メカナイズド・ハート 155話
「中将閣下・・・、そろそろ動くべきでは?」
広く青白い光で照らされた円筒形のブリッジの中で、ゆったりと瞼を閉じて考え事をしていたフリッツ・ハーパー中将は、真横から副官に話しかけられてその老体を動かして質問をけだるそうに体をゆすることで拒否する姿勢を見せる。
それでも、新しく配属された新人の副官は不安そうな顔つきで話しかけてくる。
「まだだよ・・・。」
「しかし、南部から北上してくるバイエルン軍とザクセン軍が合流してしまえば彼我の戦力差は逆転します。我々第九軍団が今動かなければ祖国は・・・。」
老中将は、真横で泣きわめく副官を無視しつつ、節くれだった手を瞼の間にトントンとあてて叩き緊張を抜きながらまどろむ。せっかくリラックスでき始めたのに、騒々しい奴がいると苦労するなと顔をしかめながらいる。
「中将閣下ぁ・・・。」
「ええいうるさい、しばらく黙ってろ!!」
ふう、このガキはいつもうるさいのだから。
そう思いながら中将は、わずかに苛立ちながらもゆっくりと休む。
ふと気になり、副官がぼんやりとたたずんでいる右側ではなく、左側を見てみる。
そこには副官以上に腹立たしいが、有能な女が無煙タバコを片手にマタタビを顔面に喰らったねこのような幸せに包まれた顔でいる。
この女、ペトラ・シュナイダー中佐は自分の指揮下のポッド連隊の指揮官だ。
自国の首都一歩手前まで敵軍が迫っていながら一切おびえることも慌てることもなく、落ち着いて無煙タバコを楽しめるのは彼女の才能だろう。
いい年していながら、自分の半分以下の若い女に豪胆さで負けていることに口元をほころばせながら、前を向き再び思考を深め始める。
「報告!!セクターオクトーバー21にてコロニーがポーランド東艦隊の襲撃にあっています!!ビクター少将から支援要請が来ています!!」
「よし!!全艦艇発進準備!!遅れは許さん!!」
みなの空気が緩み始めた直後に届いた報告で、老中将は目をぱっちりと開きブリッジにいる部下たち全員に命令を下す。その言葉で忌々しいペトラ・シュナイダー中佐以外の部下たちが働きアリのようにせわしなく動き始める。
「中将閣下・・・、よろしいのですか?今オクトーバー21に行ってしまいますと、南部から北上してくるバイエルン軍とザクセン軍が橋頭保だけでなく、ベルリン中央部までもぐりこんでくるかもしれません。彼らが最大戦力である以上は彼らを最初に・・・。」
心配げに中将の副官は不安を吐露するが、中将はその質問を竹を割ったように返答する。
「そんなことは考えても無駄だ。我々にできることはあくまで各個撃破、しかも敵艦隊がコロニーの防御火器と撃ちあっている今なら戦力差で優位に立てるだろう。今前菜のポーランド東艦隊を打ち破って兵に自信を付けさせた後に南部から北上してくるバイエルン軍とザクセン軍を叩けばよろしい。」




