第18話【アンタ……好きなの?】
……ぽちゃん、と水滴が湯船の中に落ちる音が浴室に響きました。
「い、いいわね!? こっちを振り向いたり、胸を触ったら、ぶっ飛ばすから!」
「は、はい! 大丈夫です!」
ということで、お風呂で体を洗い終わったあと、わたしは優花さんと背を向け合う形で湯船の中に一緒に入りました。
「さっきは……その勘違いして悪かったわね」
「いいえ、わたしも説明不足でした……」
どうやら、優花さんはわたしが流子さんとお風呂に入ってきたと誤解していたようです。
だけど、それで優花さんの機嫌が悪くなっていたと思うと……何だか笑ってしまいます。
でも、さっき笑ったら優花さんがアイアンクローをして来たのでこれ以上は笑えません。
うぅ……優花さんってば乱暴です。
でも――
「わたし、優花さんのこと……好きです」
「それって……百合的な意味?」
「違います! わたしは決して百合ではないので、そそそ、そういう意味じゃないです!」
「百合じゃないって、前科があるくせに何を言っているのよ……」
……はて? 前科とは何のことでしょうか?
「じゃあ、聞くけど……百合は……」
「はい、何でしょうか?」
優花さんはわたしに変なイメージを持っているみたいなので、ここはどんな質問にも真面目に答えて、優花さんのわたしへのイメージを回復したいです!
さぁ、どんな質問でも来てくださ――
「青井が好きなの?」
「ぶへぇ!」
「ちょ!? 汚っ! アンタ同じ浴槽に入っているんだから、噴き出したりしないでよね!?」
「ゆ、優花さんが変な質問をするからじゃないですかぁ!」
「別に……変な質問じゃないわよ! 逆に、アンタが怪しい行動をするのがいけないんだからね!」
えーと、怪しい行動というのはどの行動の事を言っているのでしょう……?
「それで、どうのなのよ。アンタ、青井のこと好きなの?」
「うーん……」
これって……何て答えるのが正解なんでしょうか?
何となくなんですが――
『好きです!』
『この百合女! 最低!』 バチン! ←平手打ち
『嫌いです!』
『じゃあ、何で風呂入って来てんのよ!』 バチン! ←平手打ち
……あぁ~、なんかどっちを答えても不正解な気がしますぅ……
なら、正解は――っ!
「ゆ、優花さんの方が……好きです……よ?」
「は、はぁ!? やっぱり、アンタってば!? ななな、何言ってんのよ!?」
そう言って、思わずという感じで優花さんがこっちを振り向いて立ち上がって、平手の準備動作を始めました。
あぁ~! やっぱりこっちも不正解ですぅ~っ!
あと、優花さん。このアングルで立ち上がられると、下から見上げる感じで生まれたままの優花さんが丸見えででで…………って、あれ?
ビンタが来ないです?
「…………」 チラ
思わず瞑っていた両目を開けて生まれたままの優花さんを見上げると、優花さんは片手を上げたまま顔を赤くして何かを言おうとして口がもにょもにょしていました。
すると、わたしと目が合った所為か振り上げていた手を下ろして、わたしと向き合うように浴槽につかり直しこう言いました。
「……好きなら、何で約束を守らなかったのよ」
「へ、約束……ですか?」
一瞬なんの約束か分からずにいると、数日前の優花さんとの会話が頭の中に思い浮かびました。
「だかっら、危険なのよ! 分かったら『今後危ない真似はしない』って約束しなさい」
「わ、わりました……約束します」
あぁ~、そう言えばそんな約束をしたような気がします!
「あ、でも……危ない真似はしてない……ですよ?」
「……本当に? 危ない真似してないの?」
優花さんが疑うようにそう言うので、軽く今日の出来事を思い返すと――
……よく考えたら、りこちゃんのバッグを取りに川に入りましたね。
「……あ」
「したのね? 危ない事……」
再び、片腕を振り上げる優花さんに対し、わたしは「……テヘ☆」ということしかできませんでした。
「この嘘つき百合女!」 バチーーン!! ←平手打ちの音




