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鬱展開大好き主人公VS優しい世界  作者: 石蕗石


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89/94

友達の友達、怖い目に遭いがち

9/8にコミカライズ一巻発売です。

漫画家さんの腕前が最高なので、ぜひともお手にとってみてください。

先に報告をします。ヴォルフとギルベルトさんに怒られました。

なんでかって言ったらそりゃ例の呪われの件ですよ。

まず朝に起こった実験動物脱走インクぶっかけ事件については、事件解明の時点で寮で待機する側仕えの皆さんまで報告が行っていた。でもってここから大使館で待機している交代要員の皆さんにも報告され、多分後で国にも末っ子王子学園生活報告の一部として伝えられることでしょう。

このへんについてはまあ、うちもデカくて余裕のある国ですからね。そんなこともあるよねーと苦笑いする程度で、そこまで問題視はしない。これに関しちゃ俺は微塵も悪くないし、クラスメイト達と協力して事件を解決し、あらあら良かったですね~、お友達の皆様も賢いですね~、くらいに微笑ましく見守られて終了だ。

ただし謎の動物を無計画に追いかけたあげく謎の失神をしたアレ。これは普通に怒られ案件である。


いやね、勿論診察はしました。

一旦学園に戻って職員室でこれまでのいきさつを四人揃って報告したら、学園の保健室みたいなところにあっという間に医療系や魔術系研究者と教師陣が集まって、その場で可能な限りの検査をしてもらえた。

もうこの時点で当然寮に控えている各位へお知らせがすっ飛んで行っていたので、ちょうど今日の担当だったヴォルフとギルベルトさんが学園内まで来たわけだ。そしてまず滅茶苦茶心配され、同行していたノエルくん、ジーンくん、シェフィールドさんち(重鎮)のキャロルお嬢様のこともめっちゃ心配していた。うちの側近達は人間ができているので、うちの王子様になんてことを! とか言い出さないのである。なぜならその場の学園関係者全員が俺の背後にある大陸一の権力に怯えて顔真っ青なので、むしろこれ以上刺激しないほうが良いことを弁えているからだ。お叱りがくるにしたって国から直接になるので、この場で二人が口を出す理由はない。

うちのヴォルフは魔法探知技能など諸々超優秀だし、ギルベルトさんも魔獣退治のプロフェッショナルなので、二人にも一応意見を求めたり、俺とノエルくんの様子を確認したりしてもらった。そしてこの大人数でのまあまあ長時間の検査の結果はどうだったかといえば、オールOKの完璧な異常なしときた。


薄々そんな気はしてたよ。だって全然普通に歩いて保健室まで行けたし、意識の混濁や記憶の混乱みたいなのも思い当たらないし。なにがしかの魔力の残滓だとか、なにかの条件を経て発動するタイプの遅効性魔術だとか、そんな気配も今のところなし。

その場で数分気絶して、特に問題なく起床しただけ。睡眠と変わりなし。健康体とのお墨付きを得るだけで検査は終了した。

もちろん脳に影響する魔法を使われたという事実に変わりはないので、経過観察は必要になる。ノエルくんはその夜は保健室にお泊まり。俺は寮に帰るけれど特別に側仕えを入れていい人数が増やされて、ヴォルフ中心に徹底見守り態勢だ。しかも寮に学園勤務の医療系研究者が待機するという手厚い待遇。なんせバリバリの権力者の子供だからね。特別扱いにもなるね。


うちの皆さんは本当に心配してくれたよ。でも俺って普段からご覧の有様なので、これまでも危険行為の前科が多いんですよ。勝手に国境越えるとか。そのぶん皆ちょっと慣れちゃってるから心配と同時にちゃんと説教もされてしまうのだ。

ヴォルフはまだ良い。いかに心配したか、こちらの体調を気遣っているか、ご友人方は大丈夫だったのか、好奇心旺盛なのは良いことですが、できればもう少しお気をつけくださいね……。みたいな話をしょんぼり肩を落として言い聞かせてくるだけなので、申し訳ないなあとは思いつつもその曇りを前へ進むパワーに変えてくれ、と思うだけだ。

ギルベルトさんはほんとね、すげー普通に不注意と油断を詰めてくるからね。そりゃもう淡々と、これまでの護身術の訓練と魔獣についての講義がいかに身についていないか、俺の突発的なアクシデントへの対処法がいかに温いか、改善点はどこなのかを教師視点で延々講義される。こっちはほんともう、ただ頭を下げてすんませんと謝るしかない。

