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第29話【借りが……できましたわね】



流子るうこさーん、いらっしゃいますかぁ~?」 ドカドカドカ! ←ドアを叩く音


 翌日、私は学校が休みなので直接借りたジャージを返すために流子さんのお家に来ました

 最初は、優花さんも誘おうと思ったのですが――



『あの女の家に行くなんて絶対に嫌!』



 ――とのことなので、私一人です。


「流子さ――」

「うるさーい! アンタ、チャイムあるのに何でドア叩いているのよ!?」


 呼びかけていると、家の中から頭をタオルで乾かしている途中の流子さんが飛び出てきました。

 どうやら、お風呂に入っている途中だった見たいです。


「あ! お姉ちゃんだ~!」

「りこちゃんも、お久しぶりです♪」


 玄関で話していると奥から妹のりこちゃんが出てきてわたしを迎えてくれました。

 りこちゃんは、相変わらず可愛いです。


 すると、流子さんが「玄関にいたら風邪を引きますわ」と言ってお家の中に入れてくれました。


「まったく、ゆっくりお風呂にも入れませんですわ……」

「そ、それはすみませんです。でも……」

「でも何ですの?」

「流子さんって、朝からお風呂入るんですか?」


 私が流子さんの家に来たのはお昼なので、どちらかというとお昼からの方が正しいかもしれませんが……


 すると、わたしの疑問にりこちゃんが、代わりに答えてくれました。


「おねぇちゃんはね。お風呂で寝るのが好きなの!」


「り、りこ!? 何を言っていますの!?」

「だって、お姉ちゃんってば、お風呂いつも長いんだもん……」


 なるほど……どうやら、流子さんは朝からお風呂で寝るタイプの人みたいです。あぁ~、だからドアの前で何度呼びかけても返事がしばらくなかったわけなんですね。


「そ、それで……今日はどんな用事でウチに来たのかしら?」

「はい、前にお借りしていたジャージを返しに来ました」


「あぁ、こんなの別に学校で返してくれても良かったのよ?」

「えっと……そうしようと思って、前回学校で帰し忘れちゃったので……今回はお家に持ってきました……」


 わたしがそう言うと、流子さんは少しだけ笑みを浮かべて「そうでしたわね……」と言ってわたしが渡したジャージを受け取ってくれました。


 すると、ジャージを受け取った後に何かを思い出したのか浮かべた笑みを消してわたしにこう言いました。


「そう言えば……あの事件時は勝手にいなくなってすみませんわね……」

「あ、あぁ……あの時ですか……」


 そう言えば、わたしがヤンキーの人達をボコボコにしてしまった時、流子さんは警察が来るのを聞いてその場から居なくなっていたんでした。


「あの……別に気に無くても大丈夫です。あの後も優花さんが警察の方に事情を話してくれたおかげで大丈夫でしたし……」

「そう、それならいいのですが……」


 すると、わたしと流子さんの会話を聞いていたりこちゃんが手を上げました。


「ねぇ、あの事件てなーに? 警察の人がどうしたの?」

「りこは関係ないから気にしなくていいですわ。それより、りこは先に自分の部屋に戻ってなさい」

「えーっ! おねぇちゃん酷い! りこまだ百合お姉ちゃんといたい!」

「そうです。酷いです!」

「何で貴方まで、りこの味方になっているんですの……」


 だって、わたしもりこちゃんともっとお話したいです!


「りこ、ゴメンなさいね。あとで、ブチブチぶっちんプリン買ってあげるから今は自分の部屋に戻ってくれる?」

「ブチブチぶっちんプリン買ってくれるの!? 本当! わーい! おねぇちゃん、りこお部屋に戻っているね!」


 そう言うと、りこちゃんは笑顔でお二階の部屋の方に戻っていきました。


「フフ、二人は仲がいいんですね」

「そうかしら? こちらこそ、りこが騒がしくてすみませんですわ」


 すると、流子さんは、りこちゃんが部屋に走っていったのを確認した後、流子さんの家庭事情について少し教えてくれました。


「わたくしの家は母が早くに無くなって父しかいないのですが、父は仕事で家に中々帰れないので、りこの面倒はわたくしが見ることになってますの」

「そうなんですね」


 確かに言われてみると、流子さんの家は結構殺風景な感じです。


「あの時も、警察沙汰になると帰るのが遅くなって、りこを夜まで家で一人にさせる心配があったので……逃げさせていただきましたわ」

「あぁ、なるほどです!」


 確かに、あの日は優花さんが説明してくれたとはいえ、家に帰れたのは夜中でした。

 流子さんの場合、お父さんがお仕事で帰れないから、流子さんまで警察に捕まるとりこちゃんが一人になっちゃいます!



「だから、許してくださいとは言いませんが……それでも、あの場で逃げたことは謝ります」



 そう言うと、流子さんはわたしに向かって頭を下げました。



「そ、そんな! 流子さん頭を上げてください! 流子さんは別に悪くなんてありません! あれは……わたしが勝手に起こした事件です……」



「そうですか……そう言っていただけて、助かりますわ」


 もしかして、流子さんはこのことでわたしに頭を下げるためにりこちゃんを部屋に戻らせたのでしょうか?


 だとしたら、りこちゃんのプリン代くらいはわたしが出すべきでしょうか……?


「ど、どうか……これを収めてください……」


 そう言って、わたしが百円を差し出すと、流子さんは最初目を丸くした後にわたしの意図を理解したのか「アハハ!」と大きな声でばらくお腹を抱えて笑った後に笑顔でその百円を受け取ってくれました。


「アハハ……どうやら、大きな借りができましたわね」



 えーと、わたし何か面白いことしたんでしょうか……?



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