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王子の婚約者で王立魔法学園でランキング一位だった私は不正を疑われ婚約破棄をされ卒業まで「最下位令嬢」と呼ばれることになりました  作者: カルラ


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第十章 中間ランキング発表

前期の終わりを告げる、中間ランキング発表の日がやってきた。

今回は保護者も参加する全校集会形式で行われるという。

講堂には、これまで以上に多くの人々が詰めかけていた。

ここ数か月、私は自分なりに全力を尽くしてきた。

実技試験、学力試験、研究発表、共同演習の討伐数。

そのどれもが、確かな手応えを持って上位に食い込んでいたはずだ。

周囲の生徒たちの間でも、噂が広がり始めていた。

 

「さすがに今回は十位以内だろう」

 

そんな声を、何度か耳にした。

これまでの理不尽な評価を知る者たちの間でも、少しずつ期待が高まっているのが分かった。

私自身も、心のどこかでその期待を捨てきれずにいた。

発表の時間が近づき、講堂内の空気が張り詰めていく。

教頭イザベラ先生が壇上に立ち、静かに紙を広げた。

 

「中間ランキング、発表いたします」

 

その一言とともに、順位が読み上げられていく。

上位の名前が次々と告げられる中、私は静かに、自分の名前が呼ばれる瞬間を待っていた。

そして――

 

「三十七位、リリアーナ・エルフォード」

 

その瞬間、講堂内がしんと静まり返った。

四十一位から、三十七位。

これまでの努力を思えば、あまりにも小さすぎる変化だった。

誰も、拍手をしなかった。

誰も、言葉を発しなかった。

ただ、重い沈黙だけが、講堂を包んでいた。

保護者席の方からも、戸惑うようなざわめきが漏れ聞こえてくる。

この結果に、誰一人として納得している様子はなかった。

続けて、セレフィナの順位が発表される。

 

「一位、セレフィナ・ノクス」

 

拍手は起こったものの、これまでのような熱狂的なものではなかった。

どこか義務的な、控えめな拍手だった。

その温度差だけが、この場の空気を物語っているように感じられた。

集会が終わり、講堂を出る生徒たちの表情は、一様に沈んでいた。

私に同情の視線を向ける者も、以前より確かに増えている。

けれど、それが結果を変えることはない。

数字は数字として、そこに残り続けている。

その日の夜、私はノアから呼び出しを受け、旧図書館の一角へと向かった。

薄暗い書架の間に、すでにノアとクラウスの姿があった。

テーブルの上には、これまで集めてきた採点記録が、几帳面に並べられている。


「集まってもらったのは、これを見てほしかったからだ」


ノアはそう言いながら、数枚の紙をこちらへ差し出した。

これまでの実技試験、共同演習、研究発表の採点記録をまとめたものだった。

私は一枚ずつ、丁寧に目を通していく。

項目ごとの点数が、細かく整理されている。

学力、魔法技術、剣術・護身術、指揮能力、実績。

どの項目も、これまでと変わらず高い水準を保っていた。

けれど、二つの項目だけが、毎回のように大きく削られている。

 

「実技や筆記の点数は変えられていない」

 

ノアは静かに、けれどはっきりとした声でそう言った。

 

「下がっているのは毎回『品格』と『協調性』だけだ」

 

その言葉に、私は思わず紙を握る手に力を込めた。

薄々気づいていたことではあった。

けれど、こうして数字として並べられると、その異常さがより鮮明になる。


「俺の方でも、確認してみた」


クラウスがそう言い、自分の手帳を開いた。

彼は普段から、剣術の授業ごとに教師の評価を記録しているのだという。


「教師によって、採点の傾向がまるで違う。特定の数人が、毎回極端に低い点数をつけている」


クラウスの言葉に、ノアが頷く。

二人の集めた情報を照らし合わせると、特定の教師たちが、私に対してだけ一貫して厳しい評価を下していることが浮かび上がってきた。


「これは偶然じゃない」


ノアは資料を見つめながら、静かに呟いた。

 

「誰かが評価基準そのものを利用している」

 

その一言が、静かに部屋の空気を重くした。

これまで、私はただ理不尽な結果に耐えるしかなかった。

実力で示せば、いつか認められると信じて。

けれど、この資料が示している事実は、もっと根深いものだった。

実力の問題ではない。

評価という仕組みそのものが、意図的に歪められている。


「今まで、自分が何かを間違えているんじゃないかと思っていました」


私は資料を見つめながら、静かに口を開いた。


「けれど、そうじゃなかった」


胸の奥で、これまで曖昧だった感情が、はっきりとした輪郭を持ち始めるのを感じていた。

私は負けたのではない。

評価の仕組みそのものを、悪用されているのだ。

その確信は、これまでの孤独な戦いに、初めて明確な方向性を与えてくれるものだった。


「証拠は、まだ足りない」


ノアが資料を丁寧にまとめながら言った。


「けれど、少しずつ核心に近づいている」


クラウスも頷き、静かに拳を握りしめる。


「次は、俺たちの目の届かないところまで調べる必要がある」


三人でそれぞれの資料を見比べながら、夜が更けていくのも忘れて話し合いを続けた。

窓の外はすっかり暗くなり、旧図書館の古い書架には、静かな灯りだけが揺れている。

これまで一人で抱え込んできた違和感が、今は確かな仲間とともに、真実へと近づく力に変わり始めていた。

まだ全てが解決したわけではない。

けれど、この夜集めた小さな証拠の一つ一つが、いつか大きな真実を照らし出すことを、私は静かに信じていた。











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