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顔面S級冷酷無双ヤンデレ王子と転生令嬢  作者: はるさんた


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第八十四話:進化するデリーターと、ルナの逆転方程式

ドォォォォォンッ!!!!!

アレスが放った無数の「黒孔(ブラックホール)」が、ルミナス湖の白く塗りつぶされた空間ごと、幾何学模様の異形たちを凄まじい重力でねじ切った。


いかに世界の自動防衛機能(デリーター)といえど、この世界の最高神に等しいアレスの魔力出力は規格外だ。空間ごと塵に還された異形たちは、一瞬でその姿を消失させた――。

「ふん、システムとやらも大したことはないな。このまま根源のプログラムごと、すべて僕の闇で削り落として――」


「アレス、油断しないで! まだ終わってないわ!」

ルナの叫びと同時に、白く染まった湖面から、信じられない現象が起きた。


消滅したはずのノイズの霧が瞬時に再集結し、今度はアレスの放った「漆黒の闇」そのものを白く塗りつぶしながら、さらに巨大な、そしてアレスのシルエットに酷似した歪な姿へと再構築されていく。



『――エラー因果の解析完了。対象の魔力属性:虚無(闇)をシステムに登録。デリートコードを最適化(アップデート)します――』

「嘘……! アレスの魔力を『エラーデータ』として学習して、自分の耐性に変換したの!?」

ルナは光の数式リングを高速で叩きながら、驚愕に目を見開いた。

お掃除プログラムは、物理や通常の魔法では倒せない。こちらの攻撃を食えば食うほど、それを「バグのデータ」として解析し、無効化するバリアを張ってくるのだ。アレスの漆黒の魔剣「絶影」が異形の腕を切り裂くが、傷口から溢れ出た白いノイズが、瞬時に魔剣の刃を浸食し始める。



「チッ……! 僕の魔力を喰うか、小癪な……!」

アレスの美貌が、かつてない苛立ちと激しい嫉妬に染まる。

ルナの前で完璧な旦那様でありたい、ルナの脅威をすべて一人で排除したいという彼の強すぎる自尊心(ヤンデレ)が、目の前の「システム」という理不尽な壁に阻まれ、狂暴にのたうち回っていた。

「アレス、無理に魔力をぶつけちゃダメ! 相手がこちらのデータを吸い上げて進化するなら、逆に**『システムの想定を超えた、あり得ない演算(バグ)』**を叩き込んで、向こうの処理回路をオーバーフロー(パンク)させるしかないわ!」

ルナは魔導書を掲げ、アレスの背中に自らの身体を強く密着させた。

「ルナ……っ!?」

「アレス、私の回路を信じて、あなたの魔力を全部、私の『無属性魔導』に同調(シンクロ)させて! 速度も密度も、限界まで高めるのよ。私たちがどれだけ深く愛し合っているか、その熱量(因果のエネルギー)を数式に変えて、あのシステムに逆流させてやるわ!」


「僕の魔力を、君のすべてと混ぜ合わせる……? ああ、素晴らしいな、ルナ。僕たちの愛の深さを、世界に思い知らせてあげよう……!」



アレスの狂気的な瞳に、蕩けるような歓喜が戻る。

彼はルナの細い手を自らの大きな手で包み込み、指を深く絡ませた(恋人繋ぎ)。

次の瞬間、アレスの持つ「無限の虚無」と、ルナの持つ「全属性適合の理系脳」が、魂の根底から完全に一つに融け合った。

ドクンッ!!!!!

別荘全体が、純白と漆黒が混ざり合った、見たこともない「混沌のプラズマ光」に包まれる。

ルナの脳内を、前世の量子力学、熱力学、そしてこの世界の古代魔導数式が、毎秒数億回という神速のタイピング速度で駆け巡る。

「いくわよ、アレス! 量子もつれによる因果律の二重反転――【逆転の方程式(アンチ・システム・コード)】、ドライブッ!!!!!」

ルナとアレスの重なり合った両手から、巨大な「光の数式」の奔流が放たれた。

それはお掃除プログラムが学習した「闇」でも「光」でもない。世界の創造主すら予測できなかった、前世の科学とこの世界のヤンデレ魔力が融合した、完全なる『規格外のバグ・パッチ』だった。

ドガァァァァァンッ!!!!!

奔流が、アレスを模したデリーターの巨体に直撃する。

異形はそれを「魔力」として吸収しようとしたが、あまりにも複雑で、かつ膨大なルナの愛の演算処理に耐え切れず、全身の幾何学模様が激しく点滅し始めた。

『――処理許容値を超過。エラー。エラー。エラーエラーエラー――』

無機質なシステム音声が激しくバグり、ノイズを撒き散らす。

そして――パリンッ! と、ガラスが割れるような美しい音とともに、異形たちはルミナス湖の白い空間ごと、完全に霧散して消滅した。

白く染まっていた湖面に、本来のエメラルドグリーンの美しい水が、奇跡のように戻ってくる。

「ハァ……、ハァ……、やった……わ……」

ルナは完全に魔力を使い果たし、アレスの腕の中に崩れ落ちた。

「よく頑張ったね、僕のルナ。本当に愛しているよ……。世界を黙らせる君の頭脳も、僕の魔力に耐え切ったその身体も、すべてが僕だけのものだ……」

アレスは愛おしそうにルナを強く抱きしめ、彼女の耳元で甘く囁いた。


だが、ルナの理系脳は、消滅の瞬間にシステムが遺した『最後のログ』を聞き逃さなかった。

『――第一波の排除に失敗。世界の初期化まで、残り……168時間(7日間)――』

「……一週間。一週間以内に、この世界の根源(プロット)を根本から書き換えないと、私たちは本当に消されちゃうのね……」

アレスの重すぎる抱擁の中で、ルナは静かに闘志を燃やす。

顔面S級転生令嬢と冷酷無双ヤンデレ旦那様の、世界(神)を相手取った、残された「7日間のデバッグ」が、ここから本格的に始まるのだった。

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