メカナイズド・ハート 165話
「先行させていた偵察艦隊が迎撃されて追い返されたらしいな?」
「はい、そのように伺っています。」
首の皮一枚で生き残っているドイツ連邦の最後の切り札である第九軍団の軍団司令であるフリッツ・ハーパー中将は、老将軍と呼ばれるだけある年季の入った顔をしかめながら、そばに立つ女性士官に尋ねる。
「映像は確認したか?」
「はい、非常に優秀で良い指揮官のいる大隊に見えました。もっとも今は2個中隊以下の戦力でしょうが。」
女性士官は若干微笑みを見せながらも、余裕綽々な様子で腕を組み自分よりも遥かに階級が上な老将軍に対してもふてぶてしい態度を続ける。
「敵主力艦隊と我々第九軍団の衝突は避けられん。その時お前はアイツとアイツの大隊を打ち破れるか?」
「もちろん打ち破ってみせます。」
「ならば、ぜひその実力を次の艦隊戦の時に発揮してくれたまえ。よいな?」
「ハッ。」
ふてぶてしい女性士官ペトラ・シュナイダー中佐は綺麗な敬礼をきめ、ざっと足を引きくるりと体を回し軍団司令の部屋を退出する。長身長髪の彼女がするその動作は非常に絵になる。世が世なら彼女は儀仗隊かオーケストラで指揮棒を振っていただろう。彼らとの唯一の違いは彼女は生まれた時代に恵まれなかったということだろう。
「おもえば誰も生まれた時代にはめぐまれていないな。」
老将軍はそうぼんやりとつぶやきながらも、愛しい人の形見の万年筆をしまう。彼女を失ったように万年筆をふとした瞬間に失いたくはない。彼女にできなかったように万年筆を胸元に大事にしまい込む。
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部下たちに対して休むように命令した後、ルーカス本人も手鹿な弾薬箱の上に腰を掛けて横になる。いい感じに冷たい感覚が宇宙服越しに伝わってきてパニック状態にいる神経系が非常に休まる。肩の力を抜く間に一気に眠気が訪れ瞼がシャッターのようにゆっくりと、だが確実に閉まり始める。
「大隊長殿!!大隊長殿!!」
耳元で馬鹿みたいに大きな声で酒場れ胸をゆすられて目を覚ましてみれば、目の前10センチメートルほどの距離に副官の顔が見える。この距離ですらほとんど一切の毛穴やニキビ跡、シミ、しわが見えないのはひかえめにいって驚きである。それに引き換えルーカスは長い間の高ストレス不潔睡眠不足で、顔はしわとクマ、打撲や裂傷の跡とニキビ跡に包まれている。副官の彼女と自らの肌事情の格差をこうまでまじまじと見せられると、気分良く寝ている最中にたたき起こされたこともあり、普段よりも余計に機嫌は悪くなる。
「なんだよくそったれ・・・、なんなんだ?っておいおい。」




