メカナイズド・ハート 163話
ルーカス大隊は不利な状況での射撃戦を避けて、散開し敵弾を回避したのち、敵艦隊の横っ腹に喰らい付いて離さない。
「大隊長どの!!隊は限界です!!これ以上は持ちません!!」
ルーカスの耳に副官の声が届くが無視する。隊が限界であることなどはわかっている。弾薬を消耗し推進剤も残り少なくすでに僚機も数機失っている状態で数に勝る敵艦隊と戦闘をし始めた時点で、ルーカスはとっくに隊は限界であろうことなどはわかっている。
しかし、引くことはできない。敵艦隊から距離をとり離脱しようとした時点で敵に射撃のチャンスを与えることになる。避けようとすれば敵艦隊に追いつかれるだろう。
そして敵の方が射撃戦を行えるだけの弾薬をいまだに多く持ち、乱戦で討ち取った敵機を差し引いても敵艦隊の方が数が多い以上、容易に撃ち負けるだろう。
また、投降もあり得ない選択肢である。この戦争は本質的にカトリックとプロテスタントの宗教戦争なのだ。ルーカス本人がカトリックのスペイン人であることもあり、敵がそう簡単に投降を認めることはないだろう。
であるのならば、道は一つである。
その道目掛けてルーカスは機体を、推進剤の消耗を恐れず凄まじい勢いで加速させて敵艦隊の隊長機に喰らいつく。
「テメエが隊長機だな!!」
敵が肯定してたり答えてくれるわけもないのに、ルーカスは怒鳴りながら、自機のレーザーブレードで切りかかる。
ガシンッ
機体全体が揺れるような振動がレーザーブレードを持った右腕部から伝わってくる。見れば敵機が振り下ろされたレーザーブレードの持ち手を敵機の左腕部で押さえている。
この状態で、敵機に至近距離から敵機が右腕部に持つ120mm砲で至近距離から撃たれたら一撃で殺されるだろう。当然ルーカスは殺されるつもりはないため、右操縦レバーのボタンを押す。
すると、レーザーブレードを持った右腕部の関節が手首からくるりと旋回し、右腕部を握られたまま旋回する手首の勢いに任せて敵機をレーザーブレードの刃先で切り捨てる。
一瞬遅れて敵機が眼前で炸裂する。推進剤か予備の弾薬にあたり誘爆したのだろうか?機体全体が爆発四散するのではなく、原型を留めながらも致命的な損傷で無力化される。
「敵が崩れるぞ!!掃討にかかれ!!」
ルーカスは大声で怒鳴りながら部下たちに命令を出す。ルーカスの見立て通り、隊長機を失った艦隊は抵抗の意思だけでなく統率も崩れ始め、数の優位があるのにも関わらず背を向けて逃げ出す。




