メカナイズド・ハート 164話
プシュッ
ポッドのハッチが開くと同時にコックピットから転がり落ちるようにルーカスが現れる。
「お疲れ様です。」
「おう。」
ルーカスは出迎えてくれる副官の声を聞きつつ、パイロット用の宇宙服の胸元を開ける。途端に緊張が抜けていき肩が軽くなる。
「戦果報告と損失報告を教えてくれ。」
「ハッ、戦果は敵先見艦隊の潰走とポッド39機撃墜とフリゲート1隻の撃沈です。大戦果ですよ?司令もお喜びです!!」
副官は何だかテンションが高い。その様子に少し呆気に取られながらも、まあ死ぬかもしれない作戦で生きて帰ってきただけでなく少数で多数の敵を打ち破る大勝利を挙げたのだから、無理もない。
しかし、ルーカスは大隊長である以上単に浮かれているだけではいけない。
「で、損失は?」
「・・・17機です。」
「まあそんなものだろう。むしろよく36機中19機も生き残ったもんだ、幸運を拾ったな。」
ルーカスが損害について聞くと、途端に押し黙る副官を尻目にルーカスは無邪気に幸運を喜ぶ。その姿には純粋に部下の生存を喜ぶと同時に、自分が死んだ17機側に回ることは絶対ないだろうという自信にも満ち溢れている。その姿がささくれた感情を逆なでにしたのだろうか?
「大隊長殿は・・・、なぜそんなに幸せそうなのですか?」
そんなルーカスに、ルーカスの副官であるミリアム中尉は少し躊躇ったのち吐き出すように毒と共に鋭い質問を放つ。その質問を聞くと、ルーカスは一瞬頭上を仰ぎ見て軽く目をつむったのちわずかな微笑みと緩んだ眼もとで答える。
「慣れたよ・・・、君こそ慣れないのかい?」
「仲間を失うのは慣れました、しかし彼らは私の部下です。自分の言うことを素直に聞き、武勇伝を目をキラキラさせて聞く。彼らは私の部下なのです。」
「同様に私の部下でもある。」
「あ・・・、すいません。」
ルーカスに対して自らの感情をぶつけて泣き出しそうな副官に対して、ルーカスは冷や水をぶつけるようにバッサリと切って捨てる。その言葉ではっとしたのか副官は涙を押さえて襟を正してルーカスに対して敬礼をみせる。その目は今までたびたび見せたような若くエネルギッシュで感情に満ち溢れたキョロキョロと周りを見回すものから、疲弊し惰性のみでギョロギョロと動くものに変わりつつある。
「ルーカス大隊長殿、大隊各機全て帰投しました。補給は25分で終わるとのことです。」
「よろしい、戦果および喪失報告はメモに書いて後で渡してくれ。補給が終わるまで部下たちには休ませろ、ただしドックを離れるな緊急発進しなければならないかもしれない。」
「了解です。」




