第22話【約束したのに……】
「まったく! 百合ってば何処に行ったのよ!」
たまには一緒に帰ってあげようと思っていたのに、教室からすぐにいなくなっているんだもの!
一応、後になってスマホを見たらメッセージは来ていたけど……
『流子さんにジャージ返してきます』
こんな連絡受け取って、こっちはどうすればいいのよ!?
何? 青井の所いくから私には一人で帰れって意味なの!? 本当にムカつくわ……。
すると、廊下の向かい側から今一番見たくない奴の顏が現れて、私は顔をゆがめた。
「あ! 青井流子」
「……なんだ。黒川優花じゃない」
こんなタイミングで会うなんて嫌な偶然ね。
でも、ちょうどいいわ!
「アンタ、百合が何処行ったか知らない?」
「はぁ? 百合って……アイツね。生憎、その方ならわたくしは知りませんわ」
「嘘よ! だって、百合はアンタに会いに行くって言って消えたんだから!」
「そんなの言われても知りませんですわ……」
その時、廊下の窓から校庭を見渡していた男子二人の会話が私達の耳に入った。
「校門の前にいた他校のヤンキー達なんだったの?」
「なんか、噂の『裏番長』って奴を探していたらしいよ」
「でも、すぐにウチの制服を着た女の子を連れていなくなったし、あれが噂の裏番長か?」
「知らないけど、そうだったんじゃね?」
噂の裏番長って……青井のことよね?
同じ話を聞いていたのか私と青井の目が自然と合った。
「ちょっと、どうなっているのよ」
「知らないですわよ。わたくしだって、アイツらがいなくなるのを待っていたんですから……それに、勘違いしない限り間違って連れていかれるなんてことありますの?」
「そう言えば、百合がアンタに借りていたジャージを返しに行くって……」
「そう言えば、わたくしのジャージまだ返してもらってないですわね……」
なんか嫌な予感がして、再び青井と目が合って息をのんだ。
「ねぇ、ジャージってアンタの苗字が書かれているわよね?」
「噂では『裏番長』は女で青井と名前がバレてますわね……」
「「……もしかして?」」
こんな厄介ごとに巻き込まれそうな人物が他に思い当たるだろうか?
青井も私と同じ予想が付いたようで、ほぼ同時に駆け出した。
「「……あの、おバカ!?」」
青井と一緒に学校を飛び出して「場所なら心当たりがありますわ」という青井の言葉を信じて、私は青井の後を追い走り続けた。
すると、後ろから私が付いて来るのを確認して、青井が私に話しかけて来た。
「貴方……桜井百合とは、どういう関係ですの……?」
「はぁ? 何でアンタにそんなこと聞かれなきゃいけないのよ!」
「失礼。でも、そこまで必死になっているのを見ると気になりますわよ」
「うっ! そんなの……ただの友達よ」
「そうですか……ただの友達の割には、必死過ぎるきがしますけどね」
「アンタ……誰のせいだと思っているのよ!」
イラっと来て私が強めの口調でそう言うと、青井が同じように強めの口調で言い返してきた。
「はぁ? わたくしの所為だと言いたいんですの?」
「そうよ! アンタが余計な喧嘩なんかするからこうなっているんでしょう!」
じゃなきゃ、百合が……私との約束を破るなんてすると思えないもの!
『分かったら『今後危ない真似はしない』って約束しなさい』
約束したのに……あのバカ!
「そうですわね。わたくしの所為かもですわね……」
「…………」
……なによ。青井の奴、少しは反論しなさいよ。
すると、見慣れた河川敷に来た辺りで青井が川沿いの方に向かって下り始めた。
「こっちですわ!」
「本当に、こっちにいるんでしょうね!」
「座高の連中はあそこがたまり場なんですの!」
そう言われて案内された場所は河川敷と河川敷を繋ぐ大きな橋の下に陰で隠れるよううな場所で……
ここは、最初に私と百合が青井の喧嘩を見ていた場所じゃない?
「百合!」
「優……花さん……」
そして、その場所に行くと、確かに百合の姿はそこにあった。
だけど――
「ご、ごめんなさい……わたしってば、わたし……」
――百合は、両目に涙を浮かべ泣きじゃくっていた。
そして、その足元には倒れる二人の男と――
「け、ケンカ売って……す、すいませんした……」
百合にアイアンクローをされて、片手で頭を持ち上げられ、顏をボコボコに腫らしたモヒカン男がいた。
「「どういう状況ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」」




