メカナイズド・ハート 153話
「突撃!!臆すればするほど射線にとどまることになる!!」
ルーカスは大隊長でありながらも、真正面から大隊の先陣を切りながら進んでいく。
本来は巡航ミサイルや戦列艦の援護射撃と共にじわじわと敵コロニーの防御砲火をまどわし砲座を潰していくべきなのだろうが、ルーカスは一切気にせず真正面から突っ込んでいく。
勇敢を越えて蛮勇と言えるような行為ではあるが、それ相応の理由があった。
時は少しさかのぼって数日前。
馬鹿みたいに真っ白な病室のような大隊長むけの私室で呼び出した副官とともに軽い作戦の議論や相談をした際に、ルーカスが放った言葉に副官のミリアム中尉(数日前に少尉から中尉に昇進)が食って掛かる。
「隊の指揮の際に先頭を行かれる?正気ですか?」
「正気ならそもそもPMCに入ったりはしないよ。」
「遊ばないでください。隊の指揮自体はわざわざ最先頭をいきながらする必要はないでしょう?敵弾が飛んできた時一番最初にあなたが被弾することになるんですよ?あなたが死亡したら、変わりに指揮をとれるものはいません全員新人なんですよ?ぜんいん編隊すら維持できずに宇宙で迷子になって酸欠で死にます。」
ルーカスは昇進してからさらに意見をはっきりというようになったミリアム中尉をおさえながら説明する。美少年とも思えるような小柄で細身で引き締まっているがしっかりとした体を持つ彼女は、その全身のエネルギーを爆発させるように抗議する。
普段ははっきりと意見を言うことはあってもここまで爆発することはない。
「説明することがあるのなら、はっきりと説明してくださいよ!!」
「わかった。説明してやる。だからいったん座ってくれ。」
ルーカスは今にも暴れ出しそうな副官を椅子に座らせつつ、説明し始める。
「まず第一に、彼らは訓練を担当したおれが言ってしまったらアレだが、練度が低い。それも平均よりも少し低いのではなく、基本のきを知っている程度の練度しかない。かれは銃を構えて引き金を引くことはできるが、誰に向かって撃つべきはわからないだろう。」
「そのために先頭にでると?しかし、あなた自身が彼らを送り出したときには使い捨てにされるだろうと納得していたではありませんか!?後方にどっしりと構えて彼らをすりつぶさせればよろしいのでは?」
ミリアム中尉はルーカスが演習場で見せていた態度を持ち出して考えを改めるように求める。
彼女は精一杯の合理性を考えてルーカスにやめるべきだと伝える。
「それはだめだ!!」
「なぜですか!?」
「とにかくダメなんだよ!!」
ルーカスはみずからの考えを完全にミリアム中尉に説明できない。
彼の感覚的な部分、いうなればセンスによって生み出されたこのアイディアは、ミリアム中尉にとってみればただでさえときおり情緒がおかしく、不安定にみえる上官の壮大な自殺への第一歩にしか見えないのである。




