園へ行ったり、水遊びに興じたり。
それがいつものコースである。
✥✥✥✥
今流行の観劇の席を、エリザが用意する。
人気の演目のため、良い席はすぐに埋まってしまう。
「一番高い席でしたら、ちょうどキャンセルが出ております」
店員にそう説明され、エリザは幸運とばかりにすぐ予約した。
観劇の夜。
劇場に入ると、そこはきらびやかな大人の世界だった。
大階段があり、天井からは大きなシャンデリアが下がっている。
エリザは辺りを見回した。
ダミアンは紳士然として、エリザをスマートにエスコートする。
そして二人は、ボーイによってロイヤルボックス席へと案内された。
舞台では、男女の愛憎劇が繰り広げられている。
けれど、まだ幼いエリザには、その内容がよく理解できなかった。
ただ、隣に座るダミアンの横顔を、うっとりと眺めていた。
劇の幕間――。
シャンパンとシガーレットの香りが漂う場所へ、ダミアンはエリザを連れていった。
エリザはまだ酒が飲めないため、果実水を渡された。
周囲の大人たちの中で、自分だけが子どものように思えて恥ずかしくなり、少し俯く。
その時だった。
ダミアンが級友たちを見つけた。
「おっ」
差し出されたシャンパンをさっと受け取る。
そしてそのまま、級友たちの輪の中へ消えていった。




