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転校生の天然寡黙系な大和撫子に構われる件  作者: わふ


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七話 中間テストに構われる

 

 正式に天文部の部員になった俺達は、部室に集まっていた。


「――と言う訳で、天文部の部長は御縁、あんたって事で申請しといたから」

「私が、ですが?」


 結局ただの風邪で、翌日何事も無かったかのように登校して来た御縁に、昨日の出来事を説明していた。


「申請するのに部長を決めなくちゃいけなかったからな。だからお前に任せた」

「それは構わないのですが。私でよかったんですか?」


 正直、部長と言う面白そうな役は俺がやりたかった。でも、言い出しっぺはこいつだ。


「私よりも恭也君や、元部員だった星塚ちゃんの方が適任だと思うんですが」

「そもそもの切っ掛けを作ったのは御縁だ。そのお前を差し置いて、俺が部長になったんじゃあ、面白くないだろ?」

「あたしは部長とかの肩書きに興味ないから。それにどうせ今年で卒業だし」


 他の二人も、部長が御縁だと言う事に異論はなかった。


「僕は勧誘された側だからね」

「右に同じ。部の方針は立案者で決めたらいいと思うわ」

「……分かりました。皆さんがそう言うなら、喜んで部長になります」


 喜んで。そう言ったが相変わらず表情は一ミリも変わらない。流石に慣れてきた。


「ところで、部長って何をすればいいんでしょうか」


 ……まぁ、こうなるか。


「恭也君、何をすればいいと思いますか?」

「俺に聞くのかよ……」


 今まで帰宅部だった俺も経験ないしなぁ。


「とりあえず、部の活動――やる事を提示すればいいんじゃないか?」

「やる事ですか。それなら――」


 天文部部長から初めての命令が下る。


「まずは、部室の掃除をしましょう」


 それは、天文とは全く関係ない活動内容だった。

 確かに。部室は依然といらなかったり関係ない物と、約半年分の埃が積もっていた。


「……まぁ、何をするにしても、部室がこの有様じゃ、しまらないよね」

「この散らかり具合、かなり掛かりそうね。来週一杯までには終わらせま――」

「いや、それは無理ね」


 星塚が真面目な顔で断言した。


「何で? 琴野の言う通り、今週の内には無理でも、流石に来週には終わる量だろ?」

「そう言う問題じゃない」


 来週までに終わらない理由、何かあるんだろうか。琴野や俺の目星は、そう外れていない筈だ。


「だってーー来週から中間テスト期間だから」



 ◇◇◇



 テスト、それは大体の生徒が良いイメージを持っていないだろう。

 そして、苦労する奴が必然的に現れる。例えば、日頃から真面目に授業を受けていない奴とか。



「恭也、お願い! テスト勉強手伝って!」


 テスト本番、前週の月曜日の昼休みに、いつもみたいに御縁と屋上で昼飯を食べていた時。

 珍しく沙夜がやって来たと思えば、まるで神社にお参りするかのように手をすり合わせて、懇願してくる。


「このままじゃ絶対赤点で補習確定だから! お願いっ!」


 中学の頃から、何度同じ頼みを聞いてきたか。俺のとってこの光景は、もはやテスト期間中の名物と化していた。


「補習のせいで部活に参加出来ないの嫌だし、だから何卒!」

「授業を聞いていないお前の自業自得だろ」


 とは言いつつも、こいつの頼みは毎回聞いている。


「……って訳だ。勉強会、沙夜も参加するみたいだけど、いいか?」

「私は恭也君がいいなら構いません」


 先約をしていた、隣に座ってサンドイッチを頬張っている奴に確認を取る。


「御縁と勉強する予定だったんだ……よかったら私も一緒にいい?」

「はい。私ももしかしたら力になれるかもしれません。こう見えて勉強は得意ですから」


 どう見えてだよ。最初会った時から勉強は出来そうって思ってたよ。


「意外だと思いますが、私の唯一の取り柄です」

「え、全然意外じゃないけど。と言うか予想通り」


 自信満々に言い切る御縁のせいで、俺の感性がおかしいんじゃないかと一瞬思ったが、沙夜がその考えを正してくれた。


「それで、勉強会は何処でするの?」

「まぁ、いつもみたいに俺の家でする予定だ」

「お、いいわね。じゃあ早速今日の放課後から始めましょ!」


  そう言う訳で放課後、俺は二人と共に家までの帰路を歩いていた。


「そう言えば久しぶりね、恭也ん家行くの」

「中学ぶりだな。母さん、お前に会いたがってたぞ」


