午前九時、地下117階の管理棟に、地獄が出勤してきた⑤
二巡目。ラグナから。
「ラグナ! もう一回走るぞ!」
「うん!」
走る。通路の壁が振動する。照明が一個割れた。非常灯なので交換品があるか怪しい。
119%……116%……113%。三分、6ポイント減。
次、ノクス。
「ノクス」
「……また?」
「また」
「チョコ」
「さっき一個半渡すって言いましたよね」
「あれは一回目の分。二回目は別料金」
回数課金制を導入してきた。世界の危機の最中だというのに……!
「じゃあ来月の三個のうち二個先払いということで」
「来月一個しか残んないじゃん」
「来々月に持ち越します」
「……まあいい」
110%……108%……106%。三分、4ポイント。
次、セラ。107%……104%……102%。三分、5ポイント。
次、メルト。103%……101%……99%。三分、4ポイント。安全圏に入った。メルトだけ安定している。
カイムの元に行く。
「カイム、お前も抽出する。三分だけ」
「いいよ。でもその前に、一つ言っておくね」
「なんですか」
「ラグナが三巡目でやばくなる。三分じゃ足りない」
三秒の未来予知ではなく、もっと先が見えている。
「どのくらいやばい?」
「臨界点には入らない、たぶん。でも、制御がぐらつく。影が――」
カイムの声が途切れた。
目がぶれた。焦点が二つに分裂したように見えた。三秒後と今が重なっている。
「カイム?」
「……ごめん。今のは、うん、大丈夫。抽出して」
カイムを椅子に座らせる。装置起動。108%……106%……104%。三分、4ポイント。
二巡目完了。所要時間、36分。応援到着まで、あと一時間半弱。
全員の数値。
<ノクス:106%→上昇中>
<セラ:102%→上昇中>
<メルト:99%→微上昇中>
<ラグナ:113%→上昇中>
<カイム:104%→上昇中>
モグラ叩きは続いている。叩いても叩いても出てくる。しかし、叩き続けてさえいれば、出てきた頭が天井を突き破ることはない。
たぶん。
三巡目。ラグナから――
端末が震えた。メルトからのテキスト。
<ラグナ、部屋で泣いてる。エネルギー値121%。急上昇。>
121%。抽出室にいる間に8ポイント上がった。
走った。ラグナの部屋へ。




