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終末世界の管理業務。人材より人命が足りていません――欠勤事由:死亡のため  作者: ぶらっくそーど


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30/58

平穏な日々は、だいたい次の災害の前振りである②


 月次報告と格闘しながら、午前中の抽出(ドレイン)を回す。


 ノクスの抽出(ドレイン)。今日のエネルギー値は103%。安全圏の上限をわずかに超えている程度。軽い抽出(ドレイン)で済む。



「ノクス、始めますよ」


「……ん」


 目を閉じたまま。今日は毛布を持ち込んでいない。珍しく素直に椅子に座っている。



 装置を起動する。103%……100%……97%……。順調に下がる。



「ね」


「はい」


「銀紙、あった?」


「チョコの銀紙ですか? まだ来月分のチョコが届いてないので、銀紙もまだです」


「……そう」



 95%……92%……90%。安全圏の中央。完了。



「終わりです」


 ノクスが薄目を開けた。



「……あんたさ」


「はい」


「銀紙集めてどうするかとか、訊かないの」


「訊いてほしいんですか」


「べつに」


「じゃあ訊きません」


「…………」



 ノクスが、じっとこちらを見ている。



「……訊いてもいいけど」



 訊いてほしいのか訊いてほしくないのかどっちだ。



「じゃあ訊きます。銀紙を集めてどうするんですか」


「……あたしが覚えてたいものリスト、作ってる」


「覚えてたいもの?」


「あたしの力は、忘れさせる力。でもあたし自身も、ときどき忘れる。前の管理者(マネージャー)の顔とか。名前とか。ずっと前にいた人のこととか」



 ノクスの声が、いつもの気だるさとは違うトーンになっていた。



「銀紙は残るから。チョコは食べたらなくなるけど、銀紙は残る。だから、チョコをもらった日と、誰にもらったかを銀紙に書いておく。忘れないように」



 忘却の魔王が、忘れないための手段を探している……か。



「……そうだったんですか」


「べつに大した理由じゃない」


「いえ。大事な理由だと思います」



 ノクスは目を逸らした。



「……来月のチョコ、ちゃんと二個ちょうだい」


「約束します」


「銀紙も」


「はい、銀紙も」



 管理者マニュアル(灰嶋版)に追記した。



 第七項の補足:ノクスが銀紙を集めるのは、覚えていたいから。絶対に捨てるな。



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