メカナイズド・ハート 167話
「各機3分で出れます!!戦況は芳しくありません!!」
副官の報告を聞くとルーカスはシートベルトを締める。コックピット内部の計器を全て指差し確認して、それが終わればスラスターに火を入れながら共に死地におもむく部下たちに、威勢よく命令する。
「ルーカス大隊発進!!編隊を組んだら戦場に突っ込むぞ!!」
「了解!!」
戦線後方のコロニーのドックから流星のように勢いよくルーカス大隊のポッドが飛び出す。急速にスラスターの加速に引っ張られるように周回軌道を脱し、より高高度で起きている艦隊戦へと飛んでいく。戦闘はどうやら同航戦のようだ。
「同航戦らしい!!最大限加速したのち逆噴射して急減速しながら周回軌道と周回速度を合わせるぞ!!ちょうど友軍艦隊の上を通り過ぎる形で敵艦隊に降りかかる!!」
「複雑すぎます!!普通に友軍艦隊に後ろから合流してください!!」
「俺を見て真似しろ!!失敗したら死ね!!」
ルーカスらが行った薄い教育課程のせいで副官は、部隊員たちの能力を超えた複雑で難易度の高い戦術だと副官は訴えるがルーカスはあしらい無茶ぶりを押し通す。副官のセンスのない答えにルーカスは少し腹立ちながらもいちいち説明する時間はない。結果としてすこしヒリついた答えしか返せない。
「友軍艦隊前方!!」
「逆噴射に入れ!!」
「了解です!!逆噴射に入ります!!」
多少ヒリついた答えや雑なあしらいを受けてもなお、副官はけなげにルーカスと大隊の仲間たち全員に情報を読み上げてくれる。おまけに重要な命令は仲間たちが聞き逃さないようにちゃんと聞き返してくれるのだから感謝しかない。
そう心の中で感謝していると、だんだんと友軍艦隊の灰色の魚鱗のような影を通り過ぎカラフルな戦場のライブハウスの上に差し掛かる。その幻想的な姿にルーカスは言葉をうばわれる。曳光弾の尻から伸びる一筋の光、レーザー砲が発する糸のような光、ミサイルが見せる太くゆっくりと次第に加速しながら敵の群れに向けて伸びていく光、それらすべてが完全なハーモニーを見せながらも次々と両軍の船を飲み込んでいく。その光の一本でもこちらに飛んでくればルーカス大隊を丸ごと飲み込み搾りかすまで蒸発させていただろう。そんな美しくも恐ろしい風景を、ルーカスは気楽に思う。
「随分と激しそうだな。」
そうぼんやりと口にしているうちに景色はさらに進んでいき、鈍い鉄色をした敵艦隊が見えてくる。向こうもこちらを視認したのだろうか?敵艦隊上部に張り付き待機していたコルベットやフリゲートなどの小型艦艇、ポッドたちがまっすぐ砲を開きながら突っ込んでくる。




