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王子の婚約者で王立魔法学園でランキング一位だった私は不正を疑われ婚約破棄をされ卒業まで「最下位令嬢」と呼ばれることになりました  作者: カルラ


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第八章 魔法研究発表会

魔法研究発表会は、一年間かけて取り組んできた研究成果を発表する、学園でも屈指の重要な行事だ。

学園内の教師陣だけでなく、王国魔法庁からも審査員が招かれるという。

これまでの行事とは違い、外部の目が入るという点で、私は密かに期待を寄せていた。

発表会の会場は、大講堂に特設された研究発表ブースが並ぶ形式で行われる。

私は一年をかけて取り組んできた研究を、ようやく形にすることができていた。


「魔力消費を三割削減する補助魔法陣、というテーマで発表させていただきます」


用意した資料を掲げながら、私は淡々と説明を始めた。

既存の魔法陣構造に新たな補助術式を組み込むことで、消費魔力を大幅に抑えるという内容だ。

理論だけでなく、実際に稼働するモデルを作り、実演を交えながら発表を進めていく。

魔法庁から来ていた審査員の一人が、身を乗り出すようにして装置を覗き込んだ。


「これは……実用化できるレベルだ」


感嘆の声とともに、他の審査員たちも次々と装置に注目し始める。

専門的な質問が飛び交う中、私は一つ一つ丁寧に答えていった。

これまで積み重ねてきた研究の成果が、確かに認められている手応えを感じていた。

一方、セレフィナの発表は、まったく異なる方向性のものだった。


「私が発表するのは、癒やしの魔法です」


彼女はそう言いながら、淡い光を纏った演出とともに、癒やしの魔法を実演してみせた。

光の粒子が舞い、幻想的な雰囲気が講堂内に広がっていく。

技術としては初歩的なものだったが、その演出は確かに人の目を引くものだった。


「わあ……」

「きれい……」


一般生徒たちからは、感嘆の声が漏れる。

派手な光の演出は、見た目の華やかさという点では、確かに評価されやすいものだったのかもしれない。

発表会が終わり、審査結果が集計される。

私はその結果を、静かな緊張とともに待っていた。

まず発表されたのは、外部審査員による評価だった。

 

「外部審査、一位。リリアーナ・エルフォード」

 

魔法庁の審査員たちは、実用性と理論の完成度を高く評価してくれたようだった。

これまでの努力が、確かな形で認められた瞬間だった。

けれど、続けて発表された学園教師による評価は、まったく異なるものだった。

 

「学園教師評価、一位。セレフィナ・ノクス」

 

そして、両者を合算した総合順位が発表される。

 

「総合優勝、セレフィナ・ノクス」

 

会場が拍手に包まれる中、私はただ静かにその結果を見つめていた。

外部の専門家が実用性を認めた研究が、学園内の評価によって覆される。

これまで繰り返されてきた構図が、またしても繰り返されていた。

けれど、今回は違う反応があった。

魔法庁から来ていた審査員の一人が、困惑した表情を浮かべながら、隣の教師に声をかけているのが見えた。


「なぜだ……。実用化レベルの研究が、なぜこの結果に」


その声は、決して小さくはなかった。

周囲の生徒たちにも、はっきりと聞こえていたはずだ。

問いかけられた学園教師は、言葉を濁しながら、はっきりとした説明をすることができずにいた。

これまで、学園内だけで完結していた評価の歪みに、初めて外部から疑問の声が上がった瞬間だった。

小さな出来事かもしれない。

けれど、確かな変化の兆しを感じずにはいられなかった。

発表会の後片付けをしながら、私はふと視線を感じて顔を上げた。

会場の隅に、教頭であるイザベラ先生が立っている。

彼女は結果発表の掲示を見つめながら、わずかに首を傾げていた。

普段は現場に一切口を出さず、公正な制度運営を第一に考えている人物だと聞いている。

その彼女が、今、明らかに何かを訝しんでいる様子だった。

これまで、教頭という存在は、私にとって少し遠い場所にいる人だった。

けれど、もしかしたら、彼女もまた、この歪みに気づき始めているのかもしれない。

そんな予感が、胸の中に静かに広がっていく。

片付けを終えた後、私は装置を鞄にしまいながら、ノアと合流した。

彼は今日の結果を、手帳にまた書き写していた。


「外部評価と学園評価の乖離が、これまでで一番はっきり出た」


ノアは手帳のページをめくりながら、静かにそう言った。


「専門家が実用性を認めた研究ですら、学園内の評価では覆される。これは、もう技術の問題じゃない」


私は小さく頷いた。

これまでの実技試験、共同演習、そして今回の発表会。

積み重なっていく矛盾の数々が、少しずつ一つの形を作り始めているように感じられた。


「教頭先生も、何かに気づき始めているみたい」


私がそう言うと、ノアは顔を上げた。


「イザベラ先生が?」

「さっき、結果を見て首を傾げていたの」


その情報に、ノアは少し考え込むような表情を見せた。


「制度の責任者が疑問を持ち始めているなら、それは大きな意味を持つかもしれない」


彼はそう言いながら、手帳を静かに閉じた。


「今はまだ、証拠が足りない。けれど、少しずつでも積み重ねていけば」


そこで一度言葉を切り、ノアは真っ直ぐに私を見た。


「必ず、真実にたどり着ける」


その言葉に、私は静かに頷いた。

まだ道のりは長い。

けれど、確かに前へ進んでいる感覚だけは、はっきりと感じ取ることができていた。

講堂を出ると、夕暮れの空が茜色に染まっていた。

これまで積み重ねてきた孤独な戦いが、少しずつ、一人だけのものではなくなっていく。

その実感を胸に抱きながら、私は静かに歩き出した。











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