四話 四人目に構われる
放課後。俺達三人は正門前で入部希望者を募っていた。
「天文部の部員募集してまーす」
「て、天文部を復活させようとしてます。お、お願いします……」
「お願いします」
下校する生徒達を天文部に勧誘すべく、俺達三人で呼び掛けを続けていた。(主に俺だけだが)
「お前らも、もっと声出せって」
御縁はいつも通り無表情、普段の声量で、星塚は大声を出すのが恥ずかしいのか、二人はあまり役に立ってない。
「し、仕方ないじゃん! 普段は大きな声を出さないんだから!」
「教室であんな恥ずかしい事を大声で言ってた奴が今更何言ってんだ」
「あ、あれは、その……勢いで……」
ならその勢いを今発揮してくれたら、おれのふたんが幾分か減るんだがな。
「それにほら、あたしはこれ持ってるんだから、別に良くない?」
星塚の両手には『部員募集中』と書かれたプラカードが握られている。以前使っていた物らしく、元天文部の部室だった教室から持ってきたらしい。
「態々持ってきたんだな」
「前に折角作って全然使ってなかったからね。だから使える時に使わないと可哀想じゃん?」
ほぼ一人で声を出して、部員を勧誘しようとしてる俺も可哀想と思ってほしい。
「つーかあたしより御縁の方が役に立ってないじゃん。声は小さいし、無表情だし」
それはいつもの事だからなぁ。半分諦めている。
「私はいつもより声を出してるつもりなんですが……」
「何処が!? あたしを勧誘しに来た時と同じぐらいだけど!?」
と、すかさずツッコミを入れる。
「高城、あたしには文句言って、こいつには何も言わないってどういう事? もしかして贔屓してんの?」
「いや、お前にだけって訳じゃない」
だが実際、文句を表に出してぶつけているのは星塚に対してのみ。
「不平等じゃん。天文部の決まり、忘れてないでしょうね?」
御縁に対しては諦めているだけで、そういうつもりはないが一理ある。
「平等、だろ? 分かった分かった。じゃあ御縁、適当な生徒に声掛けて勧誘して来い」
納得して、なし崩し的にそう指示する。
「いきなり!? 何か言えとは言ったけど、そんな急に――」
「分かりました。行ってきます」
と、とぼとぼと歩いて行った。
「行くんだ……断ると思ってた」
「別にやる気がない訳じゃない。どうするべきか分からなかったんだろう。声出しも、あれで大声を出してると思っているんだろう。あいつは天然だからな」
「変わってるね」
お前も大概だけどな。
星塚と話している間に、御縁が一人の男子生徒に話し掛けた。この距離からは何を話しているか聞こえないが、普通に会話は出来ているみたいだ。ひとまず安心だ。
しかし、相手の男子生徒の顔は見た事ある――どころか、俺はその顔をほぼ毎日見ている。
「あいつって……」
「何? 知り合い?」
その生徒が誰か分かった時、御縁がそいつを連れてこっちに戻って来た。
「恭也君、入部してくれる人を連れて来ました」
「え? 入部希望者を連れて来たの!?」
星塚が驚くのも分かる。俺も無理だと思っていた。
だが、御縁連れて来たこの男子生徒の正体を知っているから、驚きはしなかった。
「天文部を立ち上げようとしてたとは知らなかったよ、高城」
そいつは学校がある日なら毎日顔をあわせている人物。今日も例外じゃない。ついさっきも教室で会っていた。
「何だ、お前かよ宮下」
「やれやれ、それが新入部員を歓迎する挨拶かい?」
爽やかな話し方で優しい雰囲気がある男子生徒。宮下千尋。
こいつは俺と御縁のクラスメイトで、誰に対しても優しく接し、誰とでも仲良くなれるクラスのムードメーカー的存在。
「宮下君、このギャル先輩がさっき話してた人です」
「星塚先輩、でしたっけ。どうも、宮下千尋です。この二人とはクラスメイトでして、と言う訳で天文部に入部するんでよろしくお願いします」
「どう言う訳!?」
星塚の驚く気持ちもまたまた分かる。今回は俺も驚いている。
なんでこいつが入部してくれるんだろうか。もしかして天文部の活動に興味あるんだろうか。
「お前って天文学に興味あったんだな」
「ないよ?」
ないのかよ。
「じゃあなんで入部するんだ?」
「だって二人とも、入部希望者が居なくて困ってるんでしょ? だから部設立のために入部してあげよっかなって」
ちょっと上から目線で腹立つが、ありがたいのは確かだ。だが幾ら優しいからって、態々入部してくれるとは、呆れてしまう。
「それだけで入部してくれるのか。やっぱりお前って優しいんだな」
こんなにすんなり入部してくれる事に、異議があるに決まっている。
しかし、とにかく俺達天文部は部員がほしい。このチャンスを頭ごなしに断る事は出来なかった。
「いや、それだけじゃないけど?」
「……だろうな」
やっぱり裏があった。変な理由だったらどうしよう。断るしかないか?
「その理由も本心だけど、面白そうだからって理由もある」
「面白そうって……めっちゃ適当な理由じゃん……」
面白そう……。
「だってクラスメイト二人が部を立ち上げようとしてるんですよ? 乗らない理由はないと思いますが……」
星塚に説明した詳細はよく分からないが。
「面白そう、か……お前――」
――めちゃくちゃ素晴らしい理由じゃないか!!
「採用だ!」
「え、即答……?」
星塚が引いてるが知ったこっちゃない。好奇心がある奴は問答無用で採用だ。それに、俺自身も元を正せばこいつと同じような理由で天文部を復活させようとしている。
何か企みがあって入部しようとしているのなら話は別だったが、今現在宮下千尋を拒む理由はない。
「私も勧誘します。部員数も増えて、クラスメイトの宮下君が入ってくれるのは嬉しいです」
「だな。と言う訳だ。よろしくな宮下」
「うん、こちらこそ」
こうしてクラスメイトの宮下が入部してくれる事になった。
「まぁあんた達二人がいいならいいけど……その代わり、天文部のルールには従ってもらうから!」
「それは勿論ですよ、星塚先輩」
これで部設立の為に必要な部員数はあと一人になった。この調子でもう一人見つかればいいんだが、どうだろうか。




