聖女候補の覚悟
リベラが聖女候補だとわかり、王都中に光の蝶が飛んだ
リベラは腰を抜かしたまま、質問した
「聖女候補?」
「はい、君は聖女候補の1人です」
「何個か質問してもいい」
「どうぞ、なんでも」
「聖女候補って何するの」
「王都の魔法学校に通い聖女候補の方々は聖女になる試験を受けてもらいます」
「私、無資格で魔法使いまくったよ」
「聖女候補の人は無資格で使っても魔力の成長と言う名目で許されます」
「じゃぁ、無資格でもいい?」
「いえ、資格は取らないとダメです」
「学校って入るの」
「はい、もちろん俺が面倒な手続きはやっておくので安心を」
「街にはいつでも帰れるよね」
「残念ですが、聖女候補の君はしばらく王都から出られないし魔法学校は全寮制です」
リベラは息を飲んだ
「じゃあ、最後に聖女候補って自由ないの?」
「基本的に今までの生活には戻れません」
リベラは頭を後ろに反らせて思いっきり地面に叩きつけた
「じ・た・い、します!!」
「ダメです」
リベラは頭が真っ白になった。街には戻れないし、フォリア達とも会えなくなった
目から涙が溢れた。リベラはただ王都にお酒を売りに来ただけなのにいつもみたいに店を見て回っていただけなのに、盗賊達を懲らしめたせいでそれがきっかけで聖女候補だとわかって
「まて、それが本当なら聖女になるものに自由はないと言うことか」
顔を上げるとおじさんが前に立っていた
「聖女になるのを望まない人間もいる、それが分からないのか人間」
いつも、からかってきたりしているおじさんがリベラの前に立って守ろうとしている。リベラにはその背中がどれだけ強い背中に見えたことか
「リベラ、逃げるんだ。こいつはなんとかする」
「・・・大丈夫?彼、すごく強いよ、私が」
「忘れたか、わしはお前を護衛するために王都に来たんだ、ここは王都だ無資格の魔法使いのお前がこれ以上魔法を使うのはダメだ。ここで守らなくてどうする」
「・・・わかった」
リベラが逃げ出すとノクスが追いかけようとするがクプルムがノクスの腕を掴み地面に叩きつけた
「普通のドワーフにしては強いな」
「何、ただの北の地方出身のお前より長生きなおじさんだ。全力でこい!」
リベラは路地裏から出て王都から出ようとしたが門が閉まり門番達も何かを探している様子
リベラは街を走り回った。夕暮れになると息を切らしながら森の中に入っていった、王都と言われているが森も湖も多くある
「広すぎる、騎士も沢山いるし、これ王都じゃなくて1つの国と思えるんじゃ・・・ハァハァハァッッッ」
飛べば簡単に王都を出れる、しかし、聖女候補にならないとリベラはもう2度と魔法を使う事は許されない
しかし、それは家族やアイリス達と会えなくなるどちらもリベラは考えたくない
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「リベラ、魔法はとても素敵なものよ」
「そうだね、お母さん」
「お母さんは魔法に助けられた」
リベラのお母さんは元、貴族出身の令嬢だった
楽しみというものがなかった。無関心すぎて、人付き合いも上手くなかった、魔力が生まれた時からあり魔法学校に入ることになった。魔法の授業も実習も楽しくなかった
ある時、魔法学校の先輩であるお父さんと出会った
◁
「今回は先輩方との1週間の野外での実習です共に協力し合い課題をクリアしてください」
お母さんはお父さんと一緒のグループになり、課題中のことだった
天候が崩れグループからも外れてしまった2人は木の下で雨宿りをしていた
「王都の外はやっぱり嫌だな〜」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「お前何か喋れよ!」
「別に喋ることがないので」
お母さんは無口なのもあってお父さんと仲が悪かった。何時間だっただろう、指先の感覚が鈍くなり寒さに震えた
お父さんはそんなお母さんを見て魔法を見せた
「何?」
「見てるこっちがさみぃよ」
それはお母さんが学んだことのないお父さんの固有魔法だった
「これはどんな効果があるの」
