悪魔のギルド
バイトやゲームでさらに遅くなってしまいました。しかも、新作を作ろうとか思っている俺ガイル。これからも亀更新ですが、よろしくお願いします。
ギルドの扉を開けると、直ぐに周りを見渡して、位置関係は把握した。魔力は充分、身体の調子も悪くない、周りからは変なものを見る目で見られているが関係なし!さぁ、こい!さぁ!
・・・・・。
「なぁ、お前なにやっているんだ?」
「これじゃ足りませんか?」
「いや、そういうことじゃなくてな。何で土下座しているんだ?」
そう、俺は今土下座をしていた。それも唯の土下座では無く、EXランクのステータスをフルに使った土下座である。しかし、これでも足りないとは。仕方ない。アレをするか!
俺は新たに決意を固めると、バッと立ち上がり、外に出ようとすると、
「おいおい、ちょっと待てって!」
さっきの男にいきなり肩を掴まれた。まさか、ここでヤルつもりか!いやだ、絶対にいやだ。
「すいません!俺が何して気分を害されたのかわかりませんが掘るのだけは勘弁してください。」
俺の震えながら言った一言に辺りは冷たい視線をおっさんに向ける。その視線はまさに冷凍光線だ。
「ちげーよ!何言っちゃってんの、こいつ!というか、てめーら何て目で見やがる。俺には妻がいんの知ってるだろうが」
「えっ?」
「てめーは何驚いてやがるんだよ!そんな事よりとっとと用件を話しやがれ!」
おっさんの気迫に辺りの奴らは黙り込んだ。俺の震えも止まり、何とか落ち着いたので改めて話そうとした時に突然ギルドの奥の扉が開いた。
「てめーら、どいつもこいつもうるせーんだよ!おい、キッド!こりゃなんの騒ぎだ!」
そこから現れたのは圧倒的なまでの美女だった。肩まで服をまくり上げ、そこから見える健康的な白い腕からは所々黒い鱗が見え、髪はポニーテールと言う男殺しの髪型をして、体型はまさにナイスバディと言わんばかりである。しかも黒い尻尾が見えている。あの感じだとまさかドラゴニュートか!
と、普通の日本人なら小躍りしながら喜ぶ所だが、あの惨劇を知っている者から見るときっと罠に違いない。ギルドに入った時から、俺の頭の中には前世でのトラウマが浮かび上がっていた。
俺が勇者やっていた前世にもギルドがもちろんあり、冒険者という職業があった。そこは世界のために化け物を退治するという格好良さや、大金が稼げる一石二鳥の職業だった。
しかしそうは問屋が卸さず、確かに人の為になり、お金も稼げたが、ギルド内部に大きな問題があった。
前世ではある一つの国が世界全てを統一していて、ギルドも王都に一つあるのみだった。そして各地にそのギルドの支部が点在していた。
ここ迄だったら問題なさそうだが、王都のギルド長が厳し過ぎた。今風に言うなら鬼軍曹だろう。それも唯の鬼ではなく悪鬼羅刹とかの類である。しかもその鬼軍曹から教えを受けた一流の鬼達が各地の支部長になるのだから、さぁ、大変! まさに百鬼夜行と言ったところだ。
さらに上司だけでも厄介極まりないが、同じ冒険者も揃いも揃ってクズばかりだった。新人イジメは当たり前、よく小説にあるように先輩に手を出そうものなら即罰金だ。その酷さたるやブラック企業も真っ青である。
そんなことが多々あり、俺はギルド自体にトラウマがあって、人間不信の原因でもある。本当は入りたくさえないが、緊急事態故にしかたなくだ。あぁ、マジ帰りたい。
そんな不安を抱えていることなどお構いなしにギルド長とキッドさんは何やら言い争っている。
「また、うるさいのが来たな。」ボソッ
「あぁ?何だと!何様のつもりだ、キッド!」
「聞こえちまっていたのか。すまんなギルド長。少々イラついていたんだ。」
「もっと誠意を見せろ、誠意を。そんなんだから娘から距離を取られるんだ。」
「その事と今のは関係ないだろ!そう言うあんたこそ早くいい相手を見つけなくてもいいのか?」
「うるさい!私に釣り合うだけの男がいないだけだ。その内私にも素敵な人が。」
「そういうことを言う奴ほど売れ残るぜ、ギルド長さんよ。」
