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オタク勇者の英雄伝ではない何か  作者: ヒビキ
第二章 コリニード編
20/23

荒れるぜぇぇぇぇ、止めてみな!

いろいろあって遅れました。マジですいませんでした。


更新が遅れたのも乾巧って奴の仕業なんだ!

『神器』


俺の前世にあった神の如き力を振るうことが出来る神聖な道具のことである。勇者であった俺ももちろん神器を使っていた。その名も『神剣 ダモクレス』

こいつは剣としての斬れ味も去ることながら、能力として形が無いものを破壊する力がある。つまりこの剣を使えば火や水などの斬れないものをハッピーターンみたいに簡単に粉砕できるんだ。


そんな便利なものを 今迄使わなかったのには理由があってそれはこの剣のデメリットにある。それは能力を使うごとに身体にダメージがかかることだ。それもそんじょそこらのダメージでは無い。まさに身体がバラバラになったような痛みだ。故に再生の魔術を行使して、ようやくまともに使うことが出来る。


そして俺が今使用しているのは理論崩壊(ロンギヌス)。これは一時的に自らの理性を破壊することでダモクレスによる身体の負荷を気にすることなく戦えるようにする技だ。もちろんいい事ばかりでは無く、自らを構成する一部を壊すことはとんでもなく痛いし、怖い。さらに理性を失い、どっかの初号機みたく暴走してしまうから集団戦にはまるで向かない。そして一番の嫌なところはこれが解けたときにその分の痛みが一気に身体に返ってくることだ。これは真面目に死ぬほど痛い。前世でこの痛みを知ったせいか、ウィングの自爆のシーンは見る度に嫌な気分になったことは聞くまでも無いだろう。


だが、ネット社会でぬるま湯に浸かっていた今の俺じゃあ、理性を破壊するでもしないとあの災いのトラウマ攻撃に耐えられる気がしない。全く随分弱くなった。元の世界に戻る為にも何とかして前世の時の勘を取り戻さないと。改めて覚悟を決めると、自らの胸に黄金の大剣を突き刺した。せめて願わくば痛みがなるべく少ないように、あとカグラに被害がいかないように祈りを捧げながら俺の意識は一時的に虚空に消えていった。











ーーーカグラsideーーー



「グガァァァァァァァァァ!」


ナイトの叫びが響き、闘いの火蓋が切られた。黄金の大剣を片手で持ちながら駆け出すナイト。さっきまでの神秘的な光は一転して、何処と無く妖しさを秘めた光となっていた。そんなことを考えている内にナイトは化け物に向かって輝く大剣を振り下ろした。化け物は咄嗟に右腕で庇うもまるで豆腐を斬るかのように軽く斬られていった。だが、斬られたはずの腕はあっという間に再生し、空いたナイトの腹に強烈な蹴りを食らわせた。


「ウォォォォォォ!」


ナイトは暫し地面を転がるが、すぐさま立ち上がると急に天に向かい声を張り上げた。すると黄金の大剣から蒼いオーラが現れて、大剣に纏わり付いた。


「な、何あれ?」


私が使っている魔力やナイトがさっき使っていた魂魄とは違う異質なものに驚きを隠せなかった。


「グァァァ!」


蒼いオーラを纏った大剣を手にナイトは化け物に突撃していった。化け物は一気に距離を詰められたことに動揺した素振りを見せた気がしたが、ナイトががむしゃらに横に凪いだ大剣をしゃがみつつ鋭いパンチを繰り出してきた。然しその一撃を見ずにしゃがんで躱すと、大剣を振り上げ、奴の腕を斬り飛ばした。するとさっきは腕が再生したが、今回はそのまま腕は斬られ、塵となった。


「$°=|〒×=♪$%<+☆¥〆^」


化け物は一気に後ろに跳ぶと、その痛みからなのかおよそ人の言語とは思えない奇声を上げた。そのあまりの大きさに私はその場にうずくまってしまうが今のナイトがそんなことで止まる筈が無く、すかさず化け物に近づくと一気に何回も斬りつけた。そして化け物は再生することもなく消えていった。


「終わった。っ、大丈夫かナイト!」


私は化け物の消滅に安堵するもドラグニュートとしての野生がナイトから何か嫌な予感がしたので慌ててナイトに駆け寄った。


「グァァァァァァァ!」


だが、ナイトはいきなり雄叫びを上げると私に向かって大剣を振り下ろした。


「うわぁ! 何をするんだ、ナイト!」


慌てて横に跳ぶことで何とか避けたものの未だにナイトは私の方を今にも襲いかかってきそうな眼で睨みつけている。


「止めるんだ、ナイト! ナイト!」


続けて攻撃を加えてくるナイトに何度も何度も呼びかけるも全く攻撃の手を休めることは無かった。


「くそっ、ナイト! 仕方ない、こうなったら。」


一先ず後ろに跳んで距離を稼ぐと、私は体内にある魔力を身体から出し、覚悟を決めると改めてナイトの方を見た。


「とりあえず力尽くで静かにさせるけど手加減は出来ないから後悔しないようにな、ナイト!」


まさかこんな形で戦うことになるとは、だけどせっかくの待ち望んでいた本気のバトルだ。不謹慎かもしれんが全力で楽しませてもらうぞ。


「はぁぁぁぁ!」



ーーー ーーー


この世界では人間族が『魂術』を使うのと同じように亜人族やエルフ族、魔族も特別な術を使う。それが『魔法』である。この世界の人間族以外の種族には『魔臓』と呼ばれる魔力を生成する特別な臓器が存在し、それ故魔法を使うことができる。