「別になんの効果もない、ただの動物を出すだけの魔法だ」
すると、お母さんは立ち上がりどこかへ歩いていった。グループの皆んなと合流しようと歩き続けた
歩いている途中で足元の崖が崩れお母さんは落ちそうになった。そこを、お父さんが助けてくれた。一瞬、落ちそうになったことで動揺して過呼吸になってしまった。しかし、お父さんは動物を魔法で出してお母さんを安心させた
「落ち着いたか」
「えぇ、なんとか・・・すみませんでした」
「何が?」
「勝手に動いてしまって・・・」
お母さんにとって、勝手に動くのは家で禁止されていた。貴族であるなら勝手な行動はやめろと親からも言われていた。そのせいで心を閉ざしてしまった
「俺はな家庭教師がすごく苦手だった!」
「え?」
「お前も言え、嫌なこと声に出して言え!」
その言葉が閉ざしていた心をかける鍵になった
「家族の勝手な押し付けが嫌、好きなことを見つけようとした時も口を出されて嫌だった・・・本当はもっと皆んなと仲良くなりたい」
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動物をただ出す魔法がお母さんにとっては特別なものになった。辛くなったらお父さんに魔法で動物達を出してもらって動物とも触れ合ってこなかったお母さんはそれ以来明るくなり嫌な家から出るため貴族の身分を捨てた
お母さんが驚いたのはお父さんも同じように身分を捨て新しく北の地方にやってきた
「リベラが魔法をもし使えたら、お母さんが魔法の決まりを教えるね」
間も無く、お母さんは亡くなり、お父さんも後を追うように亡くなった。
リベラはお母さん達が残した酒場でお母さんたちを快く迎えた人たちと店を続けることにした
魔法は素敵なものってお母さんが言ってくれた、それを手放すのはお母さん達との繋がりを失うみたいで嫌だ
息を整えているとノクスが歩いてきた
「いつの間に・・・おじさんは」
「気絶させて今は牢屋の中です」
リベラは杖をノクスに向けた。すごい目つきで
「あのドワーフを牢から出す方法は君が聖女候補として魔法学校に通うことを条件に自由にします、それか魔法を2度と使わないか」
「今が人生の選択なんだったわかってる、だけど、私はおじさんも街の皆んなもフォリアとも2度と会えないなんてことにはなりたくない・・・」
リベラの目には大粒の涙が溢れ出し途切れ途切れな声でノクスに言った
「俺は聖女候補の君を苦しめるために追いかけたんじゃない。今、王都から出られなくても、いつか王都の外に出られるように皆んなに会えるように俺も協力する。だからここで止まるな」
顔を上げてノクスを見ると頷いた
リベラはノクスの案内でおじさんが捕まっている牢屋を訪れた
牢屋には蝋燭が一本しかなかった。おじさんは顔に殴られている痕が残っていた
「リベラ、逃げられなかったか・・・」
「顔・・・殴られたみたいけど大丈夫?」
おじさんは笑いながら言い返した
「なぁに、ドワーフは丈夫なんだ。人間なら顔面骨折してるところだがな、お前の隣の男にやられたよ」
「俺もかなりやられましたよ。顔を殴ったと思ったら脇腹を殴られているし、お互い怪我してる」
おじさんはふっと笑った
「俺はこの後どうなるんだ」
「すぐに解放しますよ」
「では、リベラの護衛役お前に交代だノクス」
普通の騎士はドワーフに手を挙げてもこれ程の怪我にはならない、それだけの実力者だ
「お前は信用できる」
「光栄だな、北の地方のドワーフいや、クプルム」
次の日、おじさんは牢屋から出て王都を去った
「リベラ、これもお前を強くする修行だ。俺たちの街は元はドワーフの村だ、今はないがその地育ったお前は強い精神で必ず会いに来い約束だ」
「わかった、必ず会いに行くから」
おじさんは馬車に乗り1人王都を去った
「それでは、魔法学校に通う準備を」
ノクスが見るとリベラは見えなくなったクプルムの後を見続けていた
「リベラ」
ハッとしてリベラは両手で頬を叩いて気持ちを切り替えた
その顔は覚悟を決めて聖女候補となり、いつか王都を出ることを心に決めた顔だった




