1日フレンズ
すいません。未だに冒険まで少しかかりそうです。もっと文才が欲しい(切実)
「知らない天井だ。」
ふと目を覚まして、うっすらと目に移るのはまるで洗い立てのYシャツみたいに真っ白な天井だった。人生で一度は言ってみたいセリフを言えて上機嫌な俺は改めて今の現状に疑問を抱いた。
「確か、俺は森の中で気絶していた筈なんだけど。」
未だ痛みがひかない身体を気合で何とか上げる。ピリッと痺れみたいなものが背中付近に走るがまだ無視出来るレベルのため、取り敢えず目下最優先事項である現状の把握に努めた。
「どこだ、ここ?…ってあれはまさか!」
部屋を観察してすぐにこの世界に不釣り合いな異物を発見した。
「何で異世界にテ、テレビがあるんだ。それにこれはPL3にVII、こっちには3DL迄あるぞ。一体どうなっているんだこりゃ?」
所狭しと並べられているのは俺が愛してやまないゲーム機達だった。これは正しく運命の邂逅としか表現できない出会いだった。くそっ!今ばかりは俗物っぽい表現しか浮かばない自らの矮小な語彙力を呪うばかりだ。
厨二ごっこはともかくこの出会いにより、広大な砂漠にある清廉なオアシスを見つけたみたいに俺の心の飢え、渇き、衰弱、そういった心の汚泥が流されていくのを感じた。何せもうかれこれ数ヶ月ぶりのゲーム機達だ。嬉しくない訳がない。
只、何故かは分からないが何処か物足りない気がした。今迄こんなこと感じたこと無かったのに。そんな自分の心境の変化に戸惑っていると、閉ざされていた部屋の扉が何者かの手によって開けられた。
「さぁて続きでも、ってあれ? えーと、そのー、あのー、そこの君。突然で済まないが少し聞きたいことがあるんだがいいかな?」
そこにいたのは1人の男だった。くたびれた白衣を身にまとい、さっきまで吹かせていたのか、手にもつタバコからは細い煙が今尚細々と上がっていた。腕には見たことの無い黄金の腕輪をはめていた。見た目30代くらいのその男はこちらを見るとまるで珍生物にでも会ったみたいに心底不思議そうな顔で首を傾げながら暫し熟考し出した。ようやく頭の中の整理がし終わったのか意を決したように真っ直ぐこちらを見ると、
「君さ、何で此処にいるの?」
「そんなもん知るかぁぁぁぁぁぁぁ!」
ボケなのか分かりづらい一言についつい病み上がりの身体で無茶をしてしまった。荒くなる息を深呼吸で何とか整える。序でに昔波紋呼吸法に挑戦して失敗したことについては余談である。そうしていると、おっさんは、あっ!と気の抜けた声を出しながら何かを探しに部屋を後にしてしまった。
「何なんだよ、いったい。」
理解不能なことばかりで頭がまるでイヤホンのコード並みにこんがらかっているが、でもまぁ気にしたら負けかな。そんなことを考えながら部屋の中の漫画を探すために重い腰を上げた。
戻ってきた男の手には何やら怪しげな黒いノートがあった。数年後には黒歴史確定だな、ありゃ。見た目もう月光蝶で埋葬するしかないレベルのノートをペラペラと捲りながら何やらボソボソつぶやき出した。
「なるほど。俺が昨日君を森から此処に連れてきたのか。済まなかったね、いろいろ。取り敢えず俺の名前は林 記男だ。よろしくな。」
「あぁ、よろしく。俺は・・・剣崎 和人だ。」
本来なら今までみたいにナイトを名乗るべきだが、おっさんの名前を聞いた瞬間、嫌な予感がした。勿論考え過ぎだとは思う。でももしかしたら、そんな可能性が無いとは言い切れないのも事実だった。そう異世界召喚の巻き込まれ。凡そ考えられる中で最悪の可能性だ。何せ1人の男の人生を踏み躙ったのだから。
汗が流れる。罪の意識が流させる汗は拭うことを赦してはくれないのか、まったく腕が動かない。息は再びあがり、火照る身体を何とかしようと必死に空気を取り入れる。おっさん、いや、林の心配そうな顔が視界に入る。それを見て漸く決心が固まった。
「なぁ、あんたはこことは違う世界から来たのか?」
「あぁ、みたいだな。ははっ。」
軽っ!幾らなんでも軽すぎるだろ!何なの、サクサクのスナック感覚か!さっきまでのシリアスを返してくれよ!
だが、今の一言には何だか林には自分のことなのにまるで他人事みたいに思っている節があるように思えた。いったいどういうことなんだよ。」
「そりゃそうだ。だって今の俺の頭には元の世界の記憶が殆ど無いからな。」
「そ、そうなのか。すまん。ってあれ?声に出してたか俺?」
「あぁ。途中からな。でもあまり気にすんなよ。今の生活には満足してるし、それに言ったろ、頭の中にはってさ。このノートには俺の失くした記憶についていろいろ書かれているんだ。」
そう言いながら林はドヤ顔をしつつ持っていた黒いノートを見せつけてきた。あまりのウザさにデジソウルがバーストしそうになるが、ぐっと堪えて視線で会話の続きを促した。あと大門さんはマジ俺の中の兄貴だぜ!
ともかく怒りを断腸の思いで堪えつつ話しを聞くと、様々なことが分かった。どうも彼はサラリーマンで職場の屋上から気づかぬうちにこの世界に来ていたらしい。その時の記憶は曖昧で、ノートにすら書かれていなかった。そして今腕につけている黄金の腕輪を手にしてから記憶が少しずつ失くなっているらしい。この腕輪には触れた物質の複製、及び記憶の中にある知識を使った創造の2種類だそうだ。この部屋にあるゲームや漫画たちも腕輪の能力によって作られたそうだ。規格外の能力に、あまりに酷い副作用からまず間違いなく神具だろう。過去の世界でもスタンド使いみたいに神器と契約した者とは惹かれ合うみたいに出会っていた。然し、それは神具にも有効なのか。それともまさか・・・・。
頭によぎった考えを片隅に寄せつつ、これからについて考えると、
「なぁ、何考えているのか知らないけど取り敢えず怪我が治るまでは居ていいからさ、ゲームしないか?」
彼は呆れる程眩しい笑顔でコントローラー片手にゲームに誘ってきた。まったくいろいろ考えなきゃいけないのに、しょうがないなぁ。自分の顔が破顔していくのを感じながら彼の誘いを受けることにした。