この世界の魔法は言わば魔力と言う物質を魔法陣を通して別の物質へと変化させ、それを操作する技術のことである。その際変化させられるものは使用者の中にある強烈なイメージを媒介にするため、同じ魔法でもそれがどんな形になるかは人により様々である。


ーーー ーーー


「行くぞっ!『黒焔女神(ブリジッド)』」


私は手のひらから黒い魔法陣を出し、それが私の身体を通ると、私の姿は人と同じくらいの大きさの黒い竜へと姿を変え、体外の魔力が黒い炎となり私の身体に纏った。これが私の魔法『黒焔女神(ブリジッド)』。私の忌々しい過去と亡くなった家族との繋がりが作った憎むべき、そして愛すべき魔法である。


これを使うとまさに人間くらいの大きさの龍の姿になるため、正気じゃ無いとしてもナイトの前では使いたくは無かった。って、あれ?何でナイトに見せたくないんだろう?


ま、まぁ今はそんなことは置いておいてナイトを止めないと。私は黒い炎を剣の形にすると、一気にナイトの元へ近づくと一息に剣を振り下ろした。が、大剣により防がれるとさらに大剣を横薙ぎしてきた。それを黒い炎で剣をもう一本作って防ぐと、そこから激しい剣戟が繰り広げられた。


「はぁぁぁぁぁぁ!」

「グルァァァァァ!」


私は一瞬の隙に空いたナイトの脇腹に蹴りを入れ、距離を取ると再び魔法陣を展開した。


「『黒焔槍(ルーン)!』」


空中に幾つもの黒い槍が現れる。そのどれもがナイトの方へと穂先を向けている。本来なら暴走を止めるために使うには威力が高いが、今のナイトを止めるためにはこれくらいは必要だろう。


「行っけぇぇぇぇぇ!」


荒々しい槍の掃射は寸分狂わずナイトの元へ向かっていく。だが、ナイトは手に持った大剣からさきほどの蒼いオーラが現れると、私の黒焔槍(ルーン)を一つまた一つと砕いていく。気づけば全ての槍はナイトに幾つかのかすり傷をつけるだけで、その役目を終えていた。


「まさかとは思っていたけど、ここまでとはな。だが、まだまだ行くぞ!」


私は再び剣を2本生成すると走り出した。ナイトの剣撃は一撃一撃が身体中に響き、その剣撃の強烈さが直に伝わってくる。だが、それ以上に今までの人生で感じたことがないほどの深い哀しみを感じた。ナイト、君は一体どんな人生を送ってきたのだろうか。私は君について何も知らないんだな。こうなりゃ、全部終わった後でたっぷり問い詰めてやる。





空からは横殴りな雨が降り注いで、私たちの戦場を濡らしていく。大地はぬかるんで足元はふらつき、少しずつ息が乱れ

ていく。だがまだまだナイトは暴走を続けている今、私がここで倒れる訳にはいかない。迫ってきたナイトの大剣を躱すと黒焔女神(ブリジッド)を放つ。お互いに身体はズタボロになっていく。それにしても一体何が私を動かしているのか。まぁ、始めから分かっていたような気がするけど。ナイトを想うだけで暖かいような、それでいて少々恥ずかしいような気持ちになる。全く今頃になってこんな気持ちになるなんて、私もまだまだ乙女だったということかな。そしてそれを自覚するってことは私が思っていた以上に私の身体に力を漲ぎらせた。初めての感覚に驚くも、今は暴走を止めることが最重要課題のため、気にすることをやめた。


「はぁーはぁー。まだまだ。これが私の全身全霊だ!女神の息吹(ブリジッド・ブレス)」


疲労している身体に鞭を打ち、私の最後の一撃を放つことにした。龍種である父と人間の母、2人が私に残してくれた全てを今ここで放つ。私の中の魔力を一点に集中され、瞬く間に収束された黒い炎はナイトに向けて襲いかかった。


ドガァァァァァァン


「これならどうだ。」


私の渾身の一撃は大きな爆音をたてて、炸裂した。辺りは砂煙によってナイトの様子が全く窺えない。だが、あそこまでの威力だ。きっと何とかなったと信じたいな。


「・・・・よぉ。」


砂煙が晴れ、其処には1人の男が佇んでいた。先ほどの荒々しいまでの威圧感はどこへやら、恐ろしいまでの静寂を保っていた。よく見ると暴走の原因とみられる黄金の大剣の姿が見えないからきっと止められたのだろう。ナイトの傷だらけながらも無事な様子に私は胸から溢れんばかりの気持ちを抑えることが出来ず、すぐさまナイトの元へ走ると、人生初の大勝負に打って出た。


「ナイト、こんなこと言うのは初めてだから変かも知れんが私はお前が好きだ!愛してる!」


ついこないだ会った男にいきなり告白なんて随分私はチョロい女なんだなと自虐するも、きっとこの男に惚れたのはドラグニュートの雄の強さを求める本能と、人間の雄の優しさを求める理性によるものなんだろうと直感的に理解していた。だが、返事を聞く前にようやく暴走を止め、自らの想いを告げたことにより安堵した私は襲いかかる睡魔に対抗できず、静かに瞼を閉じた。その刹那、瞳に映ったナイトの悲しげな顔と、彼がそっと呟いた「ごめん。」という言葉の意味を理解するのは私が目覚めた後の事だった。



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