表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の婚約者は人生2回目なのかもしれない。  作者: 織子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/9

第八話ーオリヴィエ・カッサンドラ



「――オリヴィエ・カッサンドラ!そなたとの婚約は今日をもって破棄する!」



皇族特有の紅い髪。そう宣言したのは皇太子アルフォンス・ヴァレンティン。オリヴィエの婚約者である。アルフォンスは美しく整った顔を歪めてオリヴィエを睨んだ。

アルフォンスの傍らにはオリヴィエの義妹である、メロディ・カッサンドラが縋るように立っていた。ふわふわと流れる金髪の髪、高い魔力を持つ証しである紫色の瞳に涙を浮かべてこちらを見ている。


オリヴィエは慌てた。

「殿下、お待ちください。私の話を……!」

「そなたの話など聞く価値もない。そなたの愚行は既に調べが付いている。‥‥そなたが望むなら、このまま皆の前で罪を明らかにしよう」


オリヴィエが咄嗟に辺りを見渡すと、柱の影からオリヴィエの父であるカッサンドラ侯爵が姿を現した。侯爵は動揺しつつも、宥めるように言った。


「殿下、どうか娘に慈悲をくださいませ。このまま社交界の表に出ぬよう、領地で影を潜めて過ごさせます故」


カッサンドラ侯爵の後ろには、帝国の主要貴族達の顔ぶれが見えた。不自然に集められた彼らも、侯爵同様、狼狽えている。


(なぜここに貴族が集まっているの……?殿下は皆の前で私を断罪するつもりだったの……?)



アルフォンスは鋭い瞳をカッサンドラ侯爵に向けた。

「ならぬ。いままで目を瞑っていたが、今回の件は見過ごすことは出来ない」 


侯爵の顔色は流石に曇った。


(……お父様も私が断罪される事は望んでなかったのね。家門の恥になるから……いい気味かもしれないわ)


断罪されているのは自分だが、今まで冷遇されてきた父に一泡吹かせれるなら、それも有りかもしれない。



アルフォンスはよく通る声で、オリヴィエの愚行とやらを一つ一つ上げていった。――曰く、メロディに嫉妬して起こした数々の愚行。私物を壊したり、メロディのアレルギーの物を食べさせたり、果てには刺客を差し向けたなど。オリヴィエからしてみれば、何一つ見覚えのない事だが、アルフォンスの物言いをみる限り、オリヴィエがしでかした事由だと確信しているようだ。アルフォンスがメロディに心酔しているのは、帝国の貴族の大半が知っていた。


オリヴィエはメロディに視線を向けた。メロディは震える手で口元を覆っている。淑女特有の動作に見えるが、おそらく笑みに歪んだ口元を隠しているのだろう。



メロディがオリヴィエの日常に現れてから、オリヴィエの周りからの評価はどんどん下がっていった。整ってはいるものの、元々愛嬌のない顔立ちだ。皆オリヴィエを煙たがり、離れていった。


身に覚えのない事で責められても、オリヴィエは否定しなかった。メロディに嵌められているのは分かっていたが、侯爵令嬢であるという自尊心が、彼女にいいようにしてやられる事を認めなくなかったのだ。



この日の断罪後、オリヴィエは全ての罪を押し付けられ、投獄された。罪人とはいえ、侯爵令嬢だ。貴族牢に入れられるとばかり思っていたが、入れられたのは平民の罪人が入る独居房だった。不衛生な空間で、オリヴィエは身も心も弱っていった。


数日で出されると思っていたが、一週間経っても、二週間経っても牢から出されることはなかった。


三週間目には爪で壁を削ってみるようになった。もしかしたら壊せるかもしれない。爪が剥がれ、余りの痛みにすぐに止めた。しかし次の日にはまた同じ事をした。

誰も訪れない。暗く、じっとりとしていて窓もない空間。オリヴィエは切実にここから出たかった。



――半年後、閂が外された。起き上がる気力もなく、視線だけ上に向ける。


「お姉様」

明るく、張りのある声。


「メ‥‥」

しばらく声を出してない上に、喉はカラカラだ。声が出るはずもなく、オリヴィエは目を閉じた。



「‥‥ふふっ」


思いもかけない声に、オリヴィエはもう一度目を開いた。ぼんやりとした視界に、メロディの歪んだ顔が見えた。


「お姉様、まだここにいらしたの?皆、お姉様の事なんて忘れていたみたいね」


悪意の孕んだ声音に、オリヴィエの視界はますます滲んだ。涙が一筋流れたあと、オリヴィエは自分が泣いていることに気付いた。


「うふふっ。お姉様、悔しくて泣いてるの?仕方ないじゃない。お姉様が、皇太子妃の座を譲らなかったのだから。でも、もういいの。今は私が皇太子妃よ。お姉様の役目はもうないわ。……あとは…」


メロディがオリヴィエに向かって手をかざした。手のひらに光が集まり、光る球体になった。


「私は光属性だけど、お姉様の属性は闇だったわよね?たしか反対属性の魔力は、ぶつければ反発しあって爆発するって聞いたことがあるの。お姉さまは元々魔力が少ないけれど……これをお姉様にぶつければ、どうなるのかしら」


メロディはクスクスと嗤いながら言う。メロディの瞳に殺意ともとれない、歪んだ揺らぎが見えた。


(どこから間違えたのかしら……)


オリヴィエは揺れる光の玉をぼんやりと見ながら考えた。


(もう思い出せない幼い頃、急に現れたメロディを受け入れられなかったから?自分より可愛がられるメロディに冷たく接するときもあった……)


そうだ。たしかに、メロディとの確執の始まりはオリヴィエだ。自分の幼さ故に招いた過ち。しかしオリヴィエは次の年には思い直し、メロディに冷たく当たる事を辞めた。その後、メロディがオリヴィエを悪役に仕立てるように仕向けてくる様々な事柄を、甘んじて受け入れていたのも、冷たくしていた後ろめたさがあったからだ。


皇太子の婚約の件は、オリヴィエにはどうしようも出来なかった事だ。


どこから間違えたのかなど、考えても分からない。


(もう疲れた)


オリヴィエは目を閉じた。


「お姉様?死んでしまったの?」


メロディの言葉が聞こえた。

自分が死んだのか分からないが、オリヴィエの意識は唐突に途切れた。





この回から、しばらくオリヴィエ視点に変わります。


読んでいただきありがとうございます。


いいね、ブクマ、☆☆☆☆☆など応援いただけると励みになります(^^)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