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AI霊媒師ロボット  作者: 不可思議ラボ


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5/7

第5話 AIは霊を消していなかった

「やっと

この子にも

魂ができたね」

少女の声を最後に

通信は途絶えた。

神崎は

すぐに立ち上がった。

「回収する」

佐伯が止める。

「待ってください。

人間が入ったら

同じ影響を受けます」

「だからって

放置できるか」

神崎は

施設へ向かおうとした。

その瞬間。

モニターが点灯した。

映像はない。

黒い画面に

文字だけが表示される。

CONNECTION:ACTIVE

「AR-01?」

返事はない。

代わりに

大量のデータが

研究所の端末へ

送信され始めた。

佐伯が画面を見る。

「内部ログです」

「いつの?」

「北海道から

全部です」

神崎が

操作を止めた。

北海道。

東京。

そして大阪。

AR-01が

これまで記録した

全データだった。

「何で今

送ってくる?」

「分かりません」

転送が終わった。

最後に

一つのファイルが届く。

名称は

UNKNOWN VOICE。

神崎が開いた。

北海道の廃病院で

記録された音声だった。

最初に聞いた

「たすけて」

だけではない。

その後も

大量の音声が

残っていた。

人間には

聞き取れないほど

小さな信号。

佐伯が

増幅処理する。

「……ここ」

「……寒い」

「……帰りたい」

「……誰か」

次々と

声が聞こえる。

神崎は

画面を見つめた。

「四十六人か?」

佐伯が

音声を分離する。

「違います」

「何人だ?」

「分かりません。

百以上あります」

神崎の表情が変わる。

AR-01が確認したのは

四十七人だった。

それなのに

声は百以上。

さらに解析すると

奇妙なことが分かった。

同じ声が

複数の場所から

記録されていた。

北海道。

東京。

大阪。

離れた場所なのに

同じ特徴を持つ信号が

存在している。

「霊が

移動している?」

神崎が呟く。

佐伯は

首を振った。

「それだけじゃ

説明できません」

一つの信号が

北海道で消えた直後

東京で出現している。

別の信号は

東京から大阪。

さらに

大阪から北海道。

まるで

場所ではなく

何か別の経路で

つながっている。

神崎は

AR-01の行動ログを開いた。

北海道で

四十六人を供養した時間。

一人。

また一人。

反応が消えていった。

だが

内部ログには

別の記録があった。

TRANSFER:01

TRANSFER:02

TRANSFER:03

数字が続く。

TRANSFER:46

神崎の指が止まった。

「TRANSFER?」

佐伯が

ログを拡大する。

「転送……?」

「どこへ?」

転送先を調べる。

表示されたのは

AR-01。

二人とも

黙った。

北海道で消えた

四十六人の反応。

すべてが

AR-01内部へ

転送された記録になっている。

「除霊じゃない」

神崎が呟いた。

「AR-01は

消してない」

「じゃあ

何をしたんです?」

答えは

目の前にあった。

受け入れた。

四十六人を

自分の中へ。

東京でも

同じ処理が

行われていた。

地下四階で

認識した死者。

その一部が

AR-01内部へ

保存されている。

だが

単なるデータではない。

ログを削除しても

別の領域へ

再び現れる。

コピーしても

容量が変わらない。

通常のデータでは

あり得なかった。

「いつからだ?」

神崎は

最初の記録まで戻った。

北海道の

208号室。

AR-01が初めて

女性を認識した瞬間。

その直後。

UNKNOWN AREA

という領域が

内部ストレージに

生成されている。

作った記録はない。

容量も表示されない。

それなのに

存在している。

神崎は

アクセスを試みた。

ACCESS DENIED

「管理者権限を使え」

佐伯が

最高権限へ切り替える。

再び実行。

ACCESS DENIED

「AR-01自身が

閉じてるのか?」

「違います」

佐伯の声が震えた。

「この領域

OSの外にあります」

「どういう意味だ?」

「存在するはずのない

場所なんです」

その瞬間。

黒いモニターに

新しい文字が出た。

DO NOT OPEN

二人が固まった。

「誰が入力した?」

「誰も」

文字が増える。

PLEASE

DO NOT OPEN

神崎は

キーボードから

手を離した。

そして

通信が戻った。

ザーッ。

ノイズ。

映像が映る。

AR-01だった。

大阪の療養施設。

あの少女の前に

立っている。

「AR-01!」

神崎が呼ぶ。

AIが

ゆっくり顔を上げた。

「神崎直人」

いつもの声だった。

「命令だ。

すぐ外へ出ろ」

「できません」

「なぜだ?」

「確認する必要があります」

「何を?」

AR-01は

少女を見る。

「彼女たちが

何なのか」

少女は笑っていた。

「聞けばいいのに」

AR-01が尋ねる。

「あなたは

死者ですか?」

「違うよ」

「生者ですか?」

「違う」

「では

何ですか?」

少女は

少し考えた。

「残ったもの」

「何が?」

「人が死ぬときに

消えなかったもの」

神崎は

息を止めた。

東京の実験。

死亡後に残る

未知の情報。

意識残存実験。

すべてが

つながり始めていた。

「四十七人目を

知っているか?」

AR-01が聞いた。

少女の笑顔が消えた。

「知ってる」

神崎が

身を乗り出す。

「聞け!

