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メカナイズド・ハート 65話

こんばんは。


「うん、問題なし。やっちゃってくれ。」

「了解であります。」


ルーカスの言葉を受けて待ってましたとばかりに整備兵達がルーカスの機体にまとわりつき、右へ左へと機体の各種パックを動かして改造作業を始める。


機体の周りにガムテープで止められたジップロックは無重力で細かなパーツが四散しないように保管するためのものだろう。


「おーらいおーらい、ゆっくり〜ゆっくり〜、ストップ!!」


騒々しい音の中で新しい改造パーツがアームを使用して機体の側まで運ばれていく。


あれは胴体部側面に追加で貼られる装甲材だろう。向こうにはアクティブ防護システム用の追加バッテリーと電子部品だろう。


忙しそうにハンガー内を飛び回る整備兵達を見ながら、クリップボードに挟んだ書類の上にペンを走らせる。


作業時のヒヤリハット注意書きや、周辺宙域の特性が記載された書類にスペースデブリの予報や太陽風の予報、おまけに部隊の練度維持を目的とした下士官以下向けの短編軍事情報誌(挿絵付き)もある。


「ルーカス中隊長どの何ですか?それは?」


真横から覗き込むような視線と共に、ふわふわと浮かびながら新人のミリアム少尉が登場する。


「何だ君か。」

「何だとは何ですか!!」

「耳元でうるさいぞ。」


書類を書きながらも、わずらわしいミリアム少尉の言葉を適当に相手する。


「この本なら、下士官以下向けの短編軍事情報誌だ。士官のお前にも有意義なものだから読め。」

「ゲッ!!読書ですか?読書嫌いなんですよね〜。」

「読書が嫌いならどうやって医者になったんだ?」


ミリアム少尉は元スウェーデン軍の軍医である。ある意味最も読書嫌いがなりにくい職業であるために、思わず突っ込んでしまう。


彼女は、微妙な表情をしつつ述べる。


「最近は医学界も完全に動画とか音声とかで学習することが多いから、小さくて独自の構成ルールがある本とかはあんまり使わないんだよね〜。」


ミリアム少尉は最近の医学界に物申すニュースチャンネルのコメンテーターのように訳知り顔で腕を組み、うんうんと頭を振る。


「あと、単に本は古臭いですし〜。逆に中隊長は好きなんですか?」

「本は結構好きだよ、小さい頃に親が持っていた探偵小説をよく読んだ。犯人を考察しながら読むのをよく楽しんだもんだよ。ただたまに妹が勝手に読み終わる前に犯人をバラして・・・、毎回怒りで追いかけ回した・・・。」


そこまで話してルーカスは目元を抑える。


「あれ、俺は何でまた泣いてるんだ・・・?」

「たまには泣いても良いですよ、仕事で疲れてるんですよ。目的地に着いたら美味いドイツビールでも飲みましょう。そしたらすぐ良くなりますよう。」


ミリアム少尉がルーカスの頭をポンポンと叩く。彼女は穏やかな声で呟く。


「元医者の言うことだから間違いないですよ。」


5000年後の世界にはそもそも読書という文化が残っているのだろうか?(現在の出版業界や書店の経営状態を見ながら)

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