「だが、焦って結婚したくはないな。どっかの誰かさんの様に娘に嫌われてしまう。」
「「はーはっはっはっは!」」
「「てめえ、ぶっ殺す!」」
今、ここにギルド大崩壊への序章の幕がおりた。
そんな中俺は、
「以上でギルドの説明は終わりですが、何か質問はありますか?」
「いえ、特には。」
「そうですか。まぁ、制度的にはそこまで複雑ではないですから、大丈夫みたいですね。ではこれから頑張ってください。」
「はい!」
ギルドについてそばに居たウサ耳をしている受付嬢から話を聞いていた。どうやらこの世界のギルドは前よりも随分自由で安心した。
聞きたいことも聞け、満足した俺は受付嬢から簡単な採取の依頼を教えてもらい、その場所に向かって歩き出した。周りからは何やら驚きの視線を感じるが、気にしない。俺には何も見えない。大の大人が大真面目にくだらないことで喧嘩しているところなんて見てない。いや、本当だよ。
「おい、てめぇ!このまま逃げるつもりか?絶対に逃がさせねぇぞ!」
俺があの広い大空へとI can flyしようとしていたのにそれを妨害したのはスキンヘッドのガタイのいいおっさんだった。つうか、なんだよ、俺の異世界冒険譚にはおっさんしか出てこないのか。
「おい、何すんだ。離せ!」
少しイラついてつい声を荒げて俺の肩を掴んでいるマッチョなおっさんの手を剥がした。まったく人の仕事を邪魔するなんてきたねぇ野郎だぜ。その後、俺は再び歩き出すも、一向に道を譲らないおっさん。仕方ない。俺の華麗なる交渉術を見せてやるか!
「逃げることの何が悪い! いいか!物事の善悪は状況によって変わっていくんだ。同じ行動でもついこないだ迄善行だったことが次の時には悪行になってたりするんだ。」
「で?」
「つまり俺は悪くねえ!」
「んな訳あるか!」
バッ、バカな。それっぽい事言えば納得する脳筋じゃないのか?いや、まぁそれっぽくもなかったが。
「分かった。ならこうしよう。」
「なんだ。」
「一緒にここからずらかろう。」
奴は俺の提案に満面の笑みをしながらの握手で応えた。俺たちの心は1つになった。たった今会ったばかりだったが、そこにはまるで何十年も共に戦った戦友のような確かな絆が見えた気がした。
合図はなかったが、まるで打ち合わせたように同時に俺たちは走り出した。ただがむしゃらに目の前にある理想郷を目指して。
そして、ギルドの重厚な扉に手をかけた瞬間、何かの熱を感じた。慌てて辺りを見渡すとおっさんの姿が影も形も無かった。
「あ、あれ?」
一瞬の静寂が流れた次の瞬間、背筋に薄ら寒い何かを感じた。背中を貫くような殺気に身を任せ、身体をよじるとさっき迄の場所に紅蓮の一撃がはしった。
「へぇー、やるじゃん。まぁ、話を聞いた限り、あんたが発端らしいな。」
逃げることで精一杯だったから気がつかなかったのか、辺りには沢山の死体みたいのが転がっていた。なるほどお話(物理)か。しかし、さっき迄あんなものなかったのに。
「なるほど、魔法か。」
「へぇー、ただの新入りじゃないみたいだな。」
ヤバイ、ギルド長に目を付けられた。このままじゃ、なんだかんだで厄介事に巻き込まれてしまう。何とかしてこの状況をぶち壊さなければ。俺の自慢の拳でぇぇぇぇ!
「ち、違いますよ。俺はただのひ弱な新入りですよ。なので、俺はこの辺で。」
「なるほど、私の一撃はただのひ弱な新入りに避けられるくらい軽いと言いたい訳か。」
ヤバイ、火に油を注いでしまった。なんか紅いオーラみたいのが出てきたんだけど。くそっ!こうなりゃ、こうだ!
「ほう、やる気充分みたいだな。」
2人の間に一時の静けさが訪れた。しかし、両者がまったく気を許せられないほどの緊迫感があった。
刹那、俺は全身の筋肉を躍動させ駆け出した!
「逃げるんだよ〜!」
意外!それは逃走!みたいなナレーションが流れるかな?とか思いながら、ギルドを後にした。さあて、採取の依頼が終わったら次にギルドに行く時はどうするか考えないと。こうして、俺の異世界初のギルド訪問は大失敗だった。




