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第13話【似た者同士かも……しれません】



「アタシに名乗らせておいて自分は名乗らないのかしら? アンタ、良い度胸しているわね」

「……へ?」


 そう言われて、まだ自分が名乗っていないことに気付いたわたしは慌てて自己紹介をしました。


「すす、すみません! わ、わたしは……桜井百合です! えっと……流子るうこさん?」

「桜井百合……知らない名前ね。あと、気安く名前で呼ばないで」

「しゅ、しゅみません……」


 最近、優花さんを名前で呼ぶことに慣れていた所為か、思わず青井さんのことを名前で呼んでしまいました……。


 すると、わたしの後ろから優花さんの声が聞こえてきました。


「青井流子……流石は、ウチの学校の『隠れ番長』ね」

「優花さん!」


 突然、後ろから現れた優花さんがわたしの横に並び腕を組んで流子さんを見つめると、流子さんも優花さんのことを腕を組んで見つめ返しました。


「アンタは……黒川優花ですわよね?」

「え、二人ともお知り合いですか!?」


 わたしがそう二人に訊ねると――


「「いいえ、名前しか知らないわ」」


 二人とも息ピッタリにそう答えました。

 もしかして……この二人、似た者同士かもしれません。


「あら『学校一の美少女』で有名な黒川優花に名前を知られているなんて、光栄ですわね」

「こちらこそ、進学校のはずのウチの学校で『隠れ番長』なんて呼ばれて喧嘩の噂が絶えない、青井流子に名前を憶えられているなんて光栄だわ」


 すると、二人が同時ににらみ合いを始めました。


「あん?」

「ああ?」

「一体、何かしら?」

「そっちこそ何よ?」

「二人共、にらみ合いは止めてください! お、同じ学校のお友達じゃないですか……」


「「こんな奴、お友達なんかじゃないわ!」」


 ヒィィ!? やっぱり、二人とも似た者同士ですぅ~!


「大体……百合! 貴方が知らない喧嘩に首を突っ込むのが悪いだからね!」

「ご、ごめんなさい! 女の子が襲われていると思ったら、助けなきゃと……」


 私がそう言うと、その言葉が気に食わなかったのか、流子さんが反応しました。


「わたくしに助けなんて必要ありませんわ」

「あぅ、す、すみません……」


 それは確かにそうでした。実際に流子さんは二人もの男子学生を一人で蹴り飛ばし川にまで叩き落してしまったわけですから……

 しかし、優花さんがその返事が気に入らなかったようで、流子さんに食って掛かりました。


「貴方、その言い方は無いんじゃないの? 少なくても、百合は貴方を助けようと思って駆けつけて来たのよ!」

「別に、わたくしは助けて欲しいだなんて言っていませんわ!」


 その時、わたしは流子さんの手にかすり傷があるのに気づいて、声をかけました。


「りゅ、流子さん……手に怪我があります……」

「怪我? あぁ、こんなのかすり傷じゃない?」


 それは、流子さんが言う通りただの小さなかすり傷でした。


 多分、さっきの喧嘩で擦りむいたかすり傷だと思います。血は滲んでいませんが土がついているので黴菌が入ったら、ばい菌マンでバイバイ菌が危ないです。


 そう思って、わたしはハンカチを取り出して、流子さんの手のかすり傷に付いた土汚れを綺麗に落としました。


「余計なお世話ですわ!」


 しかし、流子さんはそれが気に障ったみたいで、そう言うとわたしの手に持ったハンカチを嫌がるように振り払いました。


 すると、流子さんの振り払いの動作があまりにも素早かったせいか、わたしのハンカチが真っ二つに切り裂かれてヒラヒラと地面に落ちてしまいました。


「あぁ!? わ、わたしのハンカチが……」

「ちょっと、待ちなさい!」


 すると、そのまま帰ろうとする流子さんを優花さんが呼び止めました。


「百合は貴方の為にと思ってやったのよ。なのに、その言い方は無いんじゃないかしら?」

「だから、それが余計なお世話だと言っているのですわ!」

「何ですって!?」

「こちらこそ、何ですの?」


「「あぁん!?」」


 そういうと、二人共また腕を組んでにらみ合いを初めてしましました。


「ゆ、優花さん! けけ、ケンカは良くないです!」


 わたしは急いで二人の間に入って、優花さんに「どうどう」と胸を叩いてなだめました。

 すると、落ち着いてくれたのか、優花さんは流子さんを睨むのをやめてこう言いました。


「……そうね。喧嘩は良くないわよね?」

「そうです。ケンカは良くないです!」

「ええ……だから、喧嘩していると思って、ここに近所のお巡りさんを読んでおいたけど……それも『余計なお世話』だったかしら?」


 優花さんがそう言うと、流子さんの顔色が変わりました。


「――っ!? 本当に……余計なお世話ね」


 そう言うと、流子はすぐに踵を返して逃げるように立ち去ってしまいました。


「あわわ!? 流子さん! あぁ、優花さん! わたし達もここから離れた方が良いんでしょうか!?」

「安心しなさい。嘘よ……。まぁ、様子を見て本当にヤバそうなら警察呼ぶ所だったけどね」


 なんだ。嘘でしたか。

 じゃあ、逃げなくて安心ですね!



「さて、邪魔者もいなくなったし……百合、家に帰ったらお説教ね?」

「あわ、わわあっわ……」



 もしかして、本当に逃げなきゃいけないのは……わたしだったのでしょうか?





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