上が決めて、下が壊れる。いつものことだが、今回は壊させない④
五月十六日。火曜日。
平穏は、この日で終わった。
朝の端末確認。エネルギー値は全員安全圏。気温正常。重力正常。時間正常。異常なし。
異常はなかった。数値の上では。
しかし、メッセージが一件届いていた。
<社内通達 第4,812,006,402号>
<件名:第七地下区画の変位個体配置に関する決定事項>
件名を見た瞬間、腹の底が冷えた。
<関係各位>
<先般発生した深層層・封印区画D-07のエネルギー漏洩に関する調査報告及び、深層対応専門部署による現地評価を踏まえ、以下の通り決定いたしましたので通知いたします。>
<決定事項:第七地下区画に収容中の変位個体5体について、D-07漏洩の影響範囲外への分散移管を実施する。>
分散移管。
決定。
決定した。
<移管先及びスケジュール:>
<変位個体001(ノクス)→ 第一地下区画>
<変位個体002(セラ)→ 第二地下区画>
<変位個体003(メルト)→ 第一地下区画>
<変位個体004(ラグナ)→ 第二地下区画>
<変位個体005(カイム)→ 第一地下区画>
<移管実施日:5月22日(月)>
<現管理者(灰嶋司)は、移管完了後、第七地下区画の閉鎖処理を行い、再配置先について追って通知を受けてください。>
<以上>
六日後。
六日後に、彼女たちがバラバラにされる。
そして、俺も再配置。第七区画は閉鎖。ここが、なくなる。
「…………」
端末を握る手が震えた。怒りではない。恐怖でもない。もっと底の深い感情。名前がつかない。
端末が鳴った。戸波さんから。
<灰嶋くん、通達を読みましたか>
「読みました」
<会議室に来てください。話しましょう>




