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終末世界の管理業務。人材より人命が足りていません――欠勤事由:死亡のため  作者: ぶらっくそーど
第一項:死なないこと

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知らなかったのは俺だけで、知らされていなかったのも俺だけだった⑤


 カイムの部屋。


「おはよう、司くん。今日、戸波さんに色々聞いたでしょ」


 もう知っている。未来を見ているのか、それとも単に察しがいいのか。


「聞きました」


「そっか。どうだった?」


「怖かったです」


「だろうね」


 カイムは微笑んだ。いつもの穏やかな微笑み。


「わたしのことも聞いた?」


「はい。カイムとノクスは、本来は深層(アビス)級だと」


「うん。そうだよ」


 あっさり認めた。


「わたしの本当の姿はね、全部の時間に同時にいるの。過去も未来も、今も。全部重なってる。人型制御ヒューマンフォーム・プロトコルが、わたしを『今』だけに固定してくれてる。だから、こうして司くんと話せる」


「固定されていないと?」


「司くんの昨日と今日と明日が全部同時に見えて、わたし自身の昨日と今日と明日も全部同時に存在して、区別がつかなくなる。時間って、順番に流れてるから意味があるんだよ。順番がなくなったら、何もかも意味がなくなる」


 因果律の崩壊。原因と結果が区別できなくなる。


「……怖い話ですね」


「でしょ? だから、わたし、ここが好きなの。人型制御ヒューマンフォーム・プロトコルがあるから、わたしは『今この瞬間』に司くんと話せる。明日の司くんじゃなくて、今の司くんと。それって、すごいことだと思わない?」


「すごいかどうかは分かりませんが、ありがたいことだとは思います」


「ありがたい?」


「カイムが今ここにいてくれるのは、ありがたいです。未来を教えてくれるし、カレーの予言も当たるし」


「あはは。わたしの価値、カレーの予言なんだ」


「カレーの予言は大事です。配給品の栄養ブロック生活の中では」


 カイムが笑った。穏やかに、今この瞬間だけを見て笑った。


「ねえ、司くん」


「はい」


「今日、いいことがあるって言ったの覚えてる?」


「覚えてます。カイムが言ったんですから」


「うん。もうすぐだよ」


「何ですか?」


「んー。言っちゃうとつまんないんだけど……」


 カイムが人差し指を立てた。


「司くんに届くものがあるよ。端末に。もう少ししたら」



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