第20話【お母さんは、嫌……】
お風呂から上がった後、優花さんのお部屋にお邪魔したわたしは、濡れた髪を乾かしている優花さんを見て何だか不思議な気持ちになりました。
「な、なんだか……こういうの……き、緊張しますね?」
一緒にお風呂入っていた人が隣で髪を乾かしていて、これから一緒にベッドで寝ると考えると、別にわたしは百合ではないのですが、こう……ドキドキしちゃいます。
すると、そんなわたしを見て、優花さんが目を細めました。
「やめてよ。気持ち悪い……」
はうぅ……。でも、誘ったのは優花さんじゃないですかぁ~。
そう思いながらも、口に出すとまた怒られそうなので、大人しく優花さんを見ていると、優花さんが口を開きました。
「私のお母さんあまり家に帰ってこないって話したでしょう?」
「はい……」
「お母さんね。KADOYAMAの編集長だったの」
「KADOYAMAって、あのカドヤマですか!?」
カドヤマって言ったら、出版、アニメ、ゲーム事業など、日本でもトップのエンターメイト企業じゃないですか!?
そこの編集長を優花さんのお母さんが!?
「それは……帰りが遅くなりそうなお仕事ですね……」
「でしょう? でも、小さい時はママの帰りが遅いのは家族が大事だから遅くまで頑張っているんだって、パパが言ってくれたわ……」
あ、今……優花さん『ママ』『パパ』って言いました……多分、小さい頃はお母さん達のことをそう呼んでいたんですね。
「でも、それは結果的に嘘だったわ」
「嘘だったって……」
「ママは勝手に仕事を辞めて、パパに離婚届だけを残して家を出て行ったのよ」
「そんな!? り、理由は……」
わたしがそう聞くと、優花さんは髪を乾かし終わったのか、ベッドに腰を掛けて、続きを話してくれました。
「理由は後から分かったわ。ママは独立して、自分で会社を立ち上げるのが夢だったのよ。パパもそれを応援して、ママを支えるために仕事を辞めて家庭に入ったのに……ママは他の企業からの引き抜きを受けて会社を辞めた。
パパと一緒に貯めて来た貯金を全て引き下ろしてね。
退職金も離婚を理由にママが独り占めした。そして、ママは引き抜いて来た企業と一緒に新しい会社を立ち上げたのよ」
「そんなの……あんまりです」
「分かった? ママは私とパパを捨てたの。自分の夢を叶えるためにね」
「優花さんは……」
「……何?」
「お母さんのこと……恨んでいるんですか?」
わたしがそう聞くと、優花さんは少し考えた後、ベッドの上に倒れながら思い出すようにこうつぶやきました。
「昔、ママと一つだけ約束したことがあったわ」
『ママ、わたしのことすき……?』
『ええ、大好きよ。だから、一人でもお留守番できるわよね? 約束よ……』
『うん! ママと約束する!』
「……結局、私はその約束を守って欲しかっただけなのよ」
「優花さん……」
すると、優花さんはベッドの上で横になり、隣にわたしが入れる分のスペースを開けてこう言いました。
「だから、百合は……私のこと裏切らないでね」
「だ、大丈夫です!」
そう言って、わたしは優花さんのベッドの空いたスペースに入り、優花さんと向き合うように横になって自分の気持ちを優花さんにぶつけました。
「わたし達は家族ですから……わ、わたしは絶対に優花さんを裏切りません!」
「百合……」
そうだ! 良いことを思いつきました!
「じゃあ、今日はわたしが優花さんのママになりますね♪」
「……何を言っているの?」
ポカーンとする優花さんに、わたしは向き合ったまま優しくこう言いました。
「優花さん、ママですよ~♪ なので、わたしの胸の中に飛び込んでください♪」
すると、優花さんがわたしから目を逸らして枕に顔を埋めました。
「お母さんは嫌……それやめて……」
「す、すみません……」
どうやら、少し調子に乗ってしまったかもしれません……。
すると、黙ったわたしを見て、優花さんが顔を枕から上げました。
「だ、だから……」
そう言うと、優花さんはベッドの中で、わたしの胸元に顔を埋めてきて、上目遣いでこう言いました。
「お、お義姉ちゃん……がいい……」
「……はい♪」
なんか、少しだけ……優花さんが年下の妹に見えました♪
今日はよく眠れそうです!