 最近連れて来ないから心配もしていた、と言う情報は何となくだけど伏せておこう。


「恭也君が私の家に来た事があっても、私が恭也君の家に行った事はなかったですね。どの辺りなんですか?」


 御縁の問いには答えず、とある建物の前で足を止める。


「……? ここが、どうかしたんですか?」

「ここだ。ここが俺の家」

「……ここが、ですか?」


 流石に予想外だったのか唖然としている。


「珍しい、今日はこっちから入るの?」

「さっきも言っただろ。母さんが会いたがってたって」


 今の時間なら多分こっちにいるだろうからな。


「……ここが恭也君の……」


 御縁の目に映っているのは、西洋風と和風が融合した店舗部分の光景。入口の上に掲げられた木目の看板には『甘味処 高城』と大きく書かれている。

 実は俺の家は、母さんが和菓子屋を営んでいた。

 のれんと引き戸を潜ると、そこまで広くはないが椅子と机が八セット並んでいる店内がある。


「――おかえりなさい、恭也」


 そして見慣れた姿と、聞き慣れた優しさを感じる声で迎えてくれる。

 俺の母さん、高城(たかしろ)(ゆき)だ。

 母さんは店の雰囲気に合わせて、着物を着ている。


「ただいま」

「こっちから入ってくるの珍しいね。いつも営業の邪魔になるからって、頑なに裏の玄関から入るのに」

「まぁ、ちょっと」


 母さんと話していると、背後から沙夜が顔を覗かせる。


「久しぶりです、恭也のお母さん」

「え? 沙夜ちゃんじゃない。久しぶりね! 元気にしてた?」

「はい、この通り元気です」


 普段はおちゃらけている沙夜だが、こう言う場面ではきっちりとしている。


「それと……そっちの子は……」


 母さんが御縁に視線を向ける。


「こいつがこの前話してた御縁」

「ああ、確か転校生の……」

「御縁綴です。よろしくお願いします」


 御縁は深々と頭を下げる。


「あら、礼儀のいい子ね。恭也の母、高城雪です。よかったら、この子と仲良くしてあげてね」

「はい、仲良くしてます。恭也君とは友達なので」

「あらあら、それはまぁまぁ……」

「……何だよ?」

「ううん、別に?」


 何故かこっちを見てニヤニヤしていた母さんを後に、二人を連れて店奥から繋がってる住居部分に移った。


「あれ、兄貴。帰ってたんだ?」


 二階へと続く階段を上ろうとした所で、また家族から声を掛けられる。

 リビングからちょうど出てきた妹の凪砂だ。


「って、沙夜姉もいるじゃん」

「久しぶり、凪砂。今年から中学だっけ」


 凪砂は、いつからか頻繁に家に来ていた沙夜を『沙夜姉』と呼ぶようになっていた。


「それと……」


 凪砂はただでさえ細い目を凝らし、御縁の顔をじっと見る。


「……誰?」


 やっと彼女に向けられた言葉はそれだった。


「御縁綴と言います。恭也君の友達です」

「みえにし……つづり……ああ、この人が」


 俺が以前に話した事を思い出したんだろう。


「御縁、こいつは妹の凪砂だ」

「妹さん……何だか不機嫌でちょっと怖そうです」


 こいつまた、初対面の奴にとんだ感想を……。まぁ、凪砂なら気にしないだろうが。


「あーはいはい。よく言われる。でもこれが取り繕ってない普通の態度だから」


 不機嫌と言うか、気怠そうな態度をしている自覚はあるらしい。巷では凪砂みたいな奴の事をダウナー系と呼ぶらしい。


「――それよりさ」


 凪砂は一呼吸置いてから再び口を開いた。


「御縁、綴だっけ。聞いてるよ、この前の事」


 この前の事。それは御縁が風邪を引いた時の話を指している。

 そして、彼女に一歩詰め寄る。


「……ねぇ、あんまり兄貴に迷惑掛けてたら、こうだから」


 凪砂はかなりの身長差がある御縁を睨みつけ、握った拳を振り上げて威嚇する。

 身長は小さいが、無表情な御縁と対比になって圧が際立っている。


「……恭也君、やっぱりこの妹さん、怖い人です」


 御縁は助けを求めるようにこっちを見る。


「うわ……久々に見た。凪砂のブラコンモード」


 沙夜はそんな凪砂に対して若干引いていた。


「普段は普通なんだけど、恭也の事となるとちょっときもくなるのよね」


 分かる。当の本人の俺も、やめて欲しいと心の底から願っている。


「何? そりゃあ兄貴に迷惑掛けられたら怒るでしょ。大事な家族で兄妹なんだから」


 こんなちょっと臭い事を平然と言うのも、やめて欲しい。

 御縁が凪砂に恐縮しきっていたので、適当に話を切り上げて俺の部屋へと連れて行った。


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