まあ説教程度で俺の行動を縛れるなどとは、ヴォルフとギルベルトさんに限らず、俺に近しい人々は誰も思っちゃおるまい。そんな大人しい良い子なら、最初から問題行動など起こさないのだ。


というわけで翌日。

昨日の放課後に引き続き担任の先生にめっっっちゃくちゃ心配されたが、元気もりもり大爆発なので大丈夫です! くらいのノリの返事をしておき、俺達四人は教室内では白いビグレルの話を避けることにした。変に噂になられても面倒くさい、という雰囲気をノエルくんが醸し出しまくっていたからだ。

この身分的な意味でのデコボコ四人組はノエルくん以外はアイコンタクトが得意なタイプなので、こういう部分の意思疎通は非常にスムーズなのである。

行動開始は放課後から。

人気のない廊下の隅にコソコソ集まった我々は、ノエルくんの提案でまずは新聞部へと足を運ぶことにした。

四人で押し掛け、これまでのアーカイブを見たいと申し出たところ、大人しそうな眼鏡の部長さんはどうぞどうぞと二つ返事で受け入れてくれた。まあ若干表情は引きつっていたけれど、他国の王子が押し掛けてきた時の緊張としては普通の反応である。大丈夫だよ。無礼打ちとかしないから。

しかし歴史ある学園だけに、新聞部のこれまでの記事もまあ多い。さすがに学園創立当初から部があったわけではないようだが、それでもこれまでの在籍者の熱心な活動により、資料専用の小部屋を中身の詰まった書架がびっしり埋め尽くしているほどだ。


「新聞から、白いビグレルの記事を探すのですか?」


俺がそう尋ねると、ノエルくんはちょっと首を傾げた。


「それもだけれど、まず七不思議の変遷を追いたいんだ」

「変遷?」

「そう。白いビグレルの噂について俺が最初に目にしたのは、新聞部が書いた七不思議に関する記事でだった。前言ったかもしれないけど、この学園はでかいし歴史もあるから不思議な話は多いんだ。その中でも白いビグレルはまあまあ昔から七不思議入りしている。

でも時々もっと怖かったり面白い話があればナンバリングから外れるし、話されるうちに内容が変化することもある。であれば、白いビグレルに関する情報というのは、噂が出始めた当初まで遡ったほうが正確である可能性が高いと思わないか?」

「確かにそれは良い試みですね。仮にあの白いビグレルが噂通りの怨霊だとしても、あるいは昔から学園内で目撃されている固有の魔獣だとしても、噂としての尾ひれが付く前の情報を探すのは効果的なことだと思います」

「だよな。七不思議の記事は年に一回は出るから、それを遡って、白いビグレルの初出をあたろう」

「わかりました!」


というわけで探索パートだよ。

しかしまあ、本当に資料がマジでクソほど多い。俺達は一旦手分けをし、最近の新聞から確認していく班と昔の新聞から確認していく班に分かれることにした。

まずは十年刻みで飛ばし飛ばしにざっと見て、七不思議の記事が途切れたらそこと年代が近い新聞を探す。記事が確認できたらまた遡って探す。これを繰り返すこと暫し、ようやく白いビグレルに関する初出の記事だろうと思われるものにたどり着いた。

これがなんと百年前の新聞記事なのだから、なんというか立派なもんである。学問だけでなく部活動にもせいをだせる環境が整っているからこそだ。

今でこそ実験動物の怨霊云々という定番七不思議になっている白いビグレルだが、噂が流れた当初は単に珍しい色のビグレルが学園内に出没する、というだけの内容だった。なんなら怪談ですらない。

そのため、ビグレルのアルビノなのか似ているだけの別の動物なのかは分からないが、いっちょ捕まえてみようぜ! という人々がこの珍獣を追ったらしい。

最初のほうの記事は楽しく盛り上げるような内容だったものの、日を追うごとに様子はだんだん変わってくる。白いビグレルを見つけた生徒が突然倒れた、なかなか目を覚まさない、しかも一人だけではない。という被害報告が現れ始め、白いビグレルを見かけても近づかないようにという注意喚起が新聞でもされるようになる。一応この時の生徒達がその後目を覚ましたことも記事で確認できたが、この頃の記事の雰囲気はなかなか緊張感がある。

どうやら危険な生物らしいという噂が流れると共に探し回る生徒が減ると、白いビグレルの目撃情報もどんどん減っていく。この時期も教員達による捜索はあったようなのだが、捕獲したり駆除したという記事は出てこなかったので、発見されたにしろ取り逃がしたにしろ生徒への報告はなかったのだろう。

