メカナイズド・ハート 169話
「あいつら誤射が怖くないのか?」
そう不満げに口にしても、敵がやめてくれるわけではない。ルーカスはそう理解している以上、それ相応の対抗戦術を強いられる。
「チッ・・・、誤射が怖くないのなら存分に誤射させてやれ!!大隊各機は動きを止めるな!!敵の砲火を利用しろ!!」
ルーカスは現在取れる戦術の中でおそらく最善であろう戦術を取る。その戦術とは敵から惜しみ無く放たれる防御砲火を利用して敵艦同士で誤射させようというものだ。
ツーマンセルを解かせて大隊各機に自由に逃げ回るようにさせれば、自ずと防御砲火も分かれる。
しかし、そこまで期待していたほどの戦果が出ていない。どうやら敵艦隊は射線管理専用の高度な射撃システムを構築して友軍艦艇が当たらないように時限信管を絶えず調整して友軍艦艇にあたる前に爆発させているらしい。
「クソ!!射撃管制システムが随分と良いらしい!!」
ルーカスはこれまた一つ悪態を突きつつ、機体のスラスターを吹かしまくり、前後左右へと変則的に吹かすことで軌道を絶えず変えて敵弾を避ける。
「堕ちろよ!!」
威勢のいい掛け声と共に、勢いよく横方向に回避して敵弾を間近に迫ってくる敵ポッドにぶつけようと誘導してみる。しかし、これも上手くいかない。
「ならこれはどうだ!?」
ルーカスは接近してくる敵ポッドの至近距離射撃を斜めに構えたシールドで受けつつ応射する。敵もまたシールドを構えてこちらの応射を弾いた瞬間に、一気に距離を詰めてシールドごとレーザーブレードで機体のコックピットまでまっすぐ突き刺す。鮮やかな勝利だ。
しかしながらルーカスは単に敵の骸を宙に放り出すために勝利したわけではない。ルーカスは機体のマニュピレーターを使い、敵機の残骸を正面に構えて敵艦隊の一つに向けてみる。すると喜ばしいことに敵弾は飛んでこない。
「なるほど!!これが効くのか!!」
次の瞬間にはルーカスは全力で機体のスラスターを吹かしながら、まっすぐ敵艦の砲門に向けて突っ込んでいく。
ズズン
自機を通してわずか先にあった方が敵艦の砲が残骸に押しつぶされて粉々になるのを感じる。
後ろに向けて飛ぶようにスラスターを吹かし、素早く距離を取ると手元の120mm砲を撃ち込み残骸を誘爆させる。数秒後には敵艦は炸裂しながら無数の火球の仲間入りを果たす。
達成感に包まれながら周囲を見渡し次の目標を探すと、見過ごせないものを見つける。
副官のミリアム中尉の機体に敵ポッドが肉薄しているのだ。ルーカス大隊は運良く初戦を生き延びたばかりのラッキーボーイで固められたクソ雑魚大隊のため、ミリアム中尉のような才能と実践経験のある部下は大隊を維持するためにも、必須で決して失うわけにはいかない。




