13. さぁ、商売を始めよう。
「まずは裁断からね」
エリザは、自分が持っていたハンカチを取り出し、大きさを測り始めた。
「エリザ、面白いことしているね」
「ありがとう。私が使いやすいハンカチの大きさを測ってるの。ええと……それで、一巻きがこの広さだから……72枚取れるわね」
「随分、計算が速いじゃないかい?」
「でしょう! 私、計算だけは得意だったの」
自慢げに胸を張る。
エリザは鋏を手にすると、布をすっと裁っていく。
「随分、鋏の使い方が上手いじゃないかい?」
「ええ。小さい頃、人形の洋服を作って遊んでいたの。布をザクザク切るのが楽しかったわ」
エリザは器用に布を切り分けていく。
本当に綺麗に、72枚に切り分けてしまった。
問題は、アイロンだった。
「マーサ……アイロンって、どうやって使うの?」
「仕事が丁寧なのは良いことだ。アイロンは火で温めながら使うんだよ」
(火で温める……薪代がかかるじゃない)
エリザは竈を見た。
「ほら。私が火を起こして、昨日の料理も温めてやるから、お前さんはアイロンに集中しな。分かったね」
マーサが手際よく火を起こし始めた。
薪が一本、また一本と竈へ入っていく。
(薪代が……)
エリザは、その様子をじっと見つめた。
(あっという間に薪ってなくなるのね。お金なんて、すぐになくなるわ)
✥✥✥
(1枚も失敗できない)
エリザは慎重にアイロンをかけ始めた。
裁断した布の四辺を細く三つ折りにして、丁寧に折り目をつけていく。
20枚ほど終えた頃には、すっかり慣れ、手も速くなっていた。
(アイロンって面白いわね……)
アイロンが冷えるたび、火で温め直す。
全部かけ終わる頃には、日が沈みそうになっていた。
「よく頑張ったね」
マーサが本をぱたりと閉じ、静かに言った。
「ありがとう。今、達成感があるわ」
エリザが嬉しそうに呟いた。
「そりゃ良かった。私は帰るよ」
エリザは、綺麗に折り目のついたハンカチを眺めながら、美味しく夕食を食べた。
次の日。
朝から、せっせせっせとハンカチの端を縫い始める。
(あと45枚……まだまだね)
いつの間にか、マーサが来ていた。
「エリザ。仕事が速いし、随分丁寧じゃないかい?」
「ありがとう。手が速いって、先生からも褒められていたわ。ただ、量が多いわね……」
顔を上げてマーサに話しかける。
けれど、すぐに手元が気になり、視線を戻した。
「エリザ。仕事も良いけど、洗濯は大丈夫かい?」
エリザの手が止まった。
「あっ……まだしてなかったわ!」
慌てて立ち上がる。
籠を抱えると、そのまま井戸まで走っていった。
マーサは、その後ろ姿を眺めていた。
「丁寧で仕事が速い。のみ込みも速いし、手先も器用だ」
井戸のそばでは、エリザがせっせと洗濯を始めている。
マーサは目を細めた。
「あの子……ものになるかもしれないね」