白いビグレルによる被害はこの後数年新聞には載らなかったが、風化と目撃を繰り返されるたびにだんだんと変化し始め、実在する危険な動物ではなく怪談話として学園内に広まっていき、現在の七不思議として定着したようだ。

つまり白いビグレルは怪談として生まれたわけではなく、元々マジで目撃されていたし被害もあった獣害事件が怪談に変化したものだったわけである。

そのうえで解決方法は未だ見つかっていないもんだから、当然俺達の空気は重くなった。


「確実に何か居るじゃありませんの!」


青い顔をしてそう言ったのはキャロルお嬢様だ。

まあそもそも何か居るのも、それに会ったのも、そのせいで俺とノエルくんが失神したのもはなから現実なのだけれど、それはおっしゃるとおりである。

怨霊とかいう眉唾な噂話に似た被害が出たという状況と、正体不明の魔獣かなにかによる被害が昔から実際にあったらしい、という状況では危機感の種類も変わるだろう。

俺としてもこれは、警戒レベルを若干上方修正したほうがいいかと考えていた。

なにせこの謎の魔獣被害、発生当初の教員達の捜索がからぶったきり、その後も成果を出せずに百年噂が残りっぱなしなのだ。毎回毎回学園の優秀な教員達の捜査の手を逃れているというのは、かなり気になる点だろう。

俺は百年前の古文書じみた質感の新聞記事を広げたまま、難しい顔をして頷いた。


「そうですね。百年前から目撃情報があるということは、教員の方々にも伝えておいたほうが良いかもしれません。もしかすると、既にご存じかもしれませんが」

「え、どういうこと?」


不安げな顔で尋ねるジーンくんに、ちょっと困り気味な笑顔を向けておく。


「過去に実際に被害が起き、その調査にあたったのなら、その資料が正式に学園の書庫などに残っているはずでしょう?」

「そっか。昔から今まで同じ魔獣による被害が出てるなら、定期的に調査があって、先生達はもっと詳しい資料を持っているはずだよね」


そういうことだ。

新聞記事をそのまま受けとるなら、白いビグレルは生徒にとってはちょっと怖い噂話でしかないが、教員からすれば学園内でたびたび発生する事件ということになる。

頻度が少ないとはいえ、謎の魔獣が生徒に被害を出すのを、学園側としても毎度毎度黙って見過ごすわけにもいかないだろう。特に今回のように、社会的地位の高い生徒に被害が出てはなおさらまずいのだし。

しかし俺達はこれらの情報を、職員達に相談したにも関わらず知らされなかった。それがわざとなのか、あるいは長い年月の間に白いビグレルという謎の生物の情報が引き継がれず、在職中の職員達も知らないのかは判断が付かない。

俺達の視線は、先程からずっと考え込んでいるノエルくんへと向いた。

彼は俯いたまま、ほとんど独り言のように呟きを漏らす。


「……一番問題なのは白いビグレルがどういう存在か、という部分じゃない。出会うと一年以内に死ぬ、という噂の真偽さえ確かめられれば、俺達としてはそれで問題ないんだ。まあ本当に死ぬとなったらまた別の調査は必要になるけれど」

「それはまったくその通りですね。外敵を失神させて逃げる習性がある魔獣に遭遇した、というだけならば、大した問題ではありません」

「うん。白いビグレルと呼ばれる魔獣が昔から学園内にいることは分かった。会うと気絶させられてしまうというのも、典型的なパターンのようだ。では我々以外の被害者は、その後どうなったのか? 長期的な影響があり、なんらかの問題があったのか?

それこそが今一番気に掛けるべき情報だと、俺は思う」

「となると、やはり学園が公式に残している情報を得るのが一番良いでしょうね。被害に遭った生徒については当然今回のように体調などを調査し、詳細な記録を残しているはずですから」


例えば被害生徒がきっちり一年以上元気に過ごして卒業した記録があればおおむね問題ないし、万一死亡したり体調不良で退学せざるをえなくなった記録があったなら、そのときは腹をくくって謎の呪いに対峙するべきだろう。今後の方針を決めるためにも、本当に噂通り死んだ生徒がいたのかの確認は必須だ。

俺達は頷き合い、次の調査ポイントを職員室に決定した。

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― 新着の感想 ―
ギルベルトさんからしたら他の3人は「王子を巻き込んだ不届きもの」じゃなくて完全に「王子に巻き込まれた哀れな被害者」でしょうね……。 ところで性別不詳かと思っていたジーンくんはジーンくんで確定でしょうか…
びっくりした、読む前にタイトルを見て一瞬 今度は猫の画像スマホに保存ニキ+友人が主人公とホラー展開に?! と思った あの現実帰還ホラーも新しいの期待
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