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王子の婚約者で王立魔法学園でランキング一位だった私は不正を疑われ婚約破棄をされ卒業まで「最下位令嬢」と呼ばれることになりました  作者: カルラ


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第六章 共同演習

共同演習は、二人一組で行う魔物討伐の実技訓練だ。

実戦形式で森の中へ入り、指定された魔物を討伐する。

危険を伴う分、ランキングへの配点も非常に高い、重要なイベントだった。

演習前日、教室ではペア決めが行われた。

生徒たちが次々と組み合わせを決めていく中、私の周りだけが、いつまでも空白のままだった。

誰も、私と組もうとはしない。


「不正令嬢と組んだら、こっちまで評価が下がりそうだ」


そんな声が、これみよがしに囁かれる。

反論する気力もなく、私はただ黙って自分の席に座り続けていた。

結局、最後まで残っていたのは、私とノアの二人だけだった。

教師の指示で、自動的にペアが組まれる。

周囲からは、案の定という反応が返ってきた。


「不正者同士、お似合いだ」


くすくすと笑う声が、教室の隅から聞こえてくる。

けれど、当のノアは眼鏡の奥の瞳を全く動かさず、淡々と資料をまとめ始めていた。

その様子に、少しだけ気持ちが軽くなる。

一方、教室の反対側では、大きな歓声が上がっていた。

セレフィナとハインリッヒがペアを組むことになったのだ。


「理想のカップルだ」

「さすがお二人はお似合いです」


学園中が、その組み合わせを祝福するような空気に包まれている。

私はその光景を、努めて感情を交えずに眺めていた。

演習当日、森の入り口に集まった生徒たちは、それぞれの班に分かれて散っていく。

私とノアも、指定された区画へと足を踏み入れた。


「まずは地図を確認しましょう」


私はそう言い、広げた地図に目を通した。

今回討伐対象となっているのは、群れで行動する角兎型の魔物だ。

比較的低危険度に分類されてはいるものの、群れの規模によっては油断できない相手だった。

生態を思い出しながら、私は地図上に印をつけていく。


「この魔物は水場を中心に行動範囲を持つ。とすると、ここの小川沿いに群れがいる可能性が高いはず」


私は地図の一点を指し示した。

最短距離で群れに接触できる上、周囲の地形からも奇襲を仕掛けやすいルートだった。

ノアはしばらく地図を見つめた後、静かに口を開いた。


「ここまで考えて戦っていたのか」


驚きの滲む声だった。

これまで、実技試験の場でしか私の実力を見たことがなかったのだろう。

戦略を組み立てる過程まで見せる機会は、確かに少なかったかもしれない。


「勘だけで動くのは危険だから」


そう答えると、ノアは小さく頷き、地図を丁寧に折りたたんだ。


「効率的でいい。行こう」


二人で示し合わせたルートを進んでいくと、予想通り、小川のほとりに角兎型の魔物の群れを発見した。

私が風の魔法で群れの動きを分散させ、ノアが的確に急所を突いていく。

連携は驚くほど滑らかだった。

指示を出すまでもなく、互いの動きを読み合いながら、次々と討伐を進めていく。

一時間も経たないうちに、指定数を大きく上回る討伐数を記録していた。

一方、離れた区画では、別の光景が広がっていた。

セレフィナとハインリッヒの班は、思うように討伐が進んでいないようだった。

後で聞いた話では、セレフィナは魔物の生態に関する知識がほとんどなく、危険な植物と安全な植物の見分けすらつかなかったという。

何度も誤った判断をしかけては、ハインリッヒがそのたびに彼女を助けていたらしい。

けれど、その様子を見た周囲の生徒たちの反応は、私たちの班とはまるで違うものだった。


「王太子殿下が守っていて素敵」

「あんなに一生懸命なセレフィナ様、可愛らしい」


実力不足そのものが、微笑ましい光景として受け取られていく。

その評価の非対称さに、私はまた新たな違和感を覚えずにはいられなかった。

演習終了後、集計された討伐数が発表された。

私とノアの班が、圧倒的な一位だった。

数字だけを見れば、疑いようのない結果だ。

けれど、その後に行われた評価会議で、また同じことが繰り返された。


「独断で行動した」

「協調性不足」


そんな理由で、大幅な減点が言い渡される。

最短ルートを提案し、効率的に討伐を進めたこと自体が、なぜ「協調性不足」とされるのか。

理屈としては、まったく筋が通っていなかった。

最終的な順位は、二位。

一位は、セレフィナとハインリッヒの班だった。

討伐数では明らかに劣っているにもかかわらず、なぜかその班が最上位に位置づけられている。

掲示板の前で、私はただ静かにその結果を見つめていた。

隣に立っていたノアが、懐から手帳を取り出す。

そこには、今日の演習の詳細な記録が、几帳面な文字でびっしりと書き込まれていた。


「採点表の数字がおかしい」


これまでにない、はっきりとした口調だった。

彼は手帳のページをめくりながら、静かに続けた。


「討伐数、連携の精度、対応の速さ。どれを取っても、僕たちの班が上回っている。それなのに、この結果」


ノアはそう言いながら、手帳に何かを書き写し始めた。

これまで漠然とした違和感として抱いていたものを、彼は初めて、明確な「証拠」として記録し始めていた。


「一つ一つは、小さな矛盾かもしれない。けれど、積み重ねれば」


そこで一度言葉を切り、ノアは私の方を見た。


「必ず、何かが見えてくるはずだ」


その言葉に、私は静かに頷いた。

これまで一人で抱えてきた違和感が、少しずつ、形のあるものへと変わっていく。

まだ何も解決してはいない。

けれど、確かな一歩を踏み出せた気がしていた。

夕暮れの森を出ながら、私はノアの手帳に書き込まれていく文字を、横目でそっと見つめていた。

そこに記されていく数字の一つ一つが、いつか真実を照らし出す光になることを、静かに願いながら。










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