上が決めて、下が壊れる。いつものことだが、今回は壊させない③
セラとカイムにも変化があった。
セラは空間制御の精度が上がり、九割五分が常態になった。時々九割八分を叩き出す。
「つかさ! 今日、九割八分! 自己ベスト!」
「すごいですね」
「残りの二分が、ちょっとだけ裂けるけど」
「二分で何が裂けるんですか」
「ドアノブとか」
「ドアノブを裂かないでください」
「がんばる!」
空間制御九割八分。残り二分でドアノブが裂ける。ドアノブの交換費用は一個500ポイント。月の手取りの六割がドアノブで消える計算だ。消えないけど。消えないが、ドアノブは壊さないでほしい。
カイムは、時間の重なりが完全に消えた。「今日は一本道だよ」が毎朝の挨拶になった。安定している。
ただし予言の精度は相変わらずまちまちだ。
「司くん、明日の夕飯、カレーじゃないよ」
「カレーが出ると思ってませんでしたが」
「カレーじゃないものが出る、って予言しておくね」
「カレーじゃないものは栄養ブロック以外にほぼ存在しないんですが」
「栄養ブロックでもないよ」
「……何が出るんですか」
「パン」
翌日、本当にパンが配給された。栄養パン。味はないが、形がパンだ。栄養ブロックとの違いは形だけだが、カイムは嬉しそうだった。形が変われば気分も変わるらしい。
「ね、当たったでしょ?」
「当たりましたけど、予言の使い方として正しいのか疑問です」
「予言に正しい使い方なんてないよ。楽しければいいの」
【境界の魔法少女】の予言は、世界の命運を左右することもあれば、明日の配給品を当てることもある。振れ幅がすごい。




