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第19話【お義姉ちゃん……しよ】



 ……ぽちゃん、と水滴が湯船の中に落ちる音が浴室に響きました。



「私ね……小さい頃から、お母さんが家にあまり帰ってこない生活を送っていたの……」

「そう……なんですね……」


 優花さんからの平手をくらった後、優花さんはわたしと向かい合うように体を手で隠しながら湯船の中に入り直し、そう語り始めました。


「多分、寂しかったのかもしれない……お母さんが帰って来なくて……」


 優花さんが言っているお母さんは、わたしのお母さんではなく、優花さんのご両親が離婚する前のお母さんだということは分かっています。


 だけど、それが分かっていても……優花さんの中で『お母さん』という存在はまだそっちのお母さんなんですね。


 でも……


「わたしも同じかもしれません。寂しいんです」

「そうね。百合なら分かってくれるって、思っていた……」


 優花さんはそう言うと「だからね……」と付け加えてこう言いました。


「百合が帰って来なくて、寂しかったのよ」

「優花さん……」


 今なら、わたしの帰りが遅くなった時、優花さんが何であんなに怒っていたのか分かったような気がします。

 優花さんは……帰りが遅くなったわたしを見て、お母さんのことを思い出してしまったんですね。


「……お湯が冷めちゃったわね」


 確かに、優花さんの言う通り温かったお風呂も長く話していた所為かぬるく感じるようになっていました。


「ねぇ、百合。一つお願いがあるんだけど……いい?」

「はい、何でしょうか?」


 すると、優花さんはお湯に顔を半分つかり手で口元を隠しながらつぶやきました。


「今日は……一緒に寝ない?」

「はぇぶっ!? い、良いんでしゅかぁ!?」


 思わぬお誘いに、わたしが噴き出しながら両手で熱くなる顔を隠し、思わずお風呂から立ち上がると、それを見て優花さんが顔を逸らしました。


「やっぱ止めた……」

「何でですかぁぁぁあああああああああああああああ!!」


 今! 一緒に! 寝るって! 言ったじゃないですかぁあああああああああああああああああああああ!


「だって、アンタ今鼻血出しているでしょ……」

「だだ、出していません! ほら、見てください!」


 身の潔白を証明するために、顔を覆い隠していた両手を開いて、わたしが鼻血を出していないことを祈りながら優花さんに顔を見せると、優花さん「大丈夫なようね……」と安どの声を漏らしました。


 はふぅ、どうやら鼻血は出てないみたいです。


「じゃあ、約束してくれる? もう『遅く帰らない』って……そしたら、一緒に寝てあげるわ」

「は、はい! ぜぜ、絶対、約束します!」

「はぁ、しかたないなぁ……」



 そう言うと、優花さんはお風呂から立ち上がり、わたしに手を差し伸べてこう言いました。



「一緒に寝よ……お義姉ちゃん♪」




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