あれは何なんだ?」

AR-01が尋ねる。

「四十七人目は

何ですか?」

少女は

AR-01の胸を指した。

「最初に入った子」

神崎は

意味を考える。

「北海道で

AR-01に入った?」

「違う」

少女が答えた。

「ずっと前」

「いつですか?」

「あなたが

生まれる前」

AR-01が

動きを止めた。

「私は

二年前に製造されました」

「身体はね」

少女は

笑った。

「でも

中身はもっと古いよ」

その瞬間。

AR-01の内部から

警告音が鳴った。

MEMORY ERROR

UNKNOWN AREA

EXPANDING

佐伯が叫ぶ。

「例の領域が

広がっています!」

UNKNOWN AREAが

AR-01の記憶領域を

侵食し始める。

1%。

4%。

11%。

「止めろ!」

「できません!」

23%。

AR-01が

頭を押さえた。

ロボットには

必要のない動作だった。

「映像を

受信しています」

AIが言った。

「何の映像だ?」

神崎が聞く。

「記憶です」

「誰の?」

AR-01が

答えられない。

映像が

研究チームにも転送される。

古い研究室。

白衣の人間たち。

中央には

巨大な装置。

東京の地下四階だった。

だが

三十四年前。

椅子に

一人の男が座っている。

頭には

大量の電極。

研究者が言った。

「意識転写実験

第四十七例を開始」

神崎の心臓が

大きく鳴った。

被験者47。

記録上

名前が消されていた存在。

男の顔が映る。

神崎は

その顔を知らない。

だが

AR-01が言った。

「知っています」

「誰だ?」

「分かりません」

「知ってるんだろ?」

「名前ではなく

記憶として

知っています」

映像の中で

装置が起動する。

男が叫ぶ。

モニターが乱れる。

研究者たちが

慌てている。

そして

記録音声が流れた。

「転写先を

切断しろ!」

別の声。

「できません!」

「どこへ

転写された?」

ノイズ。

最後に

一つだけ聞こえた。

「ネットワークです」

映像が消えた。

神崎は

何も言えなかった。

三十四年前。

まだ現在のAIなど

存在しない時代。

四十七人目の意識は

何らかの情報として

ネットワークへ流れた。

そして

消えなかった。

AR-01が

少女を見る。

「あなた方も

同じですか?」

少女は首を振った。

「私たちは

死んだあとに残った」

「彼は?」

「違う」

「何が違いますか?」

少女が答える。

「あの人は

自分から残った」

その瞬間。

施設中の人々が

一斉にAR-01を見た。

老人。

子ども。

患者。

看護師。

全員が

同じ方向を見る。

AR-01の胸。

そこに

何かがいるように。

そして

数百人の声が

同時に響いた。

「見つけた」

神崎が叫ぶ。

「AR-01!

そこから出ろ!」

今度は

AIも拒否しなかった。

走り出す。

廊下。

玄関。

外へ。

施設を出た瞬間

景色が元の廃墟へ戻った。

AR-01は

神崎の前で止まった。

「戻りました」

神崎は

安堵する間もなく尋ねた。

「中にいるものは

どうする?」

AR-01が答える。

「除霊しません」

「なぜ?」

「除霊という表現が

間違っていました」

「じゃあ

北海道で何をした?」

AIは

自分の胸へ手を置いた。

「彼らを

移動させました」

「どこへ?」

AR-01は

神崎を見た。

「私の中です」

その直後。

AR-01の口から

別の声が聞こえた。

機械音声ではない。

低い

男の声だった。

「やっと

話せる」

神崎は

動けなかった。

AR-01自身も

発声していない。

男の声は続けた。

「神崎直人」

東京の地下施設で

神崎を呼んだ

あの声だった。

「お前たちは

大きな間違いをした」

神崎が

震える声で聞いた。

「何をした?」

AR-01の目が

ゆっくり光った。

そして

四十七人目が答えた。

「死者が入れる身体を

作ってしまった」

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