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終末世界の管理業務。人材より人命が足りていません――欠勤事由:死亡のため  作者: ぶらっくそーど
第一項:死なないこと

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34/88

深層は、ゆっくりと這い上がってくる①


 来週の金曜日は、まだ来ない。


 その前に、面倒ごとが先に来た。


 四月二十一日。金曜日。臨界点クリティカル・ポイントから九日後。


 朝の端末確認で、見慣れない通知が表示されていた。



<社内通達 第4,812,006,301号>

<件名:第七地下区画(セクター)への査察について>

<関係各位>

<先日発生した臨界点クリティカル・ポイントに関する報告を受け、品質管理部による査察を実施いたします。>

<査察日:4月24日(月)>

<査察内容:変位個体(ディスプレイスド)の管理状況、設備の運用実態、抽出(ドレイン)効率の確認>

<査察官:品質管理部 榊原(さかきばら)(たまき)

<備考:査察結果は今後の予算配分に反映されます。ご協力をお願いします。>



 査察。




「戸波さん」


「読みましたよ」



 戸波さんは事務室に来た時点で、すでに諦めた顔をしていた。



「品質管理部の査察は、要するに予算削減のネタ探しです。何か問題が見つかれば、それを理由に配給ポイントや修繕費が削られる」


「修繕費を削られたら、ラグナが走った後の通路を直せなくなるんですけど」


「そうなりますね」


「通路を直せなかったら、次の抽出(ドレイン)ができなくなるんですけど」


「そうなりますね」


抽出(ドレイン)ができなくなったら暴走するんですけど」


「そうなりますね」


「全部そうなりますねじゃないですか」


「そうなりますね」


 壊れたテープレコーダーと話しているみたいだ。


榊原(さかきばら)(たまき)という人は、どういう人ですか」


「品質管理部のエース。切れ者です。数字しか見ない人で、現場の事情は考慮しません。効率が低ければ予算を削り、事故が多ければ人員を削り、問題があれば区画ごと閉鎖を勧告する」


「区画閉鎖?」


「可能性としてはありますよ。第七区画の修繕費は全区画中ワースト1位ですから。上から見たら、費用対効果の悪い区画を閉鎖して、変位個体(ディスプレイスド)を他の区画に分散させたほうが効率的、という判断になり得る」


 彼女たちがバラバラにされる。


「それはダメです」


「ダメだと思いますよ。でも、査察官を説得するには、数字で示す必要があります」


「数字……」


抽出(ドレイン)効率。第七区画の変位個体(ディスプレイスド)五体から回収されるエネルギーが、太陽維持にどれだけ貢献しているか。その数字が修繕費に見合うものであれば、閉鎖の話にはなりません」


 抽出(ドレイン)効率。エネルギー回収量を修繕費で割ったもの。


「戸波さん、その数字はどうなんですか」


「実は悪くないんです。ラグナちゃんのエネルギー回収量は全変位個体(ディスプレイスド)中でもトップクラスですし、五体合計の供給量も、上位区画に引けを取りません。問題は修繕費が異常に高いこと。つまり、分母が大きい」


「分母を小さくするか、分子を大きくするか」


「灰嶋くん、数字に強いですね」


「生き延びるのに必要なだけです」


 査察は月曜日。あと三日。


 三日で、この区画の存在価値を数字で証明しなければならない。



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