第11話【まったく……お人好しなんだから】
「まったく! いくら名前で呼んで良いからって……限度ってものがあるでしょう!」
「しゅ、しゅみません……」
「私が適当に誤魔化したから良かったけど、クラスの皆も私達が急に仲良くなったら――
『黒川さんと桜井さん、急に仲良くなり始めたけど……どうしたのかな? かなかな?』
――って、クラスの皆が思うでしょう!」
「しゅしゅしゅ、しゅみません……」
放課後、私は百合と一緒に家までの帰り道にある河川敷を歩きながら、彼女にお説教をしていた。
本当に、この子ってば加減が分かってないと言うか……人付き合いが不器用すぎのよ。
「でも、一緒に帰ってくれて……う、嬉しいです」
「うな! そ、それは……」
――と、思ったら、急にこんなド直球に好意をぶつけて来るもんだから、私はつい顔が熱くなってしまって、それを誤魔化すように彼女からそっぽを向いて強めに言い返してしまった。
「お説教をするためよ! み、皆の前じゃお説教できないじゃない……」
「フフッ、そうですね♪」
しかし、そんな私の言葉にも、百合は『分かっていますよ♪』と言わんばかりの笑顔で頷いていた。
何だか、その笑顔……私の気持ちが見透かされているようでムカつくわね。
すると、百合が調子に乗ったのかイジるように私に質問をしてきた。
「もしかして、優花さん……照れているんですか?」
「て、照れてなんかいないわよ!?」
バッカじゃないの!? 何で私がこの状況で照れていると思っているのよ!
そもそも、何に照れているのかも意味不明じゃない……。
「私はアンタがドジだから怒っているのよ!」
「わたし、ドジじゃないです……」
「……あ?」
この女……この数日のことを思い返して『自分がドジじゃない』って、どうして言えるのかしら。
「わたし……こう見えても、意外としっかりしているですよ!」
「それ、本気で言っているの……?」
その時、河川敷を降りた川沿いの道の方から、男性の怒鳴り声が聞こえて来た。
「ふざけんなテメェ!?」
「……何かしら?」
「優花さん、あれ!」
隣にいた百合がそう言って、川沿いの橋の下で陰に場所を指さしたので、そこを見るとウチの学校の制服を着た女の子と知らない学校の制服を着た二人の男の子が言い争いをしているみたいだった。
「ふーん、知らない人達ね」
何かの喧嘩かと私が思っていると、百合がとんでもないことを言い出した。
「優花さん、助けないと!」
「バカ! 止めなさい!」
知り合いならともかく、関係ないことに自ら首を突っ込むなんてバカのすることじゃない。
「人助けなんて、お人好しのすることよ」
「だからって、見捨てるのはダメです!」
しかし、そう言うと百合は二人の男に絡まれている女の子を助けようと河川敷を降りてしまった。
あいつっ……本っっっ当に――!
「ああ、もう! 仕方ないわね!」
まったく……お人好しなんだから!




