彼女がフラグを建てたなら
またしても遅くなってマジにすいませんでした。お目汚しになるかもですが、よろしくお願いします。
あと、今度始まった仮面ライダードライブはタイヤ無い方がかっこいいんじゃなかろうか、とマジに友達と議論してました。
大粒の雨が降りしきる中、俺こと剣崎 和人は当ても無く街の外へと向かっていた。豪雨でろくに前も見えず、身体の節々が悲鳴をあげ、意識も朦朧として最早倒れるのも時間の問題といった状態だった。そんな傷だらけの状態だが、それより痛むのは心であった。
何とか町外れの森まで来ると、その中でも大層丈夫そうな大樹に身体を預けると、すっと腰を下ろした。
「また、やってしまった。どうして、どうして俺なんか。」
思い返すはあの時のカグラ。あの泣きそうな表情は俺の心を深く抉った。
「もう誰もいらないと決めた筈なのに。」
拭い去れない過去の記憶が、自身の弱さが髣髴する。誰も守れず、全てを失ったからこそ、もう誰も側にいさせない。最初から居なければ、もう失わなくて済む。そんなガキっぽい考えをずっと守ってきた。なのに性懲りもなく誰かと関わって、あまつさえ側にいたいとさえ思ってしまった。
椿、泉、博士、ネロ、カグラ、キッド、他のギルドの皆。誰も彼も会ったばかりの俺を大切に思ってくれていた。いや、これももしかしたら俺の妄想なのかもしれんが。俺の痛い勘違いにしても俺自身がそう思ってしまった。そんな自分が嫌で何を言うでもなく、自分勝手に逃げ出してしまった。きっと今頃、特にあの3人は怒っているだろうな。
「まったく、何をするにも中途半端すぎて何も言えないな。まぁ、けど今はこの抗い難い睡魔に身を任せようか。考えるのは起きてからにしよう。」
そうして俺は静かに瞼を閉じた。今だけは嫌なこと全部忘れられる安らかな眠りを望みながら。
まさか、いくら俺の運が天元突破のFランクでも夢の中で襲われたりとかしないよな。ファンタジーやメルヘンじゃああるまいし。って、今はファンタジーか。
「へぇー、こんなとこに人がいるなんて珍しいな。これは占いも強ち馬鹿に出来んな。まったく。」
所変わって、ギルド『ケルティス』では、
「う、うーん。あれ、ここは?」
「目を覚ましたか、カグラ。おいてめーら!ギルド長のお目覚めだ。」
相変わらずの役所に訴えたくなるレベルの騒音の中、徐に私は目を開けた。いつもなら軽いお仕置きをする所だが、今日は身体の疲労がまだ取れないから見逃そう。一先ず身体を起こすと、周りには内のギルドのメンバーが大勢いて、辺りは騒然としていた。にしても改めて見ると内のギルドは暑苦しいなまったく。まぁ、ギルドのメンバーなんて殆ど男だし、当然と言えば当然だけど。
一先ず皆に挨拶を済ますと、何故か皆が私に困惑したような表情を浮かべながら、あっという間に出ていってしまった。
静まり返った部屋の中でぼうっとしていると、何故私が倒れているのか、というより昨日の出来事が頭をよぎった。突如顕現した生物から逸脱した何か、その畏怖すら覚える圧倒的な力に私は全く歯が立たなかった。いや、そもそも戦うという意志を根刮ぎ奪われたようだった。これでもギルド長として数え切れない敵を倒し、膨大な量の修羅場を潜り抜けてきた筈なのに。けど、そんな敵をあいつが倒してくれた。そう、ついこないだ来たナイト。彼は初めから何処か変だった。自分の気持ちや実力など全てを隠して、人と関わらないようにしていると思った。特にナイトの力は底が見えなかった。きっと私のドラグニュートの生存本能だからこそ気づけたのだろう。それなのに危機感を覚えなかったのは彼の人徳か否か、私には分からなかったが優しさだけは感じた気がした。
そしてあの戦い。今までの戦闘とは明らかに一線を画す戦い。あれはまさに暴力だった。手に持つは蒼穹のオーラを纏った黄金の大剣。その大剣の一振りに空気は叫び出し、大地は崩れさった。その立ち振る舞いは言うなれば暴君といった感じだった。
しかし、今の私にはそんなことよりもっと重要なことを思い出した。
「私、恋しちゃったんだ。」
いきなり生娘みたいなことを呟きながら、私の身体は熟れたトマトのように真っ赤になった。改めて意識すると何だが複雑な気分だ。ナイトのことを思うだけで胸に何かが詰まったみたいに苦しくなる。けど、決して不快ではなくずっと浸っていたくなるような心地の良い感覚だった。
私の代わりにあいつに立ち向かってくれたあの勇姿、昼に見せたあの朗らかな笑顔、全てが愛しく思えるが、私の脳裏に1番色濃く過るのはあの悲しそうな、何かに堪えるような表情だった。
「諦めなきゃダメなのかなぁ?」
あの表情を私がさせてしまったと考えるだけで涙があふれてきた。私はナイトの側にいてはいけないのだろうか。
コンコン
「カグラ、ちょっといいかい?」
急にノックの音が空虚な部屋に響いた。慌てて頬を濡らした涙を袖で拭き取ると、静かに扉を開けた。そこに居たのは優しげな笑顔を浮かべている老婆はマーサ、彼女はギルドの料理長をしていて、さらに内の1番の年長者という事もあり、困ったときの相談相手として一役買っているのである。
「おや、どうしたんだい?何かあったのかい?」
しまった。涙のせいで彼女を困らせてしまった。けど今のままじゃどうしようもないし、ここはひとつ彼女の英知を借り受けよう。
「ねぇー、マーサ。ちょっと相談があるんだけど?」
彼女にさっきまでの事を大まかに話した。彼女は一言一句を聞き逃さないように私の話に真摯に耳を傾けてくれた。彼女は一通り話しを聞き終わると、
「で、あんたはどうしたいのかい?」
不意に尋ねられ、私は戸惑いを隠せなかったけど、今はこの溢れんばかりの衝動を誰かにぶつけたかった。
「私は彼の側にいたい。側で彼を支えていきたい。彼の悲しみを少しでも分け合いたい。だけど彼は私の元を離れてしまった。本当は側にいるべきでは無いのかもしれない。でも如何しても彼の気持ちを聞きたいと思っている。それに私にはギルド長としての立場があるし、ギルドのメンバーは家族同然に大切に思っている。だからこそ後悔しないように必死に考えてもどっちを選べばいいのか分からないんだ。」
自分の気持ちを思い切り吐き出した後、自分がとんでもない事を口走った事実に焦燥を感じると同時にすっと身体が軽くなったように感じた。そんな私をしっかり見据えながらマーサは
「いいかい、後悔しない生き方なんて人間として生きてる以上不可能さ。だからこそ後悔を笑って受け入れられる人生を過ごしなさい。あんたになら出来るさ。それと無理に一つに選ばなくてもいいんじゃないかい。貴方には力も若さもあるんだ。一度きりの人生なんだ、欲張ったってバチは当たらないよ。」
そう告げるとそっと私の肩を叩いて部屋を出ていった。私は再び閑散となった部屋の中で暫し思考するとやがて、
「よしっ、決めた! おい、キッド!皆を集めろ。至急会議をするぞ。」
今はまだあいつには会わない。あの未知の生物を何とかしないと。だから速攻でこの問題を何とかしてすぐに会いに行くから、ちょっとだけ待っててくれ。その時にはきっと君に相応しい女になっているから